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Advent Online  作者: 枯淡
深夜の冒険編
5/34

05 エルダ村でスタップ!

今回は会話多め。

0時過ぎに挿絵パーン!

「貴様止まれ!何用でここに参った、怪しげな風体の女共め、話だけは聞いてしんぜよう」

「虚無僧!?あ、プレイヤーか……。ここはエルダ村でいいかな?」

「あ、はい、そーっスよ。つかノリにはノリで返してくださいよー、折角こんな格好までしてるのに」


衛兵の男性は槍を片手に持ち袴着物に虚無僧スタイルという、和風な衛兵なのか刺客なのかよく解らないスタイルで決めていた。もうそんな装備を作れる職人が出てきたのか。刀はちょっと憧れる。


「悪い悪い、仕切り直すか?」

「え、いーんすか?それじゃサービスで丁寧に行きますね」


「スタップ!首長の命令により止まれ!!」

「それ違うゲーム!!」

「膝に矢を受けてしまってな……」

「まだ何も聞いてねーよ!?」

「いやぁ、一度言ってみたかったんスよ。つかこのネタ分かるなんて、結構ゲーマーッスか?」


某よげんのしょのゲーム五作目で使われたネタだ。西洋ファンタジーって言う点で合っているのに、和服で言うもんだから違和感が半端ない。


「まぁ、それなりにはな。オールドゲームの中でも、あのシリーズは好きだよ」

「あれのVRMMOが出てるって話だけど、やらないんスか?」

「俺英語できねーし」


そのゲームは未だに日本語対応してくれていない。けど、あのゲームPvPが横行してるから、まったり志向の俺としてはあまり気乗りしないんだよね。


「あの、ニノちゃん。この面白い格好の人はお知り合い?」


あぁ、しまった。アリシアさんを放置してしまっていた。

クラスメイト以外では初めての会話だし、純粋なネタプレイヤーと思うと親近感が湧いてくる。同郷の様な親しみを持ってしまうのだ。

ふとアリシアさんを見てみると、声色に似合わずほっぺがぷくりと膨れていた。

何この可愛い生き物。


「いや、知り合いでもないけど。何て言うのかな、同じ穴のむじな?」

「同志と言ってくれ給へ、少女よ。ところで名前はなんてーの?俺は義助。義によって助太刀いたす、の義助」

「俺はニノだ。何だ、横殴りプレイヤーか」

「助太刀だって言ってんでしょーが!ていうか、ニノちゃんか。可愛い名前だね。そっちの金髪の子は?」

「あ、私はアリシアと申します。ニノちゃんの姉です」

「「マジで!?」」

「いや、なんでニノちゃんまで驚いてんスか!妹じゃなかったのか!?」

「あぁ、うん妹、妹、沙羅たん最高」

「なんと、妹ぽーたぶるまでやっているとは……。同志とは誠であったか!」

「俺、沙羅たんと出会うまで緑髪キャラって寝取り上等ビッチキャラとしか思ってなかったんだよね。いやぁ、いい意味で新しい風が吹いたよ」

「ふふふ、しかしそれがしには雲母きららたんという最高の妹がいるのでぷよ。沙羅たんもいいでぷが、個人的には雲母たん全力推しでぷなぁ」

「いや、お前それはもうシスコン通り越してペド野郎じゃねーか!」

「おや、そう言えばそのアバター……雲母たんにどこか似ている気が……」

「止めてくれ、このアバターには俺の意思は1ミクロンも入っちゃいねーよ」


 なんせこのアバターは、男子の劣情と女子の劣等感が綯い交ぜになった合作なのだから。雲母たんと似てるのは確かだが。もしや、成田の奴……妹ぽーたぶるをプレイしてこの姿を作ったのか……!?

 もしそうだとしたら、何て奴だ……俺が沙羅たんファンだと知っている癖に……っ!!


