其の弐 神木 -壮軌ー3
「透、私達は一体……。それに、木霊の気がないのにどうして無事なのだろう……」
「解りません。けど、人として存在している訳ではないようです」
そう言って俯く透の頭を、露樹が優しく撫でた。
それから俺たちの方へ向き直ると、二人並んで平伏する。
「いくら操られていたとはいえ、私達のしでかした事は許されるとは思っておりません。どうか、お気の済むようになさって下さい」
伏したままそう言う露樹に、隆生が戸惑っている気配がした。
「俺は……、別に貴方達をどうこうしようとは思わない」
「しかし、」
隆生が俺の手をやんわりと外して彼らに近寄ると、その肩に手を置く。
「悪いのは、あの木霊だろ?そいつはもう消えた。それでも貴方達が生きているのは、この樹が選んだからだと思わないか?」
そう言って笑う隆生に、二人も何となく納得させられたのか、顔を見合わせて微笑んだ。
「そう、みたいですね…。桜の呼ぶ声が聞こえます」
そう言った露樹の姿が、次第に薄れていく。
「汚れてしまった力を浄化する為に、しばらく眠りにつかなくてはいけないようです。
けれど、何かあればいつでもお呼び下さい。必ず助けると誓いましょう……」
後を追うように透の姿も次第に薄れていき、露樹の言葉が終わる頃には二人の姿はその場から消えていた。
「壮軌…、疲れた。俺たちも帰ろう」
「そうだな」
「って、どうやって帰るんだ?ここがどこかも解らないのに」
あたりをきょろきょろと見ながら隆生が不安そうに呟く。
「あぁ、それなら」
ここに来るときに透が《道》を繋いだのを見たとき、俺にもできると思った。
その時感じた感覚のままに、右手を前に伸ばして力を込める。
すると透がしたのと同じように空間が歪んで見慣れた庭が少し先に現れた。
「壮軌って……、何者?」
「ただの妖だが?」
「ただのって……」
絶句した隆生に、俺の方が呆れる。




