Study:7-C「ハチャメチャなアホウサギ」
――□■□――
あれから三年の月日が流れた。ここは今より遡ること数年前。当時、門構一兎が六歳の時の時代。少年――一兎は、三年の月日を経て現在小学三年生の九歳となり、また幼馴染である少女――二詠芹那は小学五年生の十一歳となっていた。そして、その姉――二詠玲那は高校三年の十八歳となり、三人はスクスクと成長していた。そして、それは芹那の胸にも多大なる影響を与えていた。
場所、二詠家……。
《どうして? どうしてこんなことに……》
栗毛髪の少女――玲那が具体的な理由が分からず途方に暮れてぼやく。すると、その声に返す様に妹の芹那が口を開いて言った。
《ごめん、お姉ちゃん。私もまさかこんなになるだなんて思わなくて……》
妹の芹那が姉の玲那に謝るのには理由がある。それは、三年前のほんのした賭けから始まる。当時まだ若かった芹那はその発育もまだ途上で、そのボディラインも姉に比べて寸胴――とまではいかないものの、その胸はほんの少しだけ膨らんでいる程度だった。だが、三年の月日を経た彼女の体は何故か不思議と発育して行き、現在では姉と大して変わらぬプロポーションを得るまでになった。
《ねぇ、何か秘薬でも使った? それとも、パッドでも入れてるの?》
《そ、そんなんじゃないわよ!》
果てには姉にこう言われる始末である。だが、それも無理はない。三年前まであんなにもペッタンコで同年代の男子達からからかわれていた芹那が、今ではこんなにも発育しているのだ。驚かないわけがない。
《でも、このままだと……私あの変態ウサギくんにやらしいことされるのよね?》
《だって、お姉ちゃんが約束しちゃったし……。あいつ、絶対に来るわよ? あいつは女体関係になったら目がマジになるから》
妹の言葉にブルブルと体を震わせる玲那。完全に顔面蒼白である。恐らく、変態ウサギこと一兎の事を想像してしまったのだろう。
門構一兎。通称――アホウサギ。このあだ名は幼馴染である芹那につけられたもので、当人は認めていないものの、すっかり芹那にこのあだ名で定着されている。ちなみに、姉は変態ウサギと呼んでいる。彼は近所でも有名なエロガキの一人で、あらゆる変態行為しか働かない事で一躍噂のトッ3に君臨していた。その数々の行為には親も呆れ果てるばかりで、制止しきれないのだとか。その影響力は近所の少年達にも及んでいて、今では小さな組織が完成しているらしい。
《何とかして、あの子から隠れないと!》
《でもどうやって? あいつ、絶対にお姉ちゃんを死んでも見つけるわよ?》
《い、嫌なこと言わないでよ、芹那! お姉ちゃんをノイローゼにするつもり?》
《いやいや、それくらいでノイローゼにはならないでしょ?》
手と首を左右に振ってありえないと言う芹那に、玲那は胸の前で手を重ねて言った。
《お姉ちゃん、あの肉食ウサギくんに食べられたらどうしよう?》
《そもそも、肉食のウサギなんていないでしょ? いるとしたら草食――》
《でもでも、あのウサギは例外でしょ? あの獲物を絶対に逃がさないと主張する野生の眼は何度見ても恐怖よ!》
妹の手をギュッと握る玲那に、若干失笑気味の芹那だが、姉に握られた手にべっとりと付着する手汗に姉がどれほどまでに恐怖しているのかを悟った。そして、姉の不安感を少しでも和らげてあげようと、彼女は笑顔でこう言った。
《心配しないで、お姉ちゃん! 私が何とかしてごまかすから! だから、お姉ちゃんはどこかに隠れてて?》
《わ、分かった……。ぐすっ、ありがとう芹那》
《うん》
