其の陸 対峙 -セインー2
『お前の相手はこの私だ、壮軌』
二人を追おうとした壮軌にそう声をかけ、得物を呼び出す。
『いでよ、水月』
壮軌の茜丸と対をなす、水妖を宿した太刀が私の手の中に現れた。
水と炎。世の理であれば私の方に分がある。けれど壮軌には長が付いているので楽観は出来ない。
(どうするか)
できれば、殺したくない。どんな生い立ちであれ、私達の弟に変わりはないのだから。
自ら刃を向けることを戸惑う私とは反対に、壮軌は次々と攻撃を仕掛けてくる。
殺したくはないが、力を削がなければラズナ達が危険だ。
そう判断して迷いを捨てた。
躱すだけだった動きを変えて、自ら壮軌に向かって太刀を振るう。それを難なく茜丸で受けた壮軌と真正面から向かい合った。
『壮軌……』
間近に見える瞳に意思の光はなく、暗い色をしている。
ギィンと耳障りな音を立てて互いの太刀が跳ね返され、十分な間合いを取って立つ。
その時、ざわりと空気が変わった。
《主殿、気を付けられよ》
響いた水月の声に反応したように壮軌の手が動く。
『そんな、まさか』
振り切った壮軌の手から放たれたのは水の塊。
彼は炎と水、相反する力を使えるというのか。
水弾を躱して壮軌に向かい、振り下ろした刀はやはり容易に受けられてしまう。
再びぎりぎりと鍔迫り合いになった時、彼の右の頬と首に鏡の形をした印が浮かんでいるのに気付いた。
私たち兄弟には、各々身体の一部に長の力を受け継いだ証の印を持っているが、みな一ヶ所だけだ。
(それを二ヶ所も持っているなど……)
長は一体何を考えているのか。本当にこの世が滅んでしまっても構わないと?
それを止めるには、もう兄弟だから殺したくないなどという甘い考えは捨てなければならない。




