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其の弐 神木
真っ暗な闇の中。薄紅色の狩衣をまとった青年が楽しげに笑っている。
──見ツケタ
手元の青白く光る水盤には1人の栗色の髪の青年が映し出されていた。
──コノ者ノちからガアレバ
水盤の中の《彼》に手を伸ばし、その横顔をひと撫でして指を鳴らす。
と、そこに現れたのは青年によく似た面差しの少年。
だがその瞳に光はなく、まるでよくできた人形のようにしか見えない。
──我ガ許ニ
「御意」
一言答えた少年が、現れた時と同じく音もなくその姿を消した。
後に残るのは、水盤を楽しげに撫でる青年だけ……。