目尻に涙を浮かべ、上目遣いでお礼の言葉を述べた玲那は、急いで階段を駆け上がっていった。
《よし、どこからでもかかってきなさい、アホウサギ!》
芹那は、約束を決して守ろうと姉が階段を登りきり姿を消してから玄関ドアの方に向き直った。意思を固め、何としてでも変態男である一兎から姉を守ろうと内心で誓う。
一方、玲那は、階段を上り終え、自室の扉を開けて部屋に入っていた。
《これからどうしよう? 芹那に守ってもらえるとはいえ、元々は私があんな約束をするからいけなかったのよね。はぁ、いい加減賭け事に弱いんだって自覚しないのかしら? って、今更悔やんでも後には引けないわ! せっかく芹那が守ってくれるんだもの! 絶対にこの胸をあんな男に晒したりしないわ! ……とは言ったものの、どこに隠れよう? やっぱり、定番のベッドの下? でも、そんなのすぐにバレそうだし……この家には屋根裏部屋なんて存在しないからそれも無理……。となると、残る場所は――》
そう言ってチラリ横を向く玲那。彼女の視線の先には、少し大きめのクローゼットがあった。観音開きになっているそのクローゼットに歩を進めた玲那は、ここならバレなさそう、と扉を開けて自身の洋服を少し横にずらしてその奥に隠れるようにして洋服で上手く自分の体を覆い扉を閉めた。無論、他にもいくつか細工をしておいた。部屋の鍵はちゃんとロックしてある。これで入られないし、仮に入られたとしても相当な時間稼ぎが可能なはずだ。
《お願い……何とか見つかりませんように》
微かな願いを心の中で呟き、彼女は息を潜めた。
ピンポーン♪
運命のインターホン。二詠姉妹にとっては悪魔がその命を狩りに来たといっても過言ではないだろう。
《は、は~い……ど、どちら様――》
ガチャ!
最後まで言葉を発する前に向こうから扉が開く。
《よっ! 芹那!》
そう言って顔をひょっこり覗かせたのは、アホウサギこと門構一兎だった。彼はやけにニヤニヤと悪質な笑みを浮かべていて、傍から見ても何か企んでいるのは見え見えだった。
《な、何の用かしら? 帰る家間違えてるんじゃない?》
嫌味の様に言う芹那だが、負けず一兎が一声。
《何言ってんだよ! 僕は今日、玲那ちゃんに用があってきたんだ!》
《ひ、人の姉を軽々しくちゃん付けしないでくれる? 年上なんだからお姉さんでしょ?》
《まぁまぁそんな細かいこと気にするなよ、せ・り・な!》
ちょんっ。
《はにゃっ!?》
《ひゃははは! 何だよ、その可愛い声! 爆笑だよ!》
《きゅ、急に人の胸つつかないでくれる? しかも、的確にピンポイントを……》
《ほぅ、どうやら弱点だったか?》
《な、何言ってんのよ! へ、変態!!》
顔を真っ赤にして文句を言う芹那だが、そんなことにも動じず一兎は続ける。
《ってことで、玲那ちゃんはどこだ?》
《お、お姉ちゃんはまだ帰ってきてないわ! た、多分図書館に勉強にでも行ってるんじゃない?》
《何ぃ? ったく、三年経って約束通り芹那の胸がこんなにもサイズアップしたんだから約束を果たし
てもらおうと思ったのに……》
――やっぱり、あの時の約束を覚えてたのね。
顎に手をやり考え込む一兎を見て、内心で芹那がどうしようかと悩む。すると、芹那が口を開いて言った。
《ねぇ、今日はお姉ちゃん忙しそうだしまた今度来てくれない?》
《ん? そうだな……分かった》
――あれ? 意外と素直ね。でも、助かった。これでお姉ちゃんの胸の貞操は守られて――
《とでも言うと思ったか?》
《え?》
