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Study:8-A「ハチャメチャな中二病」

 ここは神勉学園のとある一室。フカフカのソファに、材質のよさげな長机。ただ、そこには不釣り合いな感じでパイプ椅子が多めに用意してある。黒板――ではなく、ホワイトボードが壁に取り付けられており、黒ペンが二、三本と赤と青のマーカーが置いてある。

 すると、ガララと部屋の扉が開かれ数名の生徒が中に入ってきた。


「ふぅ、まだ新学期始まってそんなに経ってないってのに結構あったかくなりましたよね!」


 一人の男子生徒がそう呟き、額に滲む脂汗を腕で拭う。


「でも、この部屋は結構涼しいですよね。ここから見える外の景色もいいですし」


 そう言う一人の女子生徒。また、もう一人の女子生徒がパイプ椅子にカバンを置いてから窓際へと歩いていき、外を眺めながら一言。


「確かに、私も結構ここからの景色は好きかも……。先輩はどう思います?」


 後から部屋に入ってくる少し身長高めの男子生徒にその女子生徒が訊く。尋ねられた男子生徒は優しげな笑みを浮かべてこう返した。


「うん、僕もこの場所は結構好きな方かな……。それに、皆と一緒に活動しているのも楽しいし」


 そう言って爽やかに少々長めの前髪をかきあげる先輩男子生徒に後輩の女子生徒が黄色い歓声をあげる。その様子が気に食わないのか、一部の男子生徒はふくれっ面になる。


「それで、委員長は?」


「ああ、彼なら後から来るってさ」


 一人メンバーが足りないことに気づいた一人の生徒が疑問の声を呟き、その声に先輩男子生徒が答える。


「あっ、そうだ。委員長がこれ皆で食べてって!」


 女子生徒が学校の鞄から長方形の包み紙に包まれた箱を取り出す。


「ん? それは?」


「よく、分からないんですけど……どうやらお茶菓子……みたいですね」


 包み紙をなるべく綺麗に剥がして中身を確認した生徒が首を傾げながら言う。

 すると、そこへ少々テンションがハイな生徒が入室してきた。


「やぁやぁやぁ諸君! 元気にしているかね?」


「い、委員長……。どうしたんですか、放課後のこの疲れた時間によくそんなに元気でいられますね。こっちはもう、勉強で大変なんですよ?」


 嘆息混じりにそう愚痴る女子生徒に“委員長”と呼ばれる男子生徒が人差し指を立てて一言。


「チッチッチッ、ダメだぞ我が妹よ! そんな事ではこの先このソサエティでは生きてゆけないぞ? 吾輩を見てみよ! どうだ、この卓越した雰囲気! フフフ、我ながら自分が恐ろしい……」


「あの、すいません。私、妹じゃありませんけど?」


「フッ、気にするな。お前は記憶を無くしているのだ。吾輩が貴様の実の兄であることを忘れているのも無理ない」


「いや、本当に赤の他人ですから!」


 手を前に突き出し、もう片方の手を額に添えてポーズをキメる委員長に女子生徒が呆れ顔でキッパリとそう伝える。すると、別の女子生徒が委員長の会話を聞いて声を張り上げる。


「ええっ、伊里香ちゃんって神憑委員長の妹だったの!?」


 驚愕の表情を浮かべる女子生徒に、女子生徒――伊里香が嘆息して応える。


「あのね、舞。委員長のでっちあげに決まってるでしょ? 第一、名字違うし……」


 少々天然っ気がある舞に対して伊里香が教える。


――□■□――


 え~と、ここでとりあえず自己紹介を。

 私の名前は『加賀峯(かがみね) 伊里香(いりか)』と言って、ここ神勉学園の二年生をしています。ここは風紀委員の会議室で、私達は風紀委員です。ちなみに、先程から色々と騒いで威風な感じを醸し出しているのは、一応私達風紀委員の委員長である三年生の『神憑(かみがかり) 柊羽(しゅう)』先輩です。大人しくしていたら割とイケメンの部類に入りそうな感じなんですが、なにぶん――


「フフフ、見よあの空に輝く光の恒星を! あれこそ、吾輩達の住むこの青き惑星を明るく照らさん物――サンだ!」


 とまぁ、こんな感じで絶賛中二病全開なのでどうにもダメダメに見えてしまうんです。

 はぁ、何というかもったいないというか。かくいう私も始めは委員長の第一印象としてはカッコイイだったんです。でも、その中身を見てしまった今としては……はっきり言って風紀委員に入った事を後悔しかけてます。


