15 神璽②
祝・ブックマーク100超え!
まだまだ神璽シリーズ続きます。
日常的な話なので、バトル的な要素は少ないですよ。
指摘を受けたので、タグに"ファンタジー"を加えました。
個人的見解により、残酷な描写ありを加えました。([09 勿忘草ノ嘆キ]にてNPCへの行為等)
リアルで残酷な描写はありません。ご安心ください。
かぽーん。
お風呂の浴槽に寄りかかりながら、「はふぅ」とため息をついて湯に身を預ける。髪はお風呂用のヘアゴムで纏めてあり、湯船に入らない様に気を付けているのだが、サイドから流れる髪が数本流れてしまって居る。まぁ、水で肌に張り付いているし問題は無いかと放置しておく。
この浴槽は下町にあるスーパー銭湯のもので、壺風呂と呼ばれる一人用のお風呂である。いつもなら、広い浴槽こそ正義と壺風呂には見向きもしないのだが、今の俺にとっては周囲からの視線をシャットアウトする便利な風呂なのである。
俺は今、幼女の姿で男湯に入っています。
だって姉貴が『元に戻った時に身内が現行犯で捕まるのはちょっと……』なんていうものだから、体の小ささに任せて男湯に送られたのだ。そして先生と、何故かホーンさんのリアルである赤井先輩も一緒に来ている。二人の視線が痛いが、下手をしたらハラキリショーと言われている様なので、問題は起こさないだろう。タオルも大きめの物を買って、体を巻けるように持ってきている。湯船ではタオルを取る、これが礼儀である。故に壺風呂に引きこもっているのだ。
いや、案外他人に裸を見られるって恥ずかしい物がある。めっさガン見されていたから。老若問わず見られて、ちょっと泣きかけた。
まったく、男時代とは真逆な視線に戸惑いしか感じないよ。ぶくぶく。
そこへ、大浴場から赤井先輩が歩み寄り、目を逸らしながら気まずそうに話しかけてきた。
「なぁ、大丈夫……なのか?その、違和感とか。男だったんだろう?」
「んぁ、赤井先輩。まぁ、一週間以上もこの体でしたから、今更違和感と言われても何も感じないですよ。男だったのは確かですけど」
「そうか……でも、その姿になったって事は、ずっとそのままなのか?」
「解りませんねー、俺もいつの間こんな姿に成っていたのか解らないし、何より両親が何か知っていそうなんで、まずは話を聞かないと始まらないですね」
「そうか……まぁ、なんだ。困ったことが有ったら言え、善処はする」
ほほぅ、さっきからチラチラと俺を盗み見ている分際で何を言うかと思えば……。まぁ、ゲームのおかげで、いくらか気心が知れた仲になっていると思うから、あまり言及はしないけどさ。
そうだ、赤井先輩にも横流しをしてやろう。
「赤井先輩、写真(エロ本)とAV、どっちが良いですか?」
「なっ!?」
「これから何かとお世話になりそうなんで、先行投資みたいなものッスよ」
「なっ、でも、さすがにそれは……」
「むぅ、じゃあ両方渡すんで、気に入った方を貰ってください。片方は返してくださいね?」
物凄い勢いで頭を縦に振る赤井先輩。しかも全身が真っ赤だし……のぼせたのか?
しかし、アルパカ面なんて言ってたけど、普通に優しそうな顔じゃないか。ザ・人畜無害って感じの顔。ちょっと期待した俺がバカみたいだ。あとで姉貴にクレームだな、勿論メールでだけど。
「おいおい、何を話しているんだ?先生も混ぜなさい」
「先生、あんまニノに近づかないでください。あと顔面にバッシュして言いですか?」
「いきなりバイオレンスだな、赤井。お前こそそんなに近づくなよ、お前だって男だろう」
「俺は良いんですよ、家族みたいなもんですから。それに先生みたいな変態からニノを護れと命令を受けているので」
「お互い様だと言っている」
二人とも俺のすぐ近くの壺風呂に入って来たのだが、正直邪魔でしかない。だって出ようにも、こいつらの視線が痛いのだ。気持ち悪くなって吐きそうになる。
やっぱり無理してでも女湯に行くべきだったかな?そんな後悔を地味にしつつも、約束の時間が近づいてきたので風呂を上がる。赤井先輩の協力による全方位ガードでバスタオルを巻き、脱衣所で着替えた。先生にフルーツ牛乳を買ってもらい、その足でロビーの休憩所に向かう。そこにはとっくに上がって畳の上で倒れている姉貴と、件の少女が居た。
交換留学生ジェニー・バートン。
彼女を見た瞬間、先生は膝を折り床に手を付いた。顔面は蒼白、体は小刻みに震えている。おい先生、お前どんだけ姉貴が怖いんだ。いや、むしろジェニー・バートンさんが怖いのか?
