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戦闘

 「プライム、敵が来ます。子供たちといつもの場所に隠れて下さい」

部屋をでて、リビングを通りながらマザーは指示を出す。

「えっ、あっ、分かった。みんなー」

プライムは多少驚きながらも子供たちを集め、入れ替わりで更に奥の部屋へといく。何回かこういうときがあるからか全員スムーズだ。

(外へ出れば近くに敵がいるのだろうか)

 シータにはなぜマザーが敵を感知できたのかわからない。だが、プライムの行動の速さからしてマザーの感知はいつも当たっているのだろう。

 警戒しながら玄関を出て辺りを見渡すが人影は見えない。

「マザー、どこに敵はいるの」

 同じく外に出ているマザーにシータは尋ねる。

 だいたい、マザーは隠れなくてよいのだろうか。

「まだそこまで近くではありません。ただ私の感知領域に入っている者がいます。」

 感知領域?このマザーはただのマザーではないのか?

「それはどのくらいの距離なの?」

「ここから約半径1キロメートルです」

 シータは耳を疑った。1キロの感知などどうやったらできるというのだ。

「あなた一体何者?」

 シータはマザーを見つめる。

「少し変わった能力持カイエナティックち、とだけお答えします」

 そういって見つめ返したマザーの細い目はいろいろごまかしているように思えた。

「隠れないってことはあなたは戦うのね」

 孤児院の周りは何もない平地なのにまだ敵は見えない。シータはマザーへの質問を続ける。

「はい、遠距離からのサポートですが足手まといにはならないと思いますよ」

 発言こそ弱気な感じを出しているがマザーからは妙な自信が滲んでいる。

(ひょっとしたらこのマザーは自分より強いのではないか)

 シータの中にそんな考えが浮かぶ。

 それならプライムの発言はどうなるのだろうか。弱い護衛がくることに不満を抱いたのはマザーの負担が増えることを懸念していたのだとしたら?

「来ます」

 マザーの発言にシータは顔をあげる。遠方に確かに何者かが見える。

 そういえば、

「マザーさん、相手はローレンツの者なんですか?ラグランジェの者ではないんですか?」

 先ほどから相手、相手といっているがラグランジェの者であるかもしれないのでは、とシータは今さらながら思う。


 南のラグランジェ王国と北のローレンツ連邦国、2大大国の国境線では永遠に戦争が続いている。その戦場、つまり国境線が孤児院の近くにあるのだ。


「それはまだ分かりません。ただシータさん、相手がローレンツの者であっても攻撃は相手が明確な敵意を持っていると判断してからにして下さい。できれば話し合いで帰ってもらいたいので」

「わかりました」

 いかにもマザーらしい発言だ。いちラグランジェの兵として相手がローレンツの兵なら攻撃したいところだが、あくまで今回は護衛。

 マザーらに危害が加わらないことが重要だろう。

 もっともローレンツの兵が話し合いで帰るとは思えないが。

「単騎ですか」

「黒色の鎧、ローレンツの兵ね」

 相手との距離は100メートルほどだろうか。シータの纏う白色の鎧とは対照的な姿。

 シータは相手を完全な敵と見なし、腰につけた剣に手をかける。

「あくまで話が先です」

 マザーが前で手を伸ばし制御する。

「わかってるわよ。ただいつでもいけるよう準備してるだけ」

 ローレンツの兵との話し合いなど成立するわけがない。大方、戦線を離脱した兵が食料を奪いにくるのだろう。

 相手が近づいてくる。金棒をもった屈強そうな男だがどうも左肩を軽く負傷しているようだ。

「なんだ、女がわざわざ出迎えてくれたと思ったら男じゃねえか」

 汚ならしい声で相手はしゃべる。

「なにかご用ですか」

 マザーはあくまで普通に話をする。

「いやなに、ちょっと怪我しちまってよう。ひでえもんだぜ、ローレンツ軍は。怪我ぐらいで戻ったら死んでもいいから敵兵を殺してこいっていわれちまうんだ」

 男は同情でも誘っているつもりなのだろうか。それにしては笑みが不適だ。

「それとうちにくることはどういう関係があるのでしょうか」

 マザーの言葉に男の顔が歪む。

「なーに、ちょっと食べ物を寄越してくれねえかなあ。」

 やはり、そういう要望か。ローレンツは兵を追い込んで戦わせるからこういう輩が出てくるのも当然だ。

「ふーむ。困りました。こちらも食料は余ってないんですよ」

「だからくださいじゃなくて寄越せっていってるじゃねえか」

 男は今にも突っ込んできそうだ。しかしマザーも話し合いをする気にしては相手を逆撫でしている気がシータにはした。

「では条件があります」

「条件?」

 男は怪訝な顔をする。いや、シータもマザーが何をいう気かわからない。

「今後一切戦争に参加しないで下さい。ローレンツで戦争に反対する運動をして下さい。」

マザーは一気に言い切る。

 シータにはなぜそれが条件なのかわからない。当然男もそんな条件を呑むはずもない。

「わけがわかんねぇが、」

 男はそういって足に力を込める。そして、

「どっちが意見いえる立場かな」

 一気に突っ込んできた。

 それに合わせてシータも突っ込む。マザーも止めようとはしない。


 戦闘が開始する。


 シータは剣、男は金棒、両者の武器が振られるとき

「キャピタルエフ発動!」

 そうしてシータの剣は炎をまとい、

「ニュートン発動!」

 男の金棒は巨大化した。

 激しい衝突。

 そして吹き飛ばされたのはシータだった。

「なんだ、その女も能力持カイエナティックちかよ。」

 男はもともとの肩の傷が少し痛んだようではあったが余裕そうである。

「くっ、あんたもね」

 シータも力比べに負けて吹き飛ばされたもののまだまだやれるといった感じだ。

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