04 救世主
今回はのんびりっぽい
救世主。
このゲームの骨子であり、メインクエストに関係してくるキャラクター。
圧政に苦しみ、帝国の魔の手を掻い潜ってとある小村に身を隠す。
そして、その小村で恋に落ち、子を設ける事になる。
それは邪神の子。
俺たち冒険者の役割は、この救世主と邪神の子を探し出すこと。
様々な遺跡を辿り、幾つかの国を訪れ、ようやく見つけることができる。
見つけ次第、帝王の元へ献上せよ。
生死は問わない、彼らは世界に混沌を招きし悪である。
世界を救うため、冒険者よ立ち上がれ!
◇◆◇
っていう設定なんだよね。
「だから聖女なんて要素どこにも無かったんだけどな」
「そう言われましても……」
盗賊のアジトをなんとか脱出できた俺達は、森の中を盗賊の地図を頼りに歩いていた。
その道中、暇なのもあって初耳過ぎた聖女というキャラクターについて考えてみたが、そんなものは公式でアナウンスされていなかった。
俺がログインしてから発表された?いや、初日のログインなのに良い広告塔を使わない筈はない。
だとしたら隠しクエスト?うん、それが一番有力かな。だとするとあの盗賊のアジトはインスタンスダンジョンって事?いや、有り得ないか。そんな頻繁に国宝級のキッチンセットが出るのも可笑しい。もしそうだとしても、おそらくは低確率で引き当てるレアクエストという事なんだろうか?うーむ、わからん。
「ニノちゃん、聞いてますか?」
「へ? いや、スイマセン聞いてなかったッス」
「もぅ~、ニノちゃんってばまた男の人の様な言葉遣いをして。そういう話し方は騎士団の方か、あの盗賊団の方だけでしたよ?」
「いや、せめて平民は大概この口調だと理解してくださいよ」
聖女という話は聞いていたから、そうなんだって思うだけで済んだのだけど。よもやサード王国の王女様だったとは。ちなみにサードは三の事ではない。
それにしても王女様が聖女さまで盗賊に捕まっていたとはね……ん、聖女に王女……女?
お、俺、女子とお話してたああああああああああっ!!
ど、どうしよう、なんか食の聖女様とか残念過ぎる場面しか見てなかったから女だってこと忘れてた!
ど、ど、ど、どうしよう?何か話したほうがいいのかな?で、でで、でも何を話したらいいのかな?くそ、俺の女性経験なんて家族との会話程度だってのに、いきなりNPCとはいえ聖女兼王女様だと!?ハードル高過ぎだろうが!!
「ニノちゃん?」
「え、えーと、いい天気ですね!」
「へ?え、ええ、今日は快晴ね」
「「………………」」
会話終了!
駄目だ、女性だと意識したらさっきまでの様に話が出来ない。もう顔も緊張しきって逆に無表情になっている。ぐぅ、俺に成田程の対女性スキルがあれば……いや、アイツ並はいらないか。アイツ危ない連中と手を組んでるし……。この全寮制の学校にぶち込まれたのも檻扱いだからな。親父さん泣いてたし。
いか、無駄な事を考えようと思っても、隣にある恐ろしいまでの存在感を振りまく聖女様にどうしても目が行ってしまう。ああ、無礼だとは分かっていてもチラチラと顔を窺ってしまう。強面ボッチと揶揄された理由がこれだよ、わかってましたよちくせう!
「ぷっ」
「ほぇ?」
「あははっ、どうしたのニノちゃん?まるでこの間お見合いに来た何処かの貴族さんみたいな反応だよ。もしかして何処かで見てました?」
「え、い、いや見られる訳ないだろ!?俺がログインしたのはほんの数日前で、二日ほど眠っていたんだから!」
「ログイン……そう、あなたはやはりイモータルなのですね?」
いもーたる?
