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僕が彼女を殺すまで  作者: 水海
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僕が彼女を殺すまで

初投稿です、評価よろしくお願いします。

 年も明け、正月休みも終わりの頃、僕と彼女は大学の屋上にいた。

 冬の澄んだ空気のせいか星がよく見える、僕は一瞬だけ空を見上げ呼吸を整えた。

 彼女は僕の顔と空を交互に見ている、たまに目が合うがそれも一瞬だ、すぐに首を左右に振って虚空を見ている。

 それもそうだ、彼女は僕に馬乗りにされて、首を絞められているからだ。

 今、僕は彼女を殺そうとしている。

 彼女の細い首に力が少しずつ加わっていく、それに合わせるかのように彼女は苦しそうに呻き声を上げた。

 まだだ、僕はそう思い彼女の首にかけた手に更に力を加える。

 彼女を殺さなければいけない。

 いや、開放すると言った方が正しいのかもしれない、嫌に冷静な自分とは対象的に彼女は激しく抵抗する。

 掠れた声で「や、めて……」と言い続ける、だけど僕はやめない。

 確実に彼女を殺す。それが僕と彼女のハッピーエンドだ。

 =7日前=

 クリスマスも終わり、街は少しずつ正月の雰囲気になっていた。

そんな中、僕は姉貴に電話をした。

 普段は中々忙しいらしく電話にはほとんどでない姉貴だが、僕が本当に困っている時は不思議と連絡が付く。

 2コールもしないうちに通話の表示が出た。

「どうした?彼女にでも振られて落ち込んでるのか?」

 電話に出た姉貴の声は眠そうだった。

仕事で徹夜でもしたのだろうか。

「半分当たりで半分正解」

「そっかお大事に、寝るから切るぞ」プツッ・・・。

 切られた、リダイヤル。

「睡眠時にすみません、少しでいいので愚弟の話を聞いてくれませんか?」

「最初からそう言え、めんどくさいなぁ~」

 舌打ちの後タバコに火を付ける音が聞こえた。

「それで、本当に彼女にでも振られたのか?」

 電話口から煙を吹きだす音が聞こえる。

「いやいやいや、振られてはいないから・・・まだ」

「まだ?振られる予定でもあるのか?」

「振られるというか、殺されるかもしれないんだ」

「そっか、お大事に」

「ちょちょっとまって!切らないでくださいマジなんです」

「あ~ほんとめんどくせぇ~、なんで電話なんか取っちゃったんだろう」

 本気でめんどくさそうだ、ちなみにめんどくさいは姉貴の口癖だ。

 姉のいない人にはわからないだろうが美人で優しいお姉さんは妄想だ。

「あれ、今何か心の声が聞こえてきたぞ」

「気のせいですお姉様。取りあえず会話を戻しますね」

「はいはい、殺されるってどうゆうことだ?」

「口じゃ説明しにくいから一度彼女に会ってもらいたいんだ」

「会う…。マジなんだね」

 姉貴の声のトーンが下がる。

「できるだけ早くがいい、出来れば今日会って欲しい」

「チッ、せっかくの休みが。わかった、んじゃいつも行ってるバーで8時にね」プツリ。

 相変わらず躊躇なく電話を切る。

 しかし、会う約束を取り付けた瞬間少しホットしたので舌打ちは聞こえなかったことにしよう。

 姉貴との電話の後に彼女に待ち合わせ場所と時間をメールする、返信はすぐに来た。

 彼女との出会いは一年前、同じサークルでよく一緒に活動してしているうちに好きになり僕から告白した。

 彼女も同じ気持ちだったらしく、めでたく付き合うことになった。

 彼女は可愛い系で、少し天然な部分があるが、時たま僕が知らないような事も知っていてそのギャップ差にもよく驚いた。

 彼女との交際は順調だった。

 奇妙に感じたのは去年の夏頃だった、ふと彼女が彼女じゃなくなるような感覚を感じ始めた。

 その奇妙な感覚はどんどん濃くなっていった。

 些細な事で喧嘩した時、付き合い初めの頃はただただ泣く彼女を宥めていたのに、最近ではとてつもなくヒステリックになった。

 喧嘩しようものならあちらこちらから物が飛んできた。

 流石に刃物が飛んで来た時には命の危機を感じた。

 しかし、次の日には何事も無かったようにいつもの彼女に戻っていた、そして昨夜の事をほとんど覚えてないと言う。

 女性のヒステリックはよくある事、と何かの本で読んだが、あまりにも彼女は豹変しすぎる。

 まるで別の人格になったような。

 僕は一度病院にでも行こうと彼女に言ったが、どうしても病院には行きたくないと拒まれた。

なので、精神科医をしてて、そして少し不思議な力を持っている姉貴に見てもらおうと思い、今日電話をしたのだ。

 彼女は姉貴の事をほとんど知らないので都合がいい。

 8時少し前に彼女と合流し、姉貴の待っているバーに向かう、彼女は少し緊張気味だがいつもの彼女だ。

 待ち合わせのバーに着き扉を開ける。

【いらっしゃいませ】と長身のバーテンが僕らを迎える。

「お久しぶりです、姉貴は来てますか?」僕は尋ねる。

 このバーには何度か来た事があるので姉弟共々バーテンとは顔見知りだ。

【いつもの席よ】とグラスを拭きながら首を傾ける

 店の一番奥のカウンターに姉貴はいた。

 彼女は僕の後ろからそーっと覗き込む。

「こっちこっち~」と姉貴がブンブン手を振っている。

 僕と彼女は取り敢えず飲み物を注文して、姉貴のいる席に向かった。

「初めまして、コイツの姉です、よろしく~」と彼女に挨拶している

