終章
あれからどのくらい年月が経っただろうか。
壮軌を待つ間に、世間は大きく様変わりした。
元号が二つ変わり、幾つかあった大きな戦争を乗り越え、伊勢崎の家は事業の規模を大きくしている。
本家の人間に俺のことがどう伝わっているのかよくはわからないけど、正太が言うには
『別宅の人はこの家の繁栄に大きく関わっている。だから決して蔑ろにしてはいけない』
といわれているそうで、そのせいなのか新年には必ず当主とその長子がやってきていた。
そうは言っても彼らに会うのは弥市、今は正太の仕事で俺が直接会うことは少ない。
俺はただ、年を取らないまま壮軌を待っている。
離れには相変わらず妖達がたむろしていて、彼らから話を聞くのだが壮軌に繋がるようなものはなかった。
「坊はまだあやつを待っておるのか」
「約束、したからね」
半ば呆れたように言う黒坊主に笑いかけて縁側から立ち上がる。
セインさん達も壮軌の事は気にかけていてくれて、こちらに来る度に向こうで聞いたことを教えてくれていた。
それでもまだ、壮軌が帰ってきたというものは居なかった。
「どこに行くんだい?」
「そろそろ桜が満開かなと思ってね。白萩も行く?」
「あたしは遠慮するよ」
するりと脛に擦り寄って白萩が庭の茂みに消える。
それを見送って、裏庭へと向かう。




