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堤千代の作品に関するおぼえがき

今回は何というか、メモです。

堤千代という、ある限定された期間にのみもの凄く人気があった作家も調べてはいるんですが、いかんせんついつい時間の無さとかでうやむやになってしまうので。

たぶんまだ整理がつかない本があるはずなんでその都度足して行く予定です。

あと、少女小説も戦後にはまとまった本がありましたので、それせも後で。


なおこの方に関しては、妹さんの大屋絹子さんの書かれた追想記『オフエリアの薔薇』(私家版)と、『主婦之友』に昭和28年に連載された自伝「ひとすじの流れ」、それに亡くなった昭和30年辺りに『文藝春秋』に書かれた夫君の手記が手がかりに。

ただし最後の一つ以外は入手が非常に困難。『オフエリア~』は古書店ネットで見つけないとまず手元には置けない。


このひとは短篇が基本。ですが長編もそれなりに書いてます。

吉屋信子が『月から来た男』を最後に昭和18年で抜けた後に終戦近くまで「あと山さき山」(単行本にはならなかったろーなー……書かれた時期が時期だし)連載していたことからすると、このひとは相当読まれていたはずなんですね。


☆「あと山さき山」は炭坑の話どす。

 どうやら義理の弟さん(前述の大屋さん)が九州の炭坑から手紙を送ってきた、ということが自伝にも出ています。

 この話/というかこの人が書いた、という点で興味深いのは、

・炭坑という場所を使って時局に応じたフィクションを書くストーリーテラーとしての才能 → これは戦後の主婦之友20年12月号では「鳩の指環」という「米兵とのちょっといい話」を既に書けてしまうあたりにも。ちなみにこの疎開中にこのひと二階から落ちて大怪我してます。

・作中の朝鮮人の扱い。

 話の中で、朴という旧両班出身の青年が出てくる。彼はこの話の当初は「半島人だから従軍できない」ことを辛く思い、せめて産業戦士として働こうとするという位置。で、最後には「とうとう召集令状がきた」と喜ぶ。

 これを堤千代という、情報を「人から聞くことしかできない」人が書くということが重要。この状態が「普通」であり、また、「主婦之友」で書かれてるということで、「当時の国民に望まれてる」状況だったことを物語ってる。

・何はともかく、この時代に完結できたということが凄い。


上記つらつら言ってね理由。

この人は「寝たきり作家」でした。

言葉のあやではなく、先天性の心臓弁膜症で本当に病床でうつ伏せで原稿で書いていたという事実があります。

そういう人だからだからと思うけど、ともかく弱者の立場に身を置いた優しい話が多い。病人(戦病兵も含む)率が恐ろしく多い。

で、男女恋愛は結構心情的に濃厚。

忘れ去られるには惜しい。


それに吉屋と並んでこの時代「フィクション」専門で書いていた作家なのだから。

それでいて、性質が真逆と言ってもいい人だから。


*小指

 新潮社


*再会

 新潮社 昭和16年4月

 ・すみれ人形

 ・小さな靴下の話

 ・再会

 ・妻

 ・影なき人

 ・雛の扇

 ・子供

 ・親


*夕雀草

 新潮社 昭和16年10月

 ・夕雀草

 ・遠き花

 ・海驢の茶碗

 ・きぬかつぎ

 ・母子草

 ・夢やらひ

 ・母

 ・真実

 ・匂ひ刷毛

 ・晩秋


*柳の四季

 新潮社 昭和17年7月

 ・柳の四季

 ・京紅(主婦之友 昭和17年6月)

 ・霧晴れ

 ・雪の日

 ・其の日の妻

 ・母娘人形

 ・日本の女の魂

 ・春の毛糸

 ・朝顔

 ・心の日向

 ・空かける幸福


*我が家の風

 新潮社 昭和18年


*青い手袋

 新星株式会社出版部 昭和21年12月

 ・遠き花

 ・夕雀草

 ・きぬかつぎ

 ・灯

 ・青い手袋

 ・都わすれ

 ・匂ひ刷毛

 ・真実


*匂ひ刷毛

 労働文化社 昭和21年


*ラヴ・レター

 近代社 昭和22年4月

 ・二人で見る月(主婦之友 昭和21年2月号)

 ・鳩の指輪(主婦之友 昭和20年12月号)

 ・私の人形(主婦之友 昭和21年5月号)

 ・絵画・「冬と春」

 ・緑発のポン(主婦之友 昭和21年4月号)

 ・冬を越す日

 ・京紅(再)

 ・春の毛糸

 ・朝顔

 ・はづかしき

 ・ラウ・レター


*我が恋は世に早く

 労働文化社 昭和22年7月

 ・我が恋は世の早く(長編)


*文鳥

 東西社 昭和22年9月

 ・文鳥(主婦之友 昭和18年1月~19年2月)

 ・再会(再)

 ・桃代


*白粉帖

 世界社 昭和22年11月

 ・こひごろも

 ・野路の顫音トレモロ

 ・花束

 ・冬を越す日(再)

 ・緑発のポン(再)

 ・私の人形(再)

 ・想夫恋つまごい

 ・おひ羽根

 ・女郎花

 ・千松の恋

 ・カチュウシャどめ

 ・白粉帖


*小鳥の接吻

 華頂書房 昭和23年9月

 ・小鳥の接吻

 ・雛鳥

 ・わびすけ椿

 ・伊勢の家

 ・紙つぶて

 ・夫婦箸

 ・我が子汝が子

 ・かほよ人の記


*光は露に宿りて永遠に

 ロマンス社 昭和23年10月

 ・光は露に宿りて永遠に(長編)

 ・白鷺(主婦之友 昭和17年11月)

 ・初かりの野


*花うばら

 東方社 昭和28年12月

 ・花うばら(長編)

 ・妻

 ・くせ

 ・きぬかつぎ(再)


*ひなぎく物語

 東方社 昭和29年3月

 ・ひなぎく物語(長編)

 ・父

 ・白いルル

 ・おもい


*るり鳥

 東方社 昭和29年6月

 ・るり鳥(長編)

 ・ハバロフスクは雪

 ・カチュウシャどめ(再)


*若い瞳

 東方社 昭和29年


*かた想い

 東方社 昭和29年


*れい子の道

 東方社 昭和29年


*ねむの木さけども(主婦と生活 昭和28年連載)

 東方社 昭和29年



*清ら妻

 山田書店 昭和30年2月

 ・清ら妻(長編)

 ・白鷺(再)

 ・初かりの野(再)


*小紋鳥

 東方社 昭和30年


*朱い花々

 東方社 昭和30年


*愛

 東方社 昭和31年1月 東方新書

 ・愛

 ・親

 ・子


*花は散れども

 東方社 昭和32年


*単行本未刊行?

・撫子の記(主婦之友 昭和17年7月)

・一時雨(主婦之友 昭和17年8月)

・麗春花(主婦之友 昭和17年9月)

・ふり鼓(主婦之友 昭和17年10月)

・勿忘草(主婦之友 昭和17年12月)

・あと山さき山(主婦之友 昭和年3月~20年3月)

・春光の下に(主婦之友 昭和20年4月)

・坊やの名前(主婦之友 昭和21年3月)

・くちなし女(オール読物 10巻9号)

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― 新着の感想 ―
[良い点] 私の母は堤千代さんの妹、絹子です。 今年、母 絹子は福岡市で92歳で永眠しました。 堤千代の件 本当によく調べられましたね。 ご努力感謝します。 私は大屋健二 母 絹子の次男です。
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