「ところで、お二人はこの村に入るので?」

「あ、ああ。忘れてた。おう、二人入らせてくれ」

「では、こちらの石版に右手を乗せてくだされ。犯罪歴を調べますのでな」

「犯罪歴……一つ聞くけど、盗賊討伐は犯罪にならないよね?」

「当然であろう、某も一度盗賊討伐をしておりますが、こうして衛兵のバイトが出来ているので問題なし」


 あ、衛兵ってバイトだったんだ。ていうか、随分と割のいいバイトじゃないだろうか。

 今度俺もやろう。そう考えながら、石版に手を置く。


「ちなみに、衛兵のバイトは戦闘職以外は出来ないッスよ」

「ちっ」

「ニノちゃん、顔に出てるから分かりやすいッスね~♪」


 くそっ、顔に出てたか。なんかコイツ良い奴だと思ったけど訂正、嫌な奴一歩手前だ。


「じゃあな、またどこかで会う事があったらボコッてやんよ」

「うは、幼女にボコられるとか俺得www」


 くっ、そういやコイツペドだったな!


「むぅ~」

「アリシアさん?」


 さっきから大人しくしていたのだが、義助と離れたところで唸り声を上げ始めた。何だろう、トイレかな?いや、これゲームだしトイレないか。


「私のニノちゃんが知らない男の人と楽しそうにお話を……ぶぅ……」

「いや、俺はアリシアさんの物じゃないからな?」

「大丈夫ですよ、同性結婚なら私が王位を継げば余裕ですから」

「無駄な事に権力を使わないで。ついでに、どう足掻いてもボーイズラブな未来しか思い描けないから本気でやめて!」

「じゃぁ今日は一日、私だけのニノちゃんです」


「はい?」


「私だけのニノちゃんです!」


 等と供述しており、プロフィール的には20㎏もある俺のアバターを抱き上げられてしまった。上機嫌に鼻歌なんぞ歌っておりますが、確実に疲労ですぐにでも降ろしてもらう事うけあいです。俺はただ待っていればいいでしょう。そう、この後頭部にあたるふにふにしたいい匂いのする柔らかい物体を極力意識から外して考えるのです。無の境地だ、素数を数えるんだ、素数って何だ、こうなったら生命の神秘「羊レース快眠法」で意識を無理矢理落とすしかふにゃぁ。




◆◇◆




(アリシア視点)


 ニノちゃんが知らない男の人と話しています。なんだか忘れられている様な気がしているのですが、気のせいですよね?ニノちゃーん、こっち向いてー。


 向いてくれません。話の内容的に、良く解らない単語が出てきていますが、どうやらニノちゃんと同じイモータルの方みたいです。わたくしでは駄目なのでしょうか……駄目なんでしょうね、わたくしはあくまで定命の存在。老いもするし死にもする。そんな女が傍に居ちゃいけないんでしょうね。過去のイモータルの方々は、長命種であるエルフやドワーフなどの半精霊、半妖精の方と一緒になったと聞きます。ただの人でしか無いわたくしには、そんな価値はないのでしょうか……。


 いけませんね、こんな暗い事を考えていてもどうにもなりません。今はとにかく王都へ戻る事が重要です。そのためには、どこか美味しい料理屋さんが在ればいいんですが……む、この香りは……お肉の香り……いえ、それだけじゃない、ワインの様な芳醇な香りに濃厚な肉汁が混ざり合って。ふふ、香りだけでわたくしをここまで楽しませるとは、なかなか凄腕の料理人がいそうですね。


 どうやらあのお店の様です。お話が終わり次第行きましょう。




「むぅ~」


 長かったです、物凄く長かったです。異国の言葉で話されると余計に疎外感を味わいます。新発見です。うごごごごご。


 もういいです。ニノちゃんは私がお嫁さんにします。そのためなら国王でも何でもなってやるです。男の人なんて寄せ付けてやるものかです。


 そんな事を言ったらスッパリ拒否されました。仕方がありません、とにかく今日はわたくしだけのニノちゃんです。いっぱい甘やかしてやりますよ!




◆◇◆




「はい、あーん」

「……あーん」


 もぐもぐ。うん、このステーキめっちゃ旨いな。


 やぁ変態の紳士諸君。俺は今美少女の膝の上に座って、胸をクッションにご飯をあーんされているんだ!羨ましいかい?ははは、そうだろうそうだろう。頼む、代わってくれ。俺の理性が持たない、男だったら息子が第一種戦闘配備を取っている所だ。リアルでは取っているかもしれない。きっと顔は高速機の三倍の速度が出るレベルで赤いだろう。角なんてそそり立っているに違いない。


 でも同時にこの極楽、譲りたくないっ!


