其の陸 対峙 -セインー4
私と隆生が出会ったのはある春の日のことだった。
軽く身体を揺すられて意識が浮上する。ゆっくりと目を開けると、目の前に男の子供が立っていた。
「お兄さんは誰?どうしてこんな所で寝てるの?」
小奇麗な着物を着た少年が私を見てそう言った。
そのあどけない顔に、何故か懐かしさを感じる。
「君は、私が見えるのかい?」
「うん。でもこんな綺麗な髪の人は初めて見たよ」
少年は臆することなく私に手を伸ばし、肩にかかった髪を触った。
「お兄さんは生きてる人?それともお化け?」
少年の問いかけにぎくりと肩が揺れる。
(この子供は……)
「私がお化けだったら怖いかい?」
「ううん。我にはお化けも生きた人もいっしょだから」
「いっしょ?」
「んと、我には見えているのに、おっかさんにもおとっちゃんにも見えない人と、ちゃんと見える人がいるの」
少年がこてんと首をかしげてそう言った。
「そうか。じゃあ、私のことは内緒にしないといけないね」
「うん、わかった」
にっこりと笑って答えたのと同時に、遠くから人の声が聞こえてきた。
「あ、呼んでる……。また来てもい?」
「いいよ」
私が答えると、少年はくるりと後ろをむいて駆け出す。
小さな少年が成長して立派な青年になるまでの間、世界はどんどん変わっていった。
変わらないのは私だけ。
「セインさんは変わらないね」
「私は人とは時の流れが違うから」
あれからすぐにまた彼はやってきた。
お互いの名前を教えあって、時々こうして他愛もない会話を楽しむ。
隆生と話をしながらも、私は自分の妖力が衰えている事に気付き始めていた。
隆生はどこか私達の母と面差しが似通っている。
以前にそれとなく母から聞いていた一族ではないのかと聞いてみたが、『うちは普通の商家だよ?』という答えしか返ってこなかった。しかし、私は彼が母の一族であると信じていた。




