芸は身を助けるはずだ
秀一は、自分が持っている物と足りない物を考えてみた。
(持っている物)
「シルバーのネックレス」「作務衣」「裸足」
「短い髪の毛(黒色)」「白い肌」「賊に襲われたという作り話」
「現代の知識」「兵の上司がタキガワシンスケだという知識」
(足りない物)
「地理情報」「時間情報」「ここでの常識」「身分を示すもの」
その結果、秀一が考えたのは「公家の縁者を騙る」ことだった。
今がいつかが分からないし、ここでの常識もない状態では、武家、商人、僧侶を名乗るのは難しいと考えた。農民であれば、こんな高価な物を持っている訳がない。
その点、公家の縁者であれば、下々の者とは常識が違っていると言い訳できるかも知れない。シルバーのネックレスを着け、周りに比べて明らかに立派な服(作務衣)を着ている理由にもなるだろう。
では、どんな公家の縁者なろうかと考えた時に、ある神社と公家が思い浮かんだ。
白峯神宮という神社がある。京都市上京区にあり、そこに祭られている精大明神は「サッカーの守り神」である。秀一はワールドカップの年に京都に行った際に訪れたのだが、その神社は「飛鳥井家」の屋敷跡地に立てられていた。
飛鳥井家は「藤原北家花山院流難波家の庶流」で「羽林家」で「蹴鞠の大家」であった。秀一は後ろの2つを覚えていたのだ。
(蹴鞠ってのは、要するにリフティングだろ。それならちょっと自信があるし、何とか誤魔化せるんじゃねえか)
兵達は「大納言」という言葉に驚いたのか、秀一のほうを凝視した後「失礼致しました。滝川様の元にご案内致します」と告げた。
秀一は、第一の賭けに勝った。
ご都合主義が続きます
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