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Advent Online  作者: 枯淡
深夜の冒険編
3/34

03 兄弟の味

一話目の挿絵を変更しました。

身を低くして暗い通路を通っていく。どうやら時間的に遅いせいで、数人の見張りがいるだけのようだ。影に隠れながらコソコソと警備をやり過ごす。


とはいえ、盗賊のように隠密系専用スキルを持っている訳では無いので、たまに見つかってしまうこともあった。

しかし、そこは俺の光属性魔術・初級の【光学迷彩】でやり過ごした。

一回で総魔力の半分である500も持って行かれたけれど……。二人分だから余計に魔力を食ったのかな?


「そういえば、(わたくし)の装備は何処にあるのかしら?」

「え、アリシアさんって何か装備持っていたんですか?」

「はい、ティアラとアクセサリーと(スタッフ)を持っていたのですが、牢に入れられる時に没収されてしまって、何処かに持ち去ってしまったのです」


今、それを言いますかアリシアさん。無人の部屋からパクってきた地図アイテムのおかげで、道に迷わず進めてもうすぐ外だっていうのに……。


「それ、ないとダメ……ですよね?」

「はい、聖女の証として聖堂教会から下賜された伝説級の品なので……」


じゃぁ忘れんなよ、とか思いながらも忘れるほどにすごい味なのかと、盗賊親分の料理に戦慄した。じゅるり。


逃げてから再度探しに来ても、既に売り払われれいる可能性もある。そうなると敵性NPCの強化に繋がってしまう。やはり戻って探索に回るしかないか。


「わかりました、探しに行きましょう。ですがアリシアさん、さっきの透明化の魔術はMP……魔力量的にあと一回しか使えません。なるべく見つからない様に気を付けていきましょう」

「はい、お願いしますね」


 何だろう、物凄い笑顔に腹が立つ。イライラする。綺麗な顔なのにめっさ見下されている気がする。でも少しニュアンスが違うような……まぁいいや。今は装備を探すことだな。


 踵を返して、足音に気を付けながら歩を進める。一部屋毎に見て行ったのでは効率が悪いし見つかるリスクが高まる。恐らく時間的に俺達が逃げている事はバレている筈だ、そのくせ静か過ぎるところが怖いが。罠が張ってあると仮定して行動したほうが良いんだろうな。




 何度かの階層を超え、幾度も角に身を隠しながら通過し、地図で武器が置いて有りそうな部屋を探索してみたが、何処にも聖女セットとやらは無かった。道中で遭遇した敵はバ○スした後に気を失うまで蹴った。リンチだった。ちょっと哀れに思ったけど、何故か嬉しそうにしていたから問題ないだろう。

 しかし一体何処に……いや、まさかとは思うが親分の部屋に置いてあるのか?伝説級の装備って言ってたし、可能性はあるな。しかし俺的には例の料理が怖い。依存度抜群の料理とやらは出来れば見たくないし食べたくもない。


 一応道中のめぼしい部屋はチェックして行くが、最有力候補は決まったな。


「アリシアさん、これだけ探して見つからないという事は恐らく親分の処にあると見ます。ですが恐らく、そこには例の料理が待ち構えているでしょう……我慢できますか?」

「そんな……っ!あのご馳走を前に待てを強要するなんて……。いえ、でも必要なのよね。分かっています、分かっては居るのですが……っ!!」


 アリシアさんは味を思い出してしまったのか、口から溢れるヨダレを抑えきれず零れ落ちてしまう。それでも必死に我慢しようと、頭を抱えて小刻みに震えている。ここまでとは……恐ろしい料理の腕だ、しかし飽食の時代を生きている俺には通じないと知れ!


「アリシアさん、無理はしないでください。俺は、苦しむ貴女を見ていられない……」

「いえ、いいえ、大丈夫です。心配はいりませんわ、ニノちゃん。――それにしても、ニノちゃんてば一人称が“俺”なのね、似合わないわよ?女の子ならちゃんと私って……いえ、ニノちゃんなら名前を一人称にしてもイケるわね」

「えっと、そ、それはおいおい……」

「ふふっ、そうですわね。しっかり調教してさしあげますわ」

「お手柔らかに……お願いしまふ」


 どうやら脱出が済んだら、俺はアリシアさんに調教されるらしい。ちょっともドキドキなんてしていない。全然心が揺れてたりしないんだからな!




◆◇◆




「ここが親分の部屋、か」

「ここにわたくしの装備があるのでしょうか……?」

「ここまで探して無かったですからね、あると思いますよ」


 俺達は小声で話しながら、親分の部屋に入り口に作られた木製のドアを少しだけ開く。ふわりと鼻孔をくすぐる香ばしい肉の匂い、食欲を掻き立てるスープの芳醇な香り、人の理性など軽く不意飛ばしかねない香りの暴力が俺達を襲う。

 いけない、ここで欲望に負けて出て行っては気付かれてしまう。しかし、何なんだ……この食欲を直撃する香りは、負けてはいけない、負けては……!


「ゴクリ」

「落ち着けアリシアさん、脱出できたらいくらでも食べて良いから」


 実は探索ついでに金目の物や金その物をインベントリにしまい込んでいるのだ、総額は既に六十万を超えている。俺、街に帰ったらこれで装備を整えるんだ……。


「でも、でも、彼の料理はここでしか……っ」

「あの料理の味を再現するんでしょう?なら今は我慢です、耐えるべき時です。それも、楽しみの一つなのですから……っ!」

「――――そうですね、分かりました。全身全霊を持って我慢します!」

「よし、それじゃ行きますよ?」


 少しづつ、扉を開き俺達はその体を部屋に滑り込ませる。こういう時は小柄な体になって良かったと思うよ。


 さて、アリシアさんの装備と親分の位置は………………え?