「はい、ごちそうさまでした~」

「ごちそうしゃまでした」


 噛んだ、めっさ噛んだ!しかも何故か力いっぱい抱きしめられているのだけど。苦しいのだけど!!


「そうだ、食事も終わったしニノちゃんの服を見てみようか」

「いや、俺はまだ大丈夫だから」

「でもニノちゃんの服は普通の服でしょう?下着も汚れているだろうし」

「変な言い方すんなって……」


 周りで食事をしていたプレイヤーと思しき連中が、そんな言葉を聞いてヒソヒソと話始める。おちつけ、此処ゲームだから。排泄ないから。汚れるって時間経過で耐久度が減るってだけだから!!石鹸使って洗えば耐久度も回復するでしょお!?


 くっ、ニヤニヤしやがって。ここで男だと言ってしまいたいが、アリシアさんにこれだけスキンシップを取られた後だ。いくらNPCとは言え、申し訳ない気持ちがぬぐえない。


「んー、どうしましょうか……」

「あれだ、服なら王都に行ってからでもいいだろ?今は別の物を買いたいんだ」

「別の物?」

「そう、装備品だ。武器とか鎧とか、そう言ったこれからの道中を安全に進むための保険が欲しい。そう言えば、アリシアさんて魔術っぽいのを使ってたけど、あれは何なの?」


 そう、俺がノームリーグ兄弟をボコッている時に詠唱からの魔術を使われたと記憶している。たしか、そう。夕凪の心とかいう魔術だ。


「あれは教会魔術ですよ」

「教会魔術?」

「はい。信者の心を鎮め、時には素直に、時には強く。そんな心を補助する魔術です。主に懺悔に来られた方や、戦いに臨む際に広く使われている魔術ですね」


 ふむ、精神系の支援バフの一つなのだろうか。恐らく独自に進化した教会固有の魔術なのだろう。そうなると俺達プレイヤーには取得は難しいかもしれない。待てよ……?


「それって襲ってきた魔物にも有効なのかな?」

「え?……いえ、今まで使った事も、使われた事も無かったので、何とも……」


 なら、物は試しでやってみるか。とりあえず聖女セットは回収してあるから、出発の時に装備すればいいだろう。


 あとは俺だけど、出来れば初心者装備を卒業したいんだよな。治癒師セットではあるけど、ログインと同時にもらえる初期装備のままだし。杖もただの治癒師の杖だもんな。

 せめて杖だけでも新しくしたい所だ。そもそも耐久値がかなり減ってるし。


「ただ、この規模の村だから武器屋があるかわからないんだよね」

「ふっふっふ。お客さん、そういう時は通りすがりの職人に頼めばいいよ!」

「うわっ、ビクッた……何?つか誰?」


挿絵(By みてみん)


 突然話に割り込んできたのは、ポニーテールに緑髪、赤い瞳を持った低身長な(俺よりも高いが)お子様……え?姉貴?三輪燈子みわとうこその人?マジで?

 脳内で話しかけて来た子の髪色を黒にしてみる。うん、どこからどう見ても姉貴だ。まさかリアル写真をスキャンしてきたんですか?いや、そんなまさか……。もしそうだとしたらヤバいな。ただでさえこのアバターなのに、膝上だっこにあーんまで見られていたとなると心が折れてしまう。姉貴よ、全力で俺を見逃せ!全力でだ!!


「こんなかわいい子の武器防具だったら、全力で作っちゃうよ!色々とサービスもしちゃうよ!」


違う方向に全力出すみたいだよ……。


 こうなったらアリシアさん、絶対に俺の名は呼ばないでくれ。絶対にだ!という意思をアイコンタクトで送る。俺の意思に気が付いたのか、アリシアさんはコクリと頷いた。


「もっと強く……ですね、分かりましたニノちゃん!!」


 ぎゅっと抱きしめられ、密着度がぐっと高くなる。背中に感じる体温、お腹に感じるアリシアさんの柔らかな腕、そして何より背中に密着するアレがヤバいくらいに……。って今名前言いやがったこの人!流石食の聖女、食事以外は全くの無能だな!!


