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其の肆 血族 -隆生ー

 庭で壮軌に相手をしてもらって剣術の稽古をしている正太と直弥の姿を縁側に座ってぼんやりと見つめながら、この間の事を思い出していた。

『隆生と同化している妖は、俺を殺そうとした、妖だ』

 あの日、壮軌の言った言葉が頭から離れない。

 俺が壮軌を殺そうとした妖と同化しているなんて、どういう事かさっぱりわからない。

 過去の記憶が思い出せないことと、あながち無関係ではなさそうなのだけど…。

 はぁ。とため息をつくと、壮軌がこちらを見た。

「どうした、隆生」

 濃緑色の瞳が俺を見ている。

(壮軌は、どう思っているのだろう)

「隆生?」

 また少しぼんやりとしていたらしく、近くに聞こえた声にはっとして顔を上げると壮軌が目の前に立っていて、目が合うと俺の頭を撫でた。

「俺の言った事は、あまり気にしないでいい」

「でも」

 自分を殺そうとしたものが近くにいて気分がいい訳ない。

 なぜ俺は、過去を思い出せないのだろう。それが今まで以上にもどかしく感じる。

 子供達は母屋の方へ行ってしまったのか、遠くからはしゃいだ声が聞こえていた。

 そちらに視線を移すと色とりどりの春の花に彩られた庭が目に入るけど、俺の気持ちは晴れない。

「壮軌は、もう全部思い出したのか?」

 視線を戻すことなくそう言うと、俺の頭から手を退けて、壮軌が俺の隣に座った。

「俺が思い出したのはこの間話した事だけで、あとはまだ何も」

「そうか…。俺は全然思い出せないよ」

 何度か思い出そうとしてはいるものの、まるで記憶が何か箱のようなものの中に閉じ込められて、厳重に鍵を掛けられてでもいるような感覚がするだけだった。

 おそらく、俺の記憶は何者かによって封じられているのだろう。そうでなければこんな感覚が起きるはずもない。

 記憶の鍵。それが何なのか分かれば、記憶も戻るはず……。と、そこまで考えてぞくりと身体が震える。

 俺が記憶を取り戻せば、確実に何かが変わってしまう。そんな気がした。

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