表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

プロローグ

「マザー……いるか……」

 元々の鎧の色が白であることがわからなくなるほどに血まみれとなった男は弱々しく、しかしはっきりと通る声でマザーを呼ぶ。

「はい、どうかなさいまし……まぁ、大丈夫ですか!?」

 玄関の扉をあけた老齢のマザーは驚愕する。こんな男が玄関にいたら誰でもそうなるだろう。それだけではない。さらにマザーを驚かせたのは男がぐったりとした少年を抱えていることだ。

「す、すぐに、手当てをしないと……それにその子は……?」

 おろおろするマザーに男は言葉をつなぐ。

「俺の体はどうでもいい……もうだめに決まっているからな……」

 そんなっと言ったマザーに男は少年を預ける。

「この子は一体……」

「戦場で倒れていたんだ……」

 こんな少年が戦場に?一体国は何を考えているのか。それともこの子が特別なのだろうか。

「この子も……戦場じゃなくてここなら……違う生活ができるはず………だ」

 マザーは預けられた少年を見る。

 外傷は見当たらないがなぜか恐ろしく弱っている。か細く、小さな体。歳は7、8歳ほどだろうか。とても戦えるようには見えない。

「がはっっ」

 男が血を吐く。もう長くは持ちそうにない。むしろここまでを気力で持ちこたえていた感じだ。

「教えて下さい!この子の名を!あなたの名を!」

 マザーは必死に尋ねる。この子に残せる唯一の情報を。

「……この子の名前は知らない……」

 男は残念そうに、そして膝を突きながらいう。もはや体力は限界だった。

「あなたの名前は……?」

 この男は命を懸けてこの子を預けに来た。マザーはせめてその名をこの子に伝えたかった。しかし、

「……俺の名前は……」

 ドサリッ

そこまでしか言えずに、男は息をひきとった。

夏中に(一章が)完結する予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