其の質 決戦 -隆生ー
温かいものが、落ちてくる。
それが俺の口唇を濡らすのを感じた途端、真っ暗だった世界が白く弾けた―――――――。
ゆっくりと目を開けて、見上げた先には驚きに満ちたみんなの顔。
俺はセインさんに抱えられて横になっていた。
「あれ……?俺、何で生きて……?」
(確かに、壮軌の腕は俺の胸を貫いたはずなのに)
ゆっくりと起き上がって胸に触れる。着物は無残に破れているものの、肌には傷一つ残っていない。
ふと、優しい気配を感じて目を上げると、そこには楓様が立っていた。
「楓様、俺」
『壮軌の想いが、一度だけその願いを叶えたのだ』
「壮軌の、想い……?」
何だか、胸の奥がほんのりと暖かい。と、俺を支えているセインさんの身体が震えた。
「はは、うえ」
その声に、はっとラズナとユーリもセインさんの視線を追う。
「かぁ、さま……?」
「母上」
それ以上に続く言葉もなく、皆が見つめ合う。その様子から、言葉を介さなくても通じる思いがあるのだと感じ取れて、俺は少しだけ羨ましく思った。
「……長は強い。しかしこのままにしておくことは出来ません」
『妾の我儘でそなた等に迷惑をかけてしまった』
「そのようなことは。長はそれほどまでに母上を愛しておられるのです」
『妾はただ、壮軌。お前をこの世に送り出してやりたかっただけなのだ……』
少しの間、楓様は俯いていたけど、次に顔を上げたときには元の凛とした表情に戻っていた。
「母上、どうすれば私たちは長に……、父上に勝つことが出来ますか?」
『それは……』
楓様が俺を見る。
「俺が、関わることですか?」
「隆生」
セインさんが心配そうな顔で俺を呼んだのに構わず、まっすぐに楓様を見据えた。