 凝縮している彼女は

「初めまして、コイツの彼女です」とつられて僕をコイツ呼ばわりした。かわいい。

 姉貴は爆笑してる………。

「ドリンクもきたし、まぁ取り敢えず乾杯しましょう」と姉貴が言った。

 何の乾杯か知らないがとりあえあず姉貴に付き合って乾杯した。

 彼女はお酒が飲めないのでオレンジジュースを飲んでいる、姉貴はなぜかマティーニしか飲まない。

 僕はビールを飲んでいた。

 酒の肴は僕の幼い頃の失敗談ばっかりで、彼女は終始苦笑いをしていた。

 2時間ほど経ち、僕は彼女に明日も早いしそろそろ帰ろうかと聞いた。

 彼女は軽く、うんと答えて帰り支度を始めた。

「ここは私が払っとくからまたね~」と姉貴が見送る。

「今日はありがとうございました」と彼女が姉貴に丁寧に挨拶をする。

 僕は彼女を駅まで送り改札で別れた、そしてすぐさまさっきのバーに戻った。

「お帰り」と姉貴が満面の笑みで迎える。

 ヤバイと思った、姉貴がこの顔をする時は大概良くない事だ…。

「どうだった?」と僕は姉に問い詰める。

「まぁ、そう焦るな」と僕を宥める。

「あれなぁ、憑いてるよ」姉貴が呟くように言った。

「多重人格とか、病気じゃないのか?」

「実際に見てわかった。病気じゃないよ。あの子と付き合ってたら本当に殺されるよ」姉貴が淡々と語る。

「憑いてるのは生霊だね、しかも自分自身の生霊。凄く珍しいタイプだなぁ。

普通生霊ってのは第三者がなって、憑いた人間に不幸をもたらすんだけど、

あの子の場合自分自身で作り上げてしまってるから半分守護霊化してる。

生霊が守護してるって凄く矛盾した存在になってるんだよねぇ~。

しかも時々人格交代?この場合は身体を乗っ取られてるって言えばいいのかな?

害をもたらす存在が害から守ってるって不思議だね~。

もしも次大喧嘩なんてしたら確実に殺されるんじゃない」

「ちょっと待って、よくわからないんだけど、それは祓えるのか?」

「生霊ってのは強い念だからね、簡単には祓えないよ。特に彼女のようなタイプは特殊すぎて・・・殺すしかないんじゃない?」

 さらっと殺すと言った姉貴の言葉を聞いた僕は、気を失いそうになった。

 それから僕は考えた、どうすれば彼女と生霊を離せるかと、姉貴にお祓いを頼んだけど、下手に手出ししたら彼女が戻って来ない可能性もあるから危険だと言われた。

 挙句には別れて別の女探せとも言われた、別れ話なんかしたら確実に殺されるだろうが。

 それから3日経ったが、解決策は見つからないままだった。

 そして2日後に姉貴から電話が来た。

「おい、愚弟。いきてるかぁ~?」第一声がこれだ。

「忙しいので切っていいですか?」

「あん?折角美人で優しいお姉さまが解決策考えてあげたのにそんな態度とるわけ?あ~めんどくさ」プツッ

 リダイヤル

「先ほどの無礼お詫びいたします、心優しきお姉さまの解決策を聞かせて頂けませんか?」

「最初からそう言えや、愚弟め」

 そして僕は姉貴から解決策とやらを聞いた。

「まぁ、そう言う事で頑張ってね~」プツッ

 他に方法も無いようなので僕は姉貴の計画に乗った・・・決行は明後日。

 2日後僕らは大学の屋上にいた。

 彼女には星を見れるいいポイントがあるんだと言って連れてきた。

 彼女は僕が持ってきた毛布に仰向けになり寝転がっている

「星が綺麗だよ」と嬉しそうにはしゃいでる。

「君も横になりなよ」と彼女が言う。

 僕は彼女の横に寝そべり空を見上げた、本当に綺麗だ。

「私ね、自分自身がとても嫌いだったの。どうして嫌いになったのかはわからない、物心ついた時からそうだったの。

だから毎日毎日神様にお願いしてね、私が私じゃなくなりますようにって。

そうやって大きくなってね、君と出会って初めて自分の事を好きになれたの、ありがとう」

 彼女の言葉に耳を傾ける

「ずっと一緒にいようね、本当に君に会えてよかった」

「僕も君に会えて良かった、だから君を・・・殺す」

 その時彼女の目つきが急に変わった、鋭くまるで槍みたいな視線で僕を見る、そして彼女は腰に手を当てた、そこから出たのは小さな小型ナイフだった。

 すかさず僕は彼女の手を蹴り上げ、ナイフを叩き落とした。

 そして僕は彼女に馬乗りになり首を絞めた、彼女の呼吸を止めないように、なるべく頸動脈を抑えた

 1秒がとても長く感じ、気付いたら僕は泣きながら彼女の首を絞めてた 、もう少し、もう少しと呟きながら彼女の目をじっと見つめる。

 何秒たったかわからない、彼女がそっと目を閉じた、そして今まで暴れてた手足はだらんと力なく横たわっていた。

 終わった、これで良かったのだろうか?

 姉貴の出した解決策とはショック療法みたいなものだった、もう一人の彼女が出た時に、彼女を気絶させ死んだと錯覚させる。

 これは賭けだった。下手したら本当に死んじゃうかもしれなかったからだ。

 けど、僕には確信があった、彼女は生きたがってたし、おそらく自分でも気付いてたんじゃないかと思う、もう一人の自分がいると。

だからこそ、この危険な計画を実行した、果たしてもう一人の彼女は本当に消えたのだろうか・・・。

 彼女も時期に目を覚ますだろう、そしたら抱きしめてあげよう。

 そして、どうか彼女に刺されませんようにと星に願いをかけた。

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