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其の弐 神木 -壮軌ー

 透と名乗った少年の爪が伸びて、鋭利な刃物のようになると俺に向かってきた。

 それを背後に庇った隆生と共に一歩下がってかわす。

「隆生、俺から離れろ。できれば、弥市の所へ行け」

「わかった」

 再び襲ってきた透の爪を避けながら隆生に告げると、彼は小さく頷いて縁側に上がって走り去る。

 隆生の許で暮らし始めるのと時を同じくして、姿を現し始めた妖共が『隆生を護れ』と口を揃えて言うものだから、俺もいつの間にか彼を護らなければならないと考えるようになっていた。

 透の攻撃をかわしながら太刀に手をかける。

 それを見た透が地面を蹴って俺との間合いを詰めると、手を振り上げてきた。

 間一髪のところで刀を抜いて攻撃を防げば、金属の触れ合う硬質な音が響く。

 返す刀で俺も奴に仕掛けるが難なくかわされてしまった。

「放せよ……っ!」

 何合目かの打ち合いの後で、隆生の声が俺の耳に入った。

 攻撃をかわしながら声のした方を見ると、隆生が一人の男に抱きかかえられている。

「隆生!」

 俺が叫ぶのと同時に隆生の瞳が閉じて、ぐったりと身体から力が抜けるのが見て取れた。

 そちらへ駆け寄ろうとした俺に、透がまた攻撃を仕掛けてくる。

 それを跳ね飛ばして一歩踏み出した途端、男と隆生の姿が溶けるように消えた。

 同時にパキリと何かが砕けるような音がして、周囲の様子が元に戻り、今まで対峙していた透がその場に(くず)れるように膝をついた。

 その顔はさっきまでの人形のとうな無表情ではなく、心なしか青褪(あおざ)めて見える。

「おい、あれは誰だ。何故隆生を(さら)った?」

 胸元を掴んで引き寄せ問い詰めると、透の瞳が揺れた。

「彼は、私の兄です。…理由(わけ)を話しますから、離して下さい」

 俺が手を離すと、透はその場にしゃがみ込んで俺の足元を見るようにして話し出した。

「私と兄、露樹(つゆき)は古い商家に生まれました」


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