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インパクトは必要です
「宗兵衛様、こんな後ろじゃ目立ちませんよ。お屋形様から見えるように、前に行きましょう。何のために、こんな化粧したと思っているんですか」
秀一は、グイグイと自分の主の背中を押していく。主の顔には派手な化粧が施されており、周りの「餓鬼」達とは大きく違っていた。
「宗兵衛様、練習したようにもっと派手に動いて下さい。又左殿や利之殿には、負けられませんよ」
宗兵衛の動きは、周りと比べると際立っており、観衆の目を集めていた。
「なんで、俺が二人に勝たないといかんのだ。二人はお屋形様の馬廻り衆だぞ。それに、お前は普通の動きなのはなんでだ。一緒におどるはずだろうが」
宗兵衛の目線の先には、お屋形様の近くに座る二人がいた。
「主従そろって派手なのは、傾奇者じゃありません。今後、誰が荒子衆の上に立つのかを、示さないといけません」
秀一は、主に聞こえないように呟く。
「じゃないと、追い出されちまうぞ。前田慶次さんよ」
(8/13)口調を変更しました