俺が中学生の頃にハマったギャルゲー、妹ぽーたぶるのことか?いやちゃうねん、春休みの暇つぶしに推理ノベルゲーと一緒に買っただけなんだ。けっして前々から興味があったとか、妹キャラの一人で緑髪の沙羅ちゃんがめっちゃ可愛いとかそういう事は、まぁあるんだけど。
「イモータルというのは、この世界とは違う世界から来た者達の事を言います。彼らは私達と違い、死ぬことが無いと言われているのです。例え死んでも、どこからかひょっこりと現れたり、違う容姿と職業を持って再開することも多いと聞きます」
あー、なるほど。確かにプレイヤーの事だね。死んでも宿を取っていれば宿屋に、そうじゃなければ神殿に死に戻りするだけだからね。
「我々王族は、かつてイモータルの方々に襲われ、また助けられた歴史を持ちます。だから、イモータルと判明したらなるべく近寄らない事が厳命されてきました。ですが、ニノちゃんがイモータルであろうと、私には関係ありません。私にとってニノちゃんは命の恩人であり、友人だと思っていますから」
「アリシアさん……」
「だから、ニノちゃん。普通に、さっきの様に接してください。じゃないと、急に距離が開いてしまった様で少し寂しいですから」
ああ、ああ。俺はバカだったなぁ。そうだよ、アリシアさんはアリシアさんだ。女性とか気にする以前に、アリシアさんなんだよな……。気にする必要なんて無かったんだ。まったく、これが聖女と言われる所以なのかね。
「ごめん、アリシアさん。俺、あんまり女の人と接したことが無いから、どう接したらいいかわかんなくて……でも、そうだよな。アリシアさんはアリシアさんだもんな」
「はい、そうですよ。そんじょそこらのお姫様と一緒にされては困ります」
「なんてったって食の聖女さまだしな?」
「はい!――あっ、あのキッチンセットでまたご飯作ってください!」
「いや、いいけど。でも今は食材が無いから最寄りの集落に着いてからね?」
実はもう数百メートルの位置に、村があると地図には書かれている。その村の名はエルダ村、小麦の生産といくつかの野菜を作っている農村らしい。どうやらここで盗賊は食料を確保していた節があるので、なるべく早めに立ち去ろう。クエストだとすると、追手が来るとは限らないんだけど、用心に越したことは無い筈だ。
「さて、もう少しで村につくよ。そしたら盗賊から奪った金で買い物だ!」
「私、豚のショウガ焼きが食べたいです!」
「それ以前に行きたいお店がある」
「お肉屋さんですか?」
「古着屋だよ。正直な話、アリシアさんのその恰好じゃ目立つし歩く身代金状態だから、少しでも溶け込むために町娘の恰好をしてもらおうかと」
「そうですか、でも大丈夫ですよ。このドレスは千変のドレスと言って、好きなデザインに変える事が出来るのです。しかも自浄機能に自動修復機能が付いた国宝級アイテムです」
なら、もっと早く言ってくれよ王女様よぉ!!とは言えず、恨めしい視線を送るのみにとどめる。その煌びやかなドレスのせいで何度盗賊に見つかった事か。が、本人は気付いていない様で俺の服装をチェックするとドレスが一瞬で変化した。
一瞬男装でもするのかと思ったが、アリシアさんの服を見て思い出した。ああ、俺女アバターだったよ。俺が女だったよ。動揺しきれねぇ。
「ほら、ニノちゃんとおそろいですね!」
「ま、まぁ今はそれでも良いけど……後でもいいから他の服に変えてくれな?」
「なになに?“治癒師の服03”?ニノちゃんは治癒師さんなの?」
「え、そうだけど。俺何度かホーリーショット使ってたよね?」
「でもでも、治癒師さんと言えばヒールとか回復系だけだと思ってました。それに何て言うか……治癒師さんっぽくない戦い方だったので」
「あぁ……」
仕方ないんだ。イラッとしたら足が出るんだ。手だと殴った時痛いけど、蹴りなら靴でカバーできるし。それに足技の方が威力は高いからね。その分正確性と連射性に劣るけど。
リアルの喧嘩技を出すのは仕方ない事なんだ、少しでも強くないとねーちゃんに食い物にされるからな。
そう言えば、俺の姉「三輪燈子」もAOにログインしてるって聞いたけど……なるべく合わない様にしたいな。前のネトゲじゃ素材パシリだったからなぁ。いくら高品質な装備を作れる生産職だっつっても、弟の扱いが酷いんじゃ評価はダダ下がりだ。
今更だが、ニノというキャラネームは俺の持ち名で、どのネトゲでも使ってきた名前だったりする。それは姉貴も同じで、お互いが出会って名前を知り合ったらその時点でバレルだろう。
いやだ、絶対爆笑される。今まで攻撃特化なマッチョマンを操って来た身にとって、この幼女アバターは爆笑ネタだ。なんとしても知られない様にせねば……。
「あ、村が見えてきましたよ。早速お肉屋さんですね!」
「ああ、服の問題が解決しちゃったから、お肉屋さんで良いか」
だべりながらも、特に魔物に遭遇する事も無く、俺達は無事最寄りの村に到着したのだった。
ニノ
性別:女
治癒師Lv17 HP880 MP1120
Status 1Lvup毎に+4point
Str:1
Agi:1
Vit:1
Int:55
Dex:15
Luk:1
Skill (Skill Point 20/34)※1Lv毎にSP+2 熟練度100時、次Lvに必要なSP2
【ヒール:熟練度36】【キュア:熟練度2】【聖撃:熟練度37】【聖壁:熟練度21】【光属性魔術・初級:熟練度21】【MP増加:熟練度42】【闇属性特攻:熟練度0】
未取得
【聖棍】【棍術】【HP増加】
獲得トロフィー
【スリーピングデッド】【不眠不休】【眠り姫】【裏切りの一撃】【牢獄の虜囚】【究極の料理人】【脱出成功】
【聖女の友】new!
姉、参上フラグ




