其の質 決戦 -隆生ー7
「まさか」
「その、まさかだ。隆生」
(壮軌が、消える)
その事実が目の前に突きつけられて、ひっと喉が鳴った。
「嫌だ。俺の道連れになるって言ったじゃないか」
「そうだな……それが唯一の心残りだ……」
そう言って、壮軌が小さく笑った。
「そんな言い方するなよ!」
「なぁ、隆生……俺はもう一度、この世に生まれてきたい……。今度も、妖がいいだろうか……」
微笑を浮かべて、壮軌が俺に向かって手を差し伸べた。
その手を取って、傍らに膝をつく。
「じゃあ、俺、待ってるよ。壮軌がまた、帰ってくるの。……いや、見つける。どんな姿になっても探し出してやるから」
「そうか……」
視線を上げた壮軌が、眩しそうに目を細めた。
「ならば、俺は桜に、なろうか……」
「桜にか?」
「あぁ。桜になって……隆生を見守って……、母上の、ように……」
囁くような声が途切れて、壮軌の姿が消える。
「壮、軌」
掴んでいたはずの手の感触がなくなって、目の前に小さな光が一つ浮かんでいた。
両手に受けるようにその光を乗せると、俺の手に重なるように二つの手が現れた。
「楓様……?」
『案ずるな、隆生』
見上げた視線の先には浄化の炎で消えたはずの楓様と長がいて、俺の手から壮軌だった光を受け取った。
その光を胸に抱くようにして二人はまた、静かに消えていった……。
「隆生、壮軌は?」
三人を見送った俺の後ろから、セインさん達が駆け寄ってきた。
「逝っちゃった……。でも、また、戻って来るって……」
堪えきれず、涙が溢れる。
「楓様が、連れて行ってくれたよ……」
「そうか、母上が一緒に」
「……うん」
声を殺して泣く俺を、セインさんは黙って抱き締めていてくれた。