一兎の言葉に声を失う芹那。彼はにやりと笑みを浮かべて何やら言いたげな顔をしている。
《な、何?》
《へっへっへ、芹那。玲那ちゃんは重大なミスを犯したみたいだな。この靴、玲奈ちゃんのだろ?》
《な、何言ってるの? これは私のよ!》
内心でしまったと、自身を責めるが今更遅いと何とか言い訳を作る。
《いんや、これは玲那ちゃんのだ。まず、小学生である芹那が革靴だなんて履くわけがない。それに、そもそもこの靴は玲那ちゃんの通っている高校の革靴と同じだしな。しかも、この靴のサイズ……芹那が履いているのと違うし、スンスン……臭いも芹那と違う》
《い、いやぁああああああ! や、やめて! な、何してるのあんた!! 人の靴の臭い嗅ぐだなんて信じらなんないっ!》
顔を真っ赤にして慌てて一兎の手から革靴を取り上げる芹那。その行動に呆けた顔をする一兎だが、すぐに表情を戻してまた一言。
《それにまだ他にもあるぜ?》
《え?》
《お前の使ってる香水の匂い……》
突然顔を近づけてきた一兎は、不意打ちを狙うように芹那の横髪に手をかざして思いっきり匂いを嗅いだ。
《ひゃあああっ! ちょっと何なのホントに! こんなのもうセクハラ以外の何者でもないじゃない!》
《へっへっへ!》
《な、何がおかしいのよ!》
《変態、ストーカー、セクハラ。これらは全て俺にはただの褒められ言葉にしか聞こえないぜ! それにな、約束してきたのは玲那ちゃんの方だ。俺は何も間違ったことなんてしてない。それに、香水の匂いが微かに玄関に残ってるんだ。玲那ちゃんが使ってるのと芹那が使ってるのとは匂いが違う。つまり、たった今玲奈ちゃんが家に帰ってきた事を意味する。そして物的証拠でもあるこの通学靴である革靴が何よりの証拠! ズバリ、玲奈ちゃんは家の中にいるッ! どうだ? 分かったらそこをどけ!》
悔しいが、物的証拠である革靴が存在する以上、一兎の言う言葉を全て変態の一言で済ませる事は不可能である。何よりも、彼は何も間違ったことは言っておらず、どちらかといえばこちら側が彼を何とかして帰そうとしているのだ。しかし、どうしてもこの変態の手に姉を差し出す訳にはいかない芹那は両手を横に広げ声を荒げた。
《嫌よっ! お姉ちゃんの所には行かせない!》
《ならばその胸つつくぞ!?》
《ひゃっ!》
銃口を突きつけられるが如く、人差し指の標準を芹那の豊満な胸に向ける一兎に悲鳴をあげて慌ててしゃがみこむ芹那。
《はっはっはっは! そうだ、それでいい!》
そう言って高笑いしながら一兎は階段を一段一段踏みしめるようにあがっていった。
《ご、ごめん……お姉ちゃん》
芹那は悲しみに打ちひしがれ、姉にこの旨を伝えようとメールを送信した。
ピロリンピロリン♪
《きゃあっ!》
クローゼットの中で小さな悲鳴があがる。
《な、なによ?》
荒ぶる胸の鼓動を抑え、携帯の画面を見る玲那。そこには謝罪のメールが届いていた。妹の芹那からだ。
《し、失敗したのね。ふぅ、でも……そう簡単には見つからないはず》
そう小声で呟く玲那だが、彼女はこの後自身を悔いることになる。せっかく施した術がよもや仇になってしまうとはこの時彼女は思いもしなかったのだ……。
コンコン。
《玲那ちゃ~ん》
別の部屋の扉がノックされる音。そして、ガチャと扉が開けられる。そこで玲那は痛感した。
――し、しまった! そういえば、この部屋以外には鍵がかかってない! これじゃあ、私の部屋がここにあるって教えてるようなもんじゃない! それに、この扉は内側からしか鍵をかけられない! これじゃあ、私がここにいるって言ってるようなもんだし!