挿絵(By みてみん)


「なぁ、リーグ……俺の料理はそんなに魅力が無かったのかな?」

「ちがうよ、ノーム兄貴!あのガキには解らなかっただけさ!ノーム兄貴のテクニックは最高だってのに……」

「でもな、リーグ。彼女は来なかった。手下の連中が必死になって探しても、返り討ちにされたんだぜ。それが、料理に対する礼儀かよ……畜生っ」

「兄貴、俺なら……いや、俺だけが兄貴の味を理解できるんだ!あんな女が何だってんだ、俺に食べさせてくれよ、刻み付けてくれよ、ノーム兄貴の味を……」

「リーグ……お前、そこまで……」

「ノーム兄貴とはガキの頃から一緒だった。例え血がつながって無くたって、俺はずっとノーム兄貴の料理を食ってきたんだ。もうノーム兄貴無しじゃ生きて行けないくらい……っ」

「ああ、そうだな。リーグ、俺にはお前がいたんだったな……」

「ノーム兄貴……」

「リーグ……」

「【フラッシュライトオオオオオオオオオオオオオオオッ!!】」

「「ぐあああああっ!?目が、目がああああああ!!」」


 くそう、またしても変なところでボーイズラブタグを乱用しやがって、いい加減ログアウトするぞゴルァ!?


「【ホーリーショット】【ホーリーショット】【ホーリーショット】【ホーリーショット】!!」

「やめなさいニノちゃんっ、もう彼らのHP(体力)はゼロよ!?」

「どいてアリシアさん、そいつら殺せない!」

「だから落ち着きなさいと言っているの!彼の者に癒しを、彼の者に安らぎを、混乱を収め、静かなる心を与えよ【夕凪の心】」

「ひゃうっ?――俺は、一体何を……ついイラッとして何かしでかしたような気が……」


目の前には気を失ってぶっ倒れている野郎が二人。折り重なっているシーンとか物凄く見たくない。


「あ、わたくしの装備ありました!」

「そ、そうですか……それはヨカッタデス」


 先ほどから料理の香りが俺を誘惑し続けている。どういうことだ、いくら何でもプログラムにここまでの依存性を持たせるとかダメな奴だろ。電子ドラッグとかいう奴じゃないの?これ。


 少しでも原因を探ろうと、備え付けのキッチンに近づいてみると、そこにはウインドウが表示されていた。


【究極の料理用キッチンセット】魔道具 国宝級

どんな料理を作っても、味・見た目・香り、全てにおいて究極になる。

無限調味料、万能変化包丁、万能変化鍋×三、万能変化フライパン。

不壊、一日に一回の調理にしか使えない。


 なんだろう、コレ。究極の料理用って言うんなら至高の料理用キッチンもあるのだろうか。物凄く気になる……。いや、それよりも連中の作っていた料理の秘密はこれだったのか。これは確かに調理法とか気にしなくて出来そうだな。……これ、持ち帰れるかな?


 メニューからインベントリを呼び出し、そのウインドウをキッチンに触れさせてみる。すると予想通り【収納しますか? Y/N】というウインドウが出たので、イエスを押すとインベントリに収納された。しかもアイテム一個分で済んでいる。流石国宝級、これからお世話になります。


 ふと声がしないので振り返ってみると、そこではアリシアさんが一心不乱に冷えた料理をパクついていた。いや、うん、仕方ないよね……。


 俺もそのディナーに参加したあと、頭領二人組が目覚める前に逃げる事に成功した。

 あれは凄かった、とても激しかった。冷えているのに、それを感じさせない旨みが……いや、これ以上はやめておこう。俺もアリシアさんの二の舞になってしまう。


 洞窟から抜け出し、辺りを見回すと緑一色の森の中。崖の下に出来た洞窟が連中のアジトだったらしい。水魔術が使えたら水攻めしていたな、これは。


「さて、脱出は一応成功したけど……アリシアさんは何処に送り届ければ良いのかな?」

「うぇ?おくってくださるのですか?」

「そりゃ、俺が助けたんだから責任は持たないとね」


 ニカッと笑うと、アリシアさんは何故か頬を染めながら俯いてしまった。何か機嫌を損ねる様な事をしたのだろうか?

 それでも、はっきりと透き通る声でこう言った。


「では、王都へ。ジャックゴルドまでお願いします」


ニノ

性別:女

Lv17 HP880 MP1120

Str:1

Agi:1

Vit:1

Int:55

Dex:15

Luk:1


Skill

【ヒール:熟練度36】【キュア:熟練度2】【ホーリーショット:熟練度37】【聖壁:熟練度21】【光属性魔術・初級:熟練度21】【MP増加:熟練度42】【闇属性特攻:熟練度0】


未取得

【聖棍】【棍術】【HP増加】


獲得トロフィー

【スリーピングデッド】【不眠不休】【眠り姫】【裏切りの一撃】【牢獄の虜囚】

【究極の料理人】【脱出成功】new!



キャラrデータの書式変更。少し見やすくなったかと。


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