其の一 出逢い5
「……マサキだ」
最初は吃驚して警戒していた子供たちも、いくらもしないうちに子供特有の無邪気さで壮軌にまとわりついている。
時代が変わってから生まれたこの子達には、壮軌の容姿はとても珍しい物なのだろう。
「ところで正太。俺に用事じゃなかったのか?」
「そうだ!朝餉ができたって、母さんが」
俺に言われて呼びに来た事を思い出した正太が、慌てて俺の袂を引っ張った。
「じゃあ、みんなで行こうか」
「うん!」
直弥を離して縁側に上がり、壮軌に向かって手を伸ばす。
その手を躊躇うことなく取った彼が立ち上がって同じように縁側に上がった。
「行こう!」
子供たちがぱたぱたと廊下を駆けていく後について、俺達も食堂へと向かった。
子供たちが壮軌の出現にはしゃいで、いつになく賑やかな朝食が終わった後、俺と壮軌は弥市と弥市の父、惣介と俺の部屋で対面していた。
「隆生さん。彼はどういう素性の方なんですか?」
茶を運んできた絹が去った後、惣介が口を開いた。
「裏の桜にいたんだ。……たぶん、俺と同じなんだと思う」
同じ。というのが俺の身体の事だというのは、言わずとも通じたらしい。
二人はお互いの顔を見合わせると小さくため息をついた。
「では壮軌さまは」
「うん。妖の類なんだって」
弥市が言いよどんだ言葉をいとも簡単に口にした俺に、惣介の表情が歪む。
「本宅への報告は如何いたしましょう」
眉間に皺を寄せた惣介が俺を真っ直ぐに見て言った。
「別にあちらには何も言う必要はないよ」
どのみち、本宅の人間は滅多な事がない限りこの屋敷には来ないのだから、わざわざ壮軌のことを知らせる義理もない。
「わかりました」
そう答えて二人が部屋から出て行こうと腰を上げた時、それまで黙っていた壮軌が二人に声をかけた。
「厄介になるが、迷惑であるのならはっきり言ってくれ」
そうきっぱりと言い切られて、二人は驚いた顔をし、次の瞬間にはどちらも笑みを浮かべていた。