だが、今更鍵を開けに行くことはできなかった。今、一兎がどこの部屋の扉を開けたかは分からないが、もしも自分の部屋の隣の部屋の扉を開けたのならば、鍵を開ける音に気づかれる可能性が示唆されるからだ。
《どうしよう?》
途方にくれる玲那だが、時すでに遅し。
《玲那ちゃ~ん》
再び名前が呼ばれる。その声だけで冷や汗が滲む。頬を汗が伝い、顎から下に滴り落ちる。その時、ついに自身の部屋のドアノブに手がかけられた。
ガチャガチャ。
《あれ? この部屋だけ鍵がかかってるね。しかも、内鍵。……これって、中にいるってことだよね、玲那ちゃん?》
――ビクッ。
思わず体が震える。
《ねぇ、内鍵って言ってもさ。扉開けられないことはないんだよね》
次の瞬間、やけに鈍い音がした。
《このドアノブのボタン式はさ? 靴のかかととかで蹴ると衝撃で開いたりするんだよね。だから、鍵をかけたところで無駄なんだよ?》
ギィと音を立てて開く扉。
――う、嘘でしょ?
この時、一気に血の気が引くのを感じた。別に殺人犯から逃げているというわけではない。ただ単に自身の胸の貞操を守るために必死になっているのだ。だが、分からないわけではない。自分が好意を抱いた相手でもなければ、ましてや相手は小学三年生の少年で変態。そんな男に自分の大事な体を触られたくはなかった。何よりも、年下にというのがどうしても許せなかった。
《さてと、ここが玲那ちゃんの部屋か~。スゥ~! ん~、すごくいい匂いがするね!》
部屋いっぱいに充満するコロンの匂いを吸い、どこにいるかも分からない玲那に語りかける一兎。
《おお、ここが玲那ちゃんの勉強机? すごくきちんと整理整頓されてるね。さすがはA型》
――え? なんで知ってるの? 私、教えた覚えないんだけど……。
怖い。単純にそう思ってしまった。だが、当然といえば当然だ。三年間で一度も血液型を喋ったことはない。つまり、知るわけがないのだ。なのに、偶然かもしれないがはっきりとそう言われてしまうと恐ろしくなる。
《もしかして、どうしてA型なのを知ってるかって思ってる? 血液型を判断する方法なんて色々あるよ。性格にも表れるしね。特にお姉ちゃんの場合、それがもろに表れてる。例えば、この机だってそう。ちゃんと整頓されていて散らかっていない。本棚もきちんとジャンル別に並べられていて、相当几帳面な性格なんだろうね。だからそう判断したまでのことなんだけど……間違ってたかな? へっへっへ。それより、いい加減出てきてくれないかなぁ? 僕、いい加減かくれんぼは飽きてきちゃってさ。そろそろ、玲那ちゃんの豊満な胸を弄り倒したいんだけど?》
絶対にお断りだった。こんな子供に自分の胸を好き勝手にはさせたくない。しかし、約束は約束である。しかも、自分から提案してきたのだ。それなのに、今更怖くなって逃げ出しなかったことにしようとする。これはあまりにも大人気なかった。特に、少しプライドが高い玲那にはそれがどうしても我慢ならず、どうすればいいのか悩みに悩み、考えあぐねていた。
――くっ、どうすれば?
《はぁ、どうしても出てくる気がないんだね? じゃあ、この玲奈ちゃんが毎日使ってるベッドに潜り込んでクンカクンカ、スーハースーハーしていいかな? 掛け布団にはもちろんのこと、枕にもたっぷりと臭いが付着してるだろうしね。それじゃあ、いくよ? 3・2・1……ぜ――》
《だ、だめぇええええええええええええええええええええええっ!》
バンッ! と開け放たれるクローゼットの扉と、そこから悲鳴をあげて飛び出してくる玲那。彼女は今にもベッドに飛び込もうとしている一兎をグーで殴り飛ばした。
《ぐふぉあッ!》
一兎は頬を真っ赤に腫らして部屋の壁に叩きつけられて背中を強打した。
《はぁ、はぁ。ひ、人の胸を触るだけでは飽き足らずその上その体臭まで嗅ごうだなんて、どこまであなたは変態ウサギなの?》