意外過ぎる展開に付いていけない俺を尻目に、赤井先輩は普通にジェニー・バートンさんと挨拶を交わす。大丈夫?介錯とか言ってぽんぽん刺されない?
「コンイチワ、私ジェニー・バートン!ジェニーって呼んでネ、ニノ!」
特徴的なセミロングの赤毛を振りまき、青色の瞳で俺を見下ろす。身長は170㎝はあるだろう、今の俺には巨人に見えるが、前の俺なら普通に少し見下ろす程度だった筈。そうなると無性につむじが見たくなる。なぜだろう、もしや俺はつむじフェチなのだろうか。
「ニノは初対面だったわよね、私のクラスメイトで交換留学生のジェニーよ。ジョニーって言うと悪戯されるから気を付けなさい。普段の言動はレズ寄りだけど、ちゃんとしたノーマルだからそこは安心しときなさいね」
「ハイ!可愛い娘が好きなダケデス!だからニノも大好きデス、今度コスプレしまショウ!」
「いやそれは遠慮する」
この姿ってだけで視線が痛いのに、コスプレして視線を集めるとかどんな地獄だよ……。って、そうなるとお盆の戦争には行けないのか……!?
「大丈夫デス、サークルチケット持ってマスから、私、ニノ、トーコの三人で行きまショウ!」
「いや、心を読むなよ」
「話の流れで推測したんじゃない?この娘、意外と天才なのよ。大学に飛び級出来るのに「青春は日本で過ごすのデス!」なんて言って家を飛び出したらしいの」
「交換留学生じゃないの?」
「交換留学生よ。ただ、急に来たから適当な生徒を見繕って向こうに親書付で送り付けたとも言うけど」
「何その遣隋使」
そんなんで大丈夫かよ、雪乃華学園。いや、大丈夫なんだろうな。俺の学年にも何人か留学生は居るし。
「でもジェニー、アンタこの間は妹と私との三人で行くって言ってたじゃない」
「アー、残念デスが、ジェシカは家庭の都合でコミケ来れないそうデス。三日目は参加できるみたいデスが、本命は二日目デスし」
ああ、この人も腐っているのか。さすがクールジャパン、外人すらも腐らせるとは。
「ジェシカって?」
「ジェニーの妹。一年に居るから、もしかしたら会ってるんじゃない?」
「いや、俺クラスメイトとすら会話してないから」
「そういや、そうだったわね……」
なんか知らんが頭を撫でられてしまった。ちょっと気持ちいい。
「さらさらね……」
「ん?」
「何でもないわ、さぁニノの服を買いに行きましょ」
そうして、俺達五人は下町の商店街でも、女性客に人気なエリアに到達した。見渡す限りの服、小物、服、靴、服、小物。いつもの道とは、色が違って見えるから不思議だ。まぁ、俺ら男子が行く道は基本的に黒か茶色だから仕方がない。花より団子なんだよ。
ちなみに、下町と呼んでいるのは俺ら学生だけで、街の人達は普通に商店街と呼んでいる。俺達の学校、雪乃華学園が山の上に建っているせいで、麓の商店街を含めた町の事を下町と呼び、下町に行く事を下山と呼んでいる、らしい。ソースは姉。
「さて、取り敢えず下着ね」
「いきなりハードル高ぇなおい」
「大丈夫よ、例え男に戻った後で女装趣味に目覚めても強請る程度で許してあげるから」
「それは無いから安心しろ」
「そう?残念ね」
こいつ今の本気で言いやがったな。ホント姉貴は俺をどうしたいのさ……。
「これなんか良いんじゃない?」
手渡された布は、パステルピンクの布地だった。いや、たしかこれってスキャンティ……。
「コレなんかも似合いそうデース!」
同じく手渡されたのは、スケスケのベビードール。ちょっと待て、この体でこれ着るの?犯罪だよ?
「これなんか、先生は似合うと思うぞ?」
「先生、俺に何期待してるんだ、ていうか出てけよ!そんな、ひ、ひも、紐パンなんて付ける訳ないだろ!?」
「そうか?ならこれはどうだ!」
「赤井先輩!助けてぇー!?」
紐パンを片手に持つ先生に詰め寄られ、俺はとっさに赤井先輩に助けを求めるが彼は店の前で突っ立っているだけだった。どうやら女子結界に阻まれて入れない様子だ。そもそも、何故この教師は入れるのか、その度胸は何処から来るのか、ぜひとも教えてほしい。
姉貴たちを見て見ると、必死で可愛い下着を探し回っているようだ。どうやら店員も共犯らしく、こちらが見えていない様子。さてはこの隙を狙って来たな、このクソ教師!
