其の陸 対峙 -セインー5
なぜなら、彼は母と同じように無意識のうちに小さな妖をその身に取り込んでいたから。
「うん、俺、思い出したよ。セインさんはだから俺にあんなお願いをしたんだね」
「隆生」
隆生が真っ直ぐに私を見て言う。そうだ、あの時も隆生はこんな風に私を見ていた。
「隆生、お願いがあるんだが」
「何?セインさん」
桜の花弁を手で受けようとしていた隆生が振り向く。
「実は、私の妖力はかなり弱くなっていて、このままでは封印が解けてしまいそうなんだ」
「それは、危険な事?」
頷いて答えると、彼は臆することなく私の前に跪いた。
「俺に、何をして欲しいの?」
その言葉にはっと顔をあげると、真剣な眼差しの隆生と目が合う。
「私と同化して、隆生の身体を貸して欲しい。同化するといっても私は眠りについてしまうから、意識は隆生のものだ。
しかし、同化したあとどうなるか……。それはわからない」
できれば、私達の問題にこの優しい子供を巻き込みたくなかった。けれど、時間はそう長く残されていない。
「セインさんと同化したら、その悪いものは出てこない?」
「あぁ。私が生きている限りは」
私は身体を起こして隆生の手を取った。
元々、隆生には妖を吸収する力がある。それを利用して同化するのだが。
「もしかすると、人のままで居られなくなるかもしれない。それでも」
「俺で役に立つなら、いいよ」
隆生は商家の跡取りだが、身体があまり丈夫ではないらしくよくこの家にくる。
そのせいか自分は必要ないのではないかという思いが強いらしい。
「俺は、どうしていたらいい?」
「そのまま、目を閉じていてくれたらいい」
目を閉じた隆生の額に自分の額をつけて目を閉じる。
あとは自身を隆生の身体に溶け込ませて、眠りについた。
「そして、先刻目覚めるまで隆生の中で眠っていたんだ」




