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一ヶ月

アクセスがあれば読者がいると考えてよいのでしょうか……


 一ヶ月が過ぎた。


 お昼を食べ終え、太陽が真上を通過してから少したった頃、孤児院の庭でシータは剣を振る。危ないので炎の力は出さないが型の確認を念入りに行い、いつ実戦の必要が来ても良いように実力を落とさないようにする。

 そうして一通りの型を終え、剣をしまい額の汗を拭う。

「平和ね」

 シータはぼそりと漏らす。


 マザーを戦わせないと強く誓い、一人で戦おうとプライムとの会話からシータは思った。


 それから一ヶ月。


 ありがたいことに一ヶ月もの間敵の襲来はなく、シータは孤児院での平穏な生活に慣れ親しんでいった。

 マザーにプライム、子供たちとも仲良くやっている。

「シータお姉ちゃん見てー」

 建物の中に戻るなりテグラルが絵を見せに来た。

 このテグラルという少年とシータは特に仲良くなっている。というのもテグラルがいつも懐いてくるからだ。

 テグラルの絵では二人の兵士が対面していた。片方は真っ黒な鎧を着たいかにも悪そうな男、もう一方は真っ白な鎧を着て青い剣を持った少女だった。

 この絵が8歳として上手か下手かはシータには判断がつかなかったが少し疑問に思う点があった。少女をシータだとすると色が合わないのだ。剣が青いのはテグラルがシータの力を見ていないので空想で描いたからと理由づけ出来るが問題は髪の色だ。

 シータの髪はオレンジの長髪なのに絵の少女は青い長髪だった。

「これはお姉ちゃん?」

 シータはテグラルに尋ねる。孤児院について三日も経たないうちに子供たちと話すときのシータの一人称はお姉ちゃんになっている。

「うん。」

 テグラルは元気に返事をする。オレンジのペンはなかったのかと突っ込みたいところだが描ききったという充足感漂うテグラルにそんなことをシータは言えない。

「上手、上手。」

 シータの言葉にやったーとテグラルは駆けていく。そこではマザーも絵を描いていた。

「どう、マザー、僕の絵。シータお姉ちゃんに誉められたよ。」

 見せつけられたテグラルの絵を見てマザーはむっとした表情を浮かべる。こういうときは本当に子供だ。

「シータさん、僕の絵はどうですか。」

 マザーもシータに絵を見せる。

プッ

 シータは笑うしかなかった。

 その絵は15歳にしては、いや、何歳が描いたにしても下手としか言いようがない。細長~い棒人間がごとき体の上にオレンジの線がぐしゃぐしゃと引かれている。

「笑うことないじゃないですか。せっかくシータさんを描いたのに。」

「ごめん、ごめん……いややっぱ無理。アハハッ」

 シータは笑いを抑えられない。

 笑いに連れられてどんな絵、どんな絵、と家事の途中のプライムや他の子供たちも集まる。そしてマザーの絵を見て笑い出す。

 みんなの笑いにマザーは不満顔になる。本当に15歳に見えない無邪気な顔。この顔が戦いで変わるのがプライムは怖いのだろう。平和な孤児院を、平穏なマザーをプライムは望んでいる。


「しかしマザーは本当に何も出来ないのね。」

能力持カイエナティックちだからです。」

 この一ヶ月でシータは分かったことがある。

 それはマザーが全てのことを並みの15歳のレベルで出来ないということだ。

 芸術的なものなら仕方ないにしても身体能力まで著しく低い。テグラルとのかけっこで引き分けたときにはシータは我が眼を疑った。

 そしてマザーは出来ないときに必ず、能力持ちだから、と言い訳をする。

 普通は逆だ。

 能力持ちだから体内にエネルギーが満ち溢れ、高い身体能力を得る。シータもその一人だ。

 シータはマザーのエネルギーが身体以外の箇所、例えば五感に強く作用しているのだろうと考えたことがある。

 それならマザーが高い感知能力を持つことにも理由がつけられるからだ。

 しかしCランク五人を倒した能力が身体能力に全く影響しないというのもおかしい。

 結局、マザーの力がなんなのかは分からない。本人が知ってるのかはいつもうやむやにされるのでシータはもう尋ねなくなっていた。

「シータお姉ちゃんは強いんだからもっと強そうに描いてよ。」

 テグラルがマザーに文句をつける。たしかに棒人間ではひょろひょろすぎる。

「そうよ、テグラルの絵みたいに強く描いてよ。」

 シータも軽口をたたく。明るい雰囲気になると思ったが、テグラルがぼそりとつぶやいた。

「この絵のお姉ちゃんは強くないよ。」

 テグラルの表情が暗くなる。シータはテグラルの急激な変化に驚く。なにかまずいことでも言ったのだろうか。

「この絵のお姉ちゃんは負けちゃうんだ。」

 テグラルが大声で叫ぶ。両目には涙が浮かんでいた。

 シータには何がなんだか分からない。だがマザーとプライムはテグラルを抱きしめ、よしよしをする。


 しかしマザーは突然手をとめ、真剣な顔になった。

まさか、シータもプライムも反応する。

 そしてマザーから聞きたくない台詞が発せられた。

「プライム、敵が来ます。皆でいつもの場所に隠れて下さい。」


やはり。


 プライムは子供たちと奥へ行く。その直前にプライムからシータへ視線が送られる。

(分かってる。私一人で倒す。)

 シータも視線でそう返事をした。

一読の証にポイントを貰えれば幸いです。

(筆者不安です)

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