「大丈夫かい、加賀峯さん? 少しがっかりしている様な顔だけど?」


「あっ、いえ大丈夫です。心配してくださってありがとうございます!」


 私の事を心配して話しかけてきてくれたのは、同じく風紀委員の三年生の『(くしげ) 和彦かずひこ』先輩。神憑委員長とは違って、匣先輩は見た目も中身も爽やかでまさにイケメンといった感じです。この人がこの委員会にいるおかげで私もまだこの委員会でやっていこうという気が保てているわけです。

 そして、先程私と会話していた舞。彼女の名前は『霧崎(きりさき) (まい)』と言って、私の小学生時代からの友人です。とっても大事な大事な友達で、困っている時はよく助けてくれます。私と一緒に風紀委員に入ってくれもしました。


「ん? どーかした? 私の顔ジロジロ見て……。何かついてる? それとも、まさか伊里香ちゃんってばわたしの事を……? で、でもわたし達同性だし……」


 何を言っているのこの子は。とまぁ、このようにやや天然っ気のある舞はどこか抜けているためこの様に冗談や誤解をすぐに間違えて捉えてしまうことが多々あるのです。


「いや、そういう事じゃないの。う~ん、何て言えばいいのかな。とりあえず、少なくとも舞が思っている様な事が理由で見てたんじゃないってこと」


「なーんだ、そうなんだ。……少し残念」


「え?」


「ううん、何でもないよ」


 私は今一度先程の舞の台詞をリピートしてほしかったが、確信したくもなかったので、聞くのはやめておくことにした。

 あっ、それと忘れていましたが、一応神憑委員長は風紀委員長でありこの神勉学園のハードスタディメンバーの第五位です。凄いですよね、見た目は中二病なのに……。やるときはやるということでしょうか。


「ん? どうした、妹よ」


「だ・か・ら、妹じゃありませんって! いい加減にしてくださいよ。ぜーったいに公の場所でそんなこと言わないでくださいよ? 舞みたいに周囲の人に勘違いされたらたまりませんから!」


 頬を膨らませて腰に手を添えそう忠告する私に、神憑委員長は顎に手を添えて言った。


「そうか。どうやら、あの事件の影響は余程多大なようだ。ここまで兄の事を否定するとは。やはり、記憶が失われているようだ。心配することはないぞ、妹よ。ドクター・ヤブも、その内治るから心配ないだろう、と言っていた」


 腕組をしてうんうん頷きながらそういう神憑委員長に私はさらに文句を。


「何ですかその取ってつけたような後付け設定は! 第一、何ですかドクター・ヤブって! 完全にヤブ医者じゃないですか! ふざけないでください! それよりも、さっさと今日の議題はじめてください! いつまでたっても作業が前に進みません! このままだべって今日の会議終わらせるつもりですか?」


 まるでお母さんの様に神憑委員長を叱りつける私ですが、神憑委員長は額に指を当てて首を左右に振るだけだ。


「怒りっぽいな妹よ。何だ、甘えたいのに甘えられないからその苛立ちが怒りに転じているのか? そんなに甘えたいのならば、存分に甘えていいのだぞ?」


「いやだから、甘える甘えないとかそういう問題じゃない――」


むぎゅっ。


「どうだ? 落ち着いたか? しばらくこうしててやるから、怒りを鎮めよ」


 そう言って私の頭を優しく撫でて抱きしめる神憑先輩。ああ、何でだろうホッとする――って、違う違う!


「や、やめてください! 突然抱きついてこないでください! セクハラで訴えますよ!?」


「待て待て、落ち着くのだ。吾輩はただ我が妹の怒りを鎮静に導こうとだな……」


「そもそも、私の怒りの原因が委員長にあるんです!」


「な、何ッ!? どういうことだ、吾輩が何かやったのか? ……ダメだ。思い出せん! まさか、あの時の封印が吾輩の記憶にも影響を!?」


 頭を抱え「しまった」という顔をする神憑委員長にさすがの私も怒り疲れて嘆息してしまう。すると、急に一人の生徒が倒れた。


バタン。


「む! だ、大丈夫かしっかりしろ! どうした、誰に殺られた!?」


「いや、殺られたって……外傷ないじゃないですか」


 手を振り、いやいやと動作をする私に、神憑委員長は続ける。


「くっ、貴様の事は忘れんぞ。必ず、弔ってやるからな?」


「だから死んでないって言ってるじゃないですか!」


 はぁはぁ、どうして誰もこの人にツッコまないんだろう。ま、まさかもう既に誰もが諦めているとか? だとしたら私も諦めて放っておいた方がいいのかも……。でも、誰もツッコまずにスルーっていうのも何だかこっちがモヤモヤするし。


