表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋桜

作者: 神田留魔

ーーー蕾は春を待つ


雪の下から蕗の薹が見える。

そんな時に君と出会った。

僕が微笑みかけると君は僕に

そっと微笑み返す。


ああ、愛おしい。


ーーー蕾は花開く


小鳥がさえずる。

君と僕は、野原を駆け回る。

駆け回る理由なんて無かった。

けれど、二人で駆け回った。

少し暖かい風が二人の間を抜けていく。理由なんてなくていい。

ただひたすらに君の笑顔がみたかった。


ーーー桜は春を終え葉が緑に映える


僕と君の関係なんてただの友達。

でもそれだけでよかった。君はずっと僕と駆け回り、笑顔で居続ける。

僕の恋愛感情は無視していいんだ。ただずっと、このまま笑顔で。


ーーー桜は葉を落とす


僕はそこまで望んでいなかった。君の彼氏になれたらそれはとても嬉しいけど。そこまで望んでいなかった。


でも、最近君は居ない。

どうしたかなんて僕は知らない。

また、桜が咲く季節がくれば

また駆け回るだろう。


ーーー桜は永い眠りにつく


世間では背の高いモミの木に飾り付けをする時期になった。あらゆる男女が楽しそうに歩いている。その人混みの中に君はいた。

でも隣にいるのは僕じゃない。

知らない男。

君は僕だけの物だったはずなのに。

君は笑顔を見せる。僕ではなくその知らない男に。


仕方ない。


僕はそっと振り返った。


また春がくる。


春になってからでも遅くない。


ーーー花開く


 僕は桜の木の下でそっと目を開ける。木の幹を背もたれにしていた。僕はそっと立ち上がる。桜の花が足下に落ちている。桜の花は所々紅色に染まっている。所々桜の香気はしない。ただ鼻を突くような鉄のようなにおい。

 それは君と出会ったあの春とは違う。君が僕に微笑みかけることはない。僕と君が出逢ったあの春が二度と来ることはないのに。

 それでもあの桜は春を繰り返す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