就職面接に必要なのは、根拠のない自信
「このような素晴らしい首飾りは見たことがない。亡くなられた円旬殿が、そなたに飛鳥井家に届けるように頼んだということは、飛鳥井家の宝物なのか」
滝川新助は、差し出されたクロム○ーツの首飾りをみて、驚くように秀一に尋ねた。
(そりゃ現代の工業製品なんだ、見たことあるはずがねえだろ。自分で言ってても胡散臭い話だが、少しは信じてくれたのかね。さあ、「円秀」はどんな立ち位置の人間にしようか)
「円旬様は、私には「仏像を飛鳥井家に届けるように」と仏像と書状を渡されただけで、首飾りについては全く仰られませんでした。もしかしたら、書状には書いてあったのかも知れませんが、道中は開くことがないようにと封がしてありましたので、私にはわかりません。飛鳥井家には、仏像と書状をみせればわかると仰られました」
「それでは、なにも分からないのと一緒ではないか。この首飾りは、誠にお主が円旬殿から預かったものなのか」
滝川新助は怪しむように秀一を見た。
(ですよねー。さあ、ここが正念場だ。何とかハッタリで誤魔化してみせる)
「私が円旬様から預かったのは、仏像と書状でございます。その両方がない今、私と円旬様との縁を示すものは、生前に円旬様より教わった「蹴鞠の技」のみでございます」
突然に蹴鞠の話が出てきたことに、滝川新助は怪訝な顔をする。
「円旬様が庶子であることを告げられ際に仰られたのですが、飛鳥井家は蹴鞠を家伝としているのだそうです。生前の円旬様は、お仕えしている私に、その技の一部を教えてくださいました。教えて頂いた時は「子供たちに見せれば、驚いてくれるぞ」と笑っておられましたが、実は秘伝の1つだそうです。
その技をみて、判断頂けないでしょうか」
(飛鳥井家が蹴鞠を家伝としていることは、一般には知られていないだろうが、調べればわかることだ。そこで見たこともないような技を見せれば、ちょっとは信憑性が増すだろ)
「そうか、飛鳥井流の秘伝の技が見れるのか。みなを集めるので、そこで披露してくれ。その技をみて、貴殿の話を信じるか決めよう」
滝川新助は嬉しそうな顔で皆を集め始める。
それを見た秀一は、自分がミスったことに気付いた。
(飛鳥井家の蹴鞠って有名なのかよ‼)
蹴鞠は、織田信長が相撲を推奨するようになって衰退しますが
それまでは武家、公家、民衆問わずに大流行しています。
そのなかでも、飛鳥井家と難波家は蹴鞠の大家として全国的に有名でした。