「あー、君。ちょっと話を聞かせて貰えるかなー?」
「はい?」
振り返った先生の背後には、青い制服に身を包んだお兄さんが二人、前の俺にも負けないくらいの強面の方々が真面目な顔で先生の肩を掴んでいた。めりめり言ってる。
「いだだだだだだだ!?」
「店内で変態行為は困るんですよー、警察読んで調書取って貰わないといけないんですよー、その間警備員が最低でも一人消えるんですよー、大変なんですよー?」
間延びした話し方をしているが、顔は物凄い真顔だ。怖い。何この人凄い怖い。
「ち、違うんです、この子はうちの生徒で」
「余計駄目じゃないですかー、先生が生徒にセクハラしちゃダメじゃないですかー」
「ちがっ、この子は男で」
「そーなんですかー、だからと言って猥褻行為は駄目ですよねー?」
「違うんだ、僕は引率として同行していて」
「紐パンを幼女に勧めるんですかー、とんだ変態さんですねー?」
ギリギリと握力を更に込め、先生の顔に脂汗が浮き出る。呼吸も荒くなり、顔色も悪いようだ。そろそろ止めないとマズいかも知れない。
「あ、あの、そのへんで許してやって下さい」
「んー、いいの?」
「はい、これをネタに強請るんで」
「それじゃ仕方ないねー。よかったねー、良い生徒さんでー」
「は、はひ」
もう息も絶え絶えの先生を介抱し、警備員のお兄さんは、俺に防犯ブザーを渡して歩いていった。その場には防犯ブザーを大事そうに両手で持ち立ちすくむ幼女と、脂汗を流しながら顔面蒼白で蹲る中年男性がいた。戻って来た姉貴にギルティを喰らったのは、仕方の無い事である。
「すまなかった」
下着店を出た後、色々と店を回って日用品を含めて買い揃えて行き、そろそろ夕飯時という時間になって赤井先輩が謝罪をしてきた。何かしたのだろうか、さっきの先生の様にハラキリショーに成ってしまわなければいいのに。
なおハラキリショーとは、案の定切腹では無く、赤井先輩に羽交い絞めにされた先生に向けて、木刀で腹を牙○するという、斬新な腹パンだった。まだ牙○二式、牙○三式、牙○零式などの必殺技が目白押しらしい。
先生曰く、『鍛えてなければ逝っていた』だそうだ。何気に防御固いな。
※良い子は真似しないでね!
俺が首を傾げていると、顔を逸らしながら続ける。
「さっきは、助けてやれなくて……。ああいう店には入った事が無いから、耐性が無い」
「ああ、下着の時のか……。そーだよな、善処するって言ったのになー?」
「本当にすまない」
「いいよ、結果的には制裁されたし。先生もこれで懲りただろう」
「そう、だな」
「今から行くファミレスでパフェ奢ってくれたら許します」
「ぱふぇ?」
「そーです。男の姿じゃ食べに来られなかったけど、今なら見た目的に問題ないだろうし」
「そうか、解った」
俺は普通に甘い物が好きだ。だが、店で買うにもイメージが違いすぎて買い辛い。そしてファミレス名物のパフェなんて頼んだ日には『何あのヤクザかわいー』とか言われかねないのだ。これ以上ネタ提供をするわけにもいかない俺は、自宅でクッキーやケーキを作りはするが、未だにパフェは作ったことが無いのだ。そもそも食べた記憶が子供時代しか無く、正確に思い描けないという難点が存在する。
そうだ、今度AOで食材を集めて、アリシアさんに洋菓子をご馳走しよう。ふむ、となるとケーキ類のレシピを電子書籍で仕入れておくか。たしかAOは電子書籍サービスと提携していたはずだ。プレイヤー以外は閲覧出来ないが、俺が見て作る分には問題あるまい。ふふふ、腕が鳴るぜ。
読了感謝です。
最近気づいたんです、私はモンスターとの戦闘描写をあまり書いていない事に。
雑魚Mobのデザインを考えるのが面倒で、つい地球上生物を模した2Pカラーとかになってしまいがち。
と言う訳で、手持ちのギャザを見直して復習しています。もしギャザプレイヤーがいたら、懐かしのスリヴァーっぽいのとか出てくるかもしれませんよ。
あと先生はちょっと暴走気味な気がする。