「ニノ……ちゃん?」

「……ッ」


 聞き取っていた。聞き取っていたよこの人。こういう時はラノベ主人公がごとく「え?なんだって?」という難聴スキルを発動すべき時でしょう!?


「あ、あははは、実はあたしの弟もニノって名前なんだよ~。奇遇だねぇ」

「ソ、ソウデスネ……」

「……………………」

「……………………」

「吐け」

「俺がニノでございます」


 やっぱり姉貴には勝てなかったよ……。


「はぁ……何してんのアンタ。そんな、ぷっ、可愛らしい、ぶふっ、アバターで……くひひっ」

「笑いたければ笑えよ……俺の意思じゃねーんだよ……」

「ニノちゃん、ニノちゃん、ニノちゃん、クンカクンカ、ハァハァ」

「やめろ、可愛そうな目で見てやるな。この人、食い物以外は基本ポンコツなんだ」


 ていうか抱きしめるのは良いけど、嗅がないでほしい。匂いも実装されてるから。


「あー……取り敢えず、フレ登録だけしなさい。見たところ支援職でしょうけど、それならそれで使い道はあるから。全く、アンタが前衛のつもりで生産&遠距離仕様にしちゃったじゃないの……」

「すまん……ところで姉貴は何かのクエストか?」

「んや、ここいらのモブが嵌め殺し出来る程度の足の速さだから、ちょっと狩りにね」

「それなら、出来れば協力してほしい事があるんだが、いいか?」


 この姉貴は重度のネトゲ廃人。一応学校に来ているものの、PCの電源は常にON、離席時は基本露店販売、あらゆる休み時間をネトゲに費やしつつも成績を落とさぬ超人的廃人である。今も生徒会副会長の癖に、こんな深夜二時半くらいになってもログインしているしな。俺が言えたことじゃないけど。


 そんな姉貴だから、勿論AOのβ版にだって参加している。俺は参加できなかったけど、姉貴から色々と話は聞いていた。βプレイヤーは所持金と生産レシピ、好きなアイテム一個だけが持越しになるという事を。


「姉貴の力を貸してくれ。今の俺じゃ、力不足なんだ」

「ふぷっ、そりゃ、そのロリボディじゃ無理だよね……っ」


 くっ、この姉は……っ!リアルでもロリボディの癖に……。


「それで、ここじゃ話せない事?」

「あ、ああ。今日は一拍するつもりだし、姉貴が武器を作ってくれるならすぐにでも部屋を取ろう」

「んー、まぁいっか。その代わり、用事が終わったら奴隷の様に働いて貰うからね?」

「へいへい……でも俺クラスの連中にも働かされてるから、その空き時間でいい?」

「………………明日は凸る。副会長権限で優先的に働いてもらうから」

「酷い横暴もあったもんだ……」

「ニノちゃん、ニノちゃん、ペロペロ、はむはむ」

「ひゃっ!?ちょ、アリシアさん、やめっ、ひぅ、にゃぁぁぁぁぁ……」

「うわぁ、これがリアル極道面がやってると思うと引くわぁ……」

「んまい!」

「「んなわけあるかぁ!!」」

ニノ(三輪神璽)

性別:女

治癒師Lv17 HP880 MP1120

Status 1LvUP毎に+4point

Str:1

Agi:1

Vit:1

Int:55

Dex:15

Luk:1


Skill (Skill point 20/34) 1Lv毎にSP+2 熟練度100時、次Lvに必要なSP2

【ヒール:熟練度36】【キュア:熟練度2】【聖撃ホーリーショット:熟練度37】【聖壁:熟練度21】【光属性魔術・初級:熟練度21】【MP増加:熟練度42】【闇属性特攻:熟練度0】


未取得

【聖棍】【棍術】【HP増加】


装備

【治癒師の杖:12/100】【治癒師の服03:56/100】【治癒師の靴:49/100】【治癒師の下着:71/100】



獲得トロフィー

【スリーピングデッド】【不眠不休】【眠り姫】【裏切りの一撃】【牢獄の虜囚】【究極の料理人】【脱出成功】【聖女の友】

【愛玩動物】new!



ということで姉貴がPTに入りました!ぱちぱち。

ガールズラブタグを付けなければいけなくなった気がすr……。

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