「ん? 加賀峯さん、どうやら倒れた生徒はこのお茶菓子を食べたみたいだね」


「え? まだ、お茶も出してないのに……」


 確かに匣先輩の言うとおり倒れた生徒がさっきまで座っていた椅子の目の前の机には、空の袋が置いてありました。お茶菓子の袋です。と、いうことはやはりこの生徒はこのお茶菓子を食べたことになります。しかし、どうして……。


「あっ、ねぇねぇ伊里香ちゃん! これ……」


 舞がお茶菓子の入っていた箱を裏返して何かに気づく。私もその場へ行って確認してみると、舞が指差す所には消費期限が書かれていました。――一昨年の十二月十日と。

 つまり、このお茶菓子は一昨年のお茶菓子で消費期限が切れていて、それをこの生徒は食べたということです。


「とどのつまり、生徒が倒れた原因は柊羽にある……ということだね」


 匣先輩が優しげな笑みを浮かべて言う。コクリと私は頷き、ふっと神憑委員長の方に顔を向ける。


「な、何だ? どうかしたのか?」


 未だに自分が原因だと気づいていない様子の神憑委員長。本当にこの人があのハードスタディメンバーの一人なんだろうか、とさえ思えてくる。


「はぁ、あのですね委員長。あのお茶菓子って委員長が用意したんですよね?」


「いかにも。吾輩の隠れ家より持ち出したものだ。奥底に封じ込められていたので取り出すのに苦労したぞ」


「それって、手に取らないように置いておいたんじゃないんですか?」


「何?」


 訝しげにしかめっ面となる神憑委員長に私は続ける。


「このお茶菓子……消費期限切れてますよ?」


「――ッ!? な、何だと! ば、馬鹿な! ありえん!! ……この、この吾輩がよもや日付を(たが)えたというのか?」


 未だに信じられないという表情を浮かべる神憑委員長は目をオロオロと動かして動揺の色を見せます。


「まさか、吾輩が同胞を殺めてしまうとは……ッ、一生の不覚! 吾輩の様な恥晒しは死ぬしかない! すまない、我が同胞よッ! 吾輩もすぐにそちらへ向かうッ!」


 そう言って突如懐から真っ黒な漆黒に染められた物騒な武器――拳銃を取り出して、自身のこめかみにその銃口を突きつけた。


「うわぁああああ! 委員長、気をしっかり保ってください! 死ぬのは早すぎます! ていうか、ここで死なないでくださいー!」


「妹に心配されて兄として幸せだ……」


 何故か死ぬ間際に見せる様な優しげな微笑みを見せる神憑委員長。本当にこの人は死ぬ演技もここまで本格的にやるのだから困ったものよね。


「柊羽、もうそれくらいでいいんじゃないかな? 僕もいい加減本題に入った方がいい頃合だと思うよ?」


 匣先輩がハニカミながら笑顔を見せ、そう神憑委員長に告げる。すると、先程までの表情が急に元の真面目な風な表情に戻り、委員長が口を開く。


「うむ、そうか? 和彦がそこまで言うのであれば致し方あるまい。では、今回の作戦会議に移行しようではないか」


「ぐすっ……え?」


 気づけば無駄な涙まで流してしまっている自分がいた。我ながら恥ずかしい。恥ずかしくて死んでしまいそうなくらいだ。慌てて涙を拭い、風紀委員らしく身なりを整えて席に着く。

というわけで、二ヶ月ぶりの投稿です。今回の登場人物はハードスタディの第五位の神憑柊羽。これで二人目くらいですかね。現役中二病です。中二病キャラは今まで書いたことがなかったため、結構台詞考えるのも楽しかったです。そして、今回は風紀委員を舞台にしてみました。現実世界で風紀委員って見たことないんですけど、みなさんの学校にはありますか?

ちなみに、風紀委員長でもある神憑ですが格好は不良の様に着崩しているためとても見た目では風紀委員長には見えません。

そんなハチャメチャな委員長をコントロールしているのが彼と縁のあるイケメンの匣和彦ときちんと世話をし、物語を進め、ボケとツッコミの二刀流を操る加賀峯伊里香。後は天然キャラとして霧崎舞ですかね。う~ん、風紀委員にしてはえらく個性キャラが多い気がします。

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