其の陸 対峙 -セインー
私達がやっと追いついた時、壮軌は一人の女妖の首を刎ねようと刀を振り上げたところだった。
『壮軌!』
急いで彼の腕を掴んでそれを止める。腰が抜けてしまった女妖はラズナが抱き上げて離れたところへ運ぶ。
振り向いたその瞳は何も映さず虚ろで、何の感情も浮かんでいない。
『何故、邪魔をしようとする?』
声と共に身体が大きく跳ね飛ばされ、壮軌を掴んでいた手が離れた。
咄嗟に受身を取って立ち上がり、壮軌を見るとそこには長も立っている。
『父上……、何故』
『楓の居らぬ世界など、意味はない』
『だからと言って、このような……。それに彼は貴方の子ではありませんか。それを』
『アレはただの傀儡よ』
私の言葉を遮って、長が吐き捨てるように言った言葉を一瞬理解できなかった。
『彼は、ご自分の子だと、さっき言ったではありませんか』
『そうか?だがアレに自我はない。我の思う通りに動く人形に過ぎぬ』
なんて、酷い事を。
これがあの優しかった父か。最愛の者を失うのはこれ程までに狂気を呼ぶのか……。
『邪魔をするなら、お前たちも消すまで。壮軌、こいつらを殺せ』
呆然と佇む私達を尻目に、長がそう言い放つ。それと同時に壮軌が刀を振り上げて私達に向かってきた。
『ラズナ!ユーリを連れて逃げろ!』
間一髪のところで攻撃を避け、私は弟たちに逃げるよう指示を出した。
『兄者はどうされるのです!』
『私は、あの者を止める。お前達は早くここから去れ!』
私の言葉が終わらないうちに、壮軌がまた仕掛けくる。それを躱してラズナの背を押した。
『さぁ、早く!』
小さく頷いたラズナがユーリを抱えるようにして屋敷の方へと走っていく。