呼吸を乱し、頬を真っ赤にして言う玲那の言葉に、一兎が口元に笑みを浮かべて言う。
《へっへっへ、玲奈ちゃん。僕はまだ胸を触ってはいないよ? これから触るんだけどね》
《い、いやよ! 絶対に触らせてなんかあげないっ!》
胸を庇い、後ずさる玲那に少々ショックを受けながらも一兎は質問した。
《どうして? だって玲奈ちゃんは僕と約束したよね? 賭けに買ったら胸を好きにしていいって!》
《た、確かに……確かに言ったけど……だからって、そんなの嫌よ! なんで、好きでもない人に胸を好き勝手にされないといけないの?》
言い分としては申し分ないが、それはあくまでも一般論理。だが、賭けをしていたのならば話は変わってくる。おまけに、自分は負けたのだ。ならば、約束を守らないといけないのは玲那の方になる。一兎はその約束を果たさなければならないのだ。
《いい加減諦めなよ、玲奈ちゃん。何もキスさせろとは言ってない。ただ、胸を好きにさせてくれればいいんだ。何かおかしいこと言ってる?》
《大前提から狂ってるわよ! 何よ、胸を好きにしていいって! そんなこと言う女の子がどこにいるの?》
人差し指を一兎に向けて文句を言う玲那だが、一兎に言わせてみればただの言い逃れでしかない。そもそも、彼女がそう言ったのだ。
《はぁ、往生際が悪いよ玲那ちゃん? 諦めてその胸を……》
《い、いやっ! は、放して!》
手首を掴まれ悲鳴をあげる玲那。すると、そこへ妹の芹那が慌てて駆け込んできた。
《大丈夫、お姉ちゃん!》
《せ、せりなぁ~!》
玲那は涙の大粒を零して膝歩きで妹に抱きついた。
《うわあぁあああああん! お願いた、助けてぇ~! もう、あんな馬鹿みたいな賭けしないから許してぇ~!》
《ほら、お姉ちゃんもこう言ってるんだからやめてあげない?》
《ふんっ、やだね! 僕は約束したんだ! 約束を違えるんなら、針千本飲んでもらわないと!》
頬を膨らませて文句を言う一兎。
《くぅっ!》
《うぅ、せりなぁ~》
玲那は既に姉としての尊厳を失っていた。今ではもう完全に妹に完全に頼りきっているダメな姉である。
《じゃあお前が代わりにその胸を俺に晒すか?》
《え?》
一瞬言葉を失う芹那。
《もしも玲那ちゃんが見せてくれないなら、お前が代わりに俺にその胸を見せるんだよ! それで手を打とう!》
その言葉に一瞬躊躇う芹那。本来ならどうして? と罵声をあげるところだが、姉の身を守るためにならそれも致し方ないとそう思った。
《せ、芹那? 何もそこまで》
《いいの、お姉ちゃん》
意を決したのか、芹那は一兎をキッと睨みつけ言った。
《わ、私が胸を見せればお姉ちゃんの胸を好きにさせる必要はないのよね?》
《ああ、玲那ちゃんにするはずだったことをお前が代わりにさせてくれれば、文句はない》
《分かったわ。私がお姉ちゃんの代わりに受ける》
《芹那っ!》
《へっへっへ。さすがは芹那。玲那ちゃんと違って物分りがよくていい》
悪質な笑みを浮かべた一兎はわしゃわしゃとその五指を動かした。
《や、やめて! どうして芹那を!》
《ん? 玲那ちゃんが悪いんだよ? 大人しくその胸を差し出せば良かったものを……。後悔するなら
後悔すれば? ただ、僕は悪くない。僕は約束を守ったからね。破ったのはむしろそっち。これは約束を破った罰だと思えばいいよ》
そう言って芹那のすぐ近くに立った一兎は少し身長の低い芹那のボタンに手をかけた。
《じゃあ、脱がせるぜ?》
《え、ええ。早く済ませなさいよね! は、恥ずかしいんだから!》
《へっへっへ。ああ……、大人しくしてればすぐに終わる》
そして全てのボタンを外し終え、その胸が異性の眼前に晒される。
《ご、ごめん。ごめんなさい、芹那》
《う、ううん……いいの、お姉ちゃん》
《うぉおおおおおおおおお! すごい、素晴らしい! これこそ、まさに美乳! これこそ、僕が求め
てきたものだ! 僕の予言通り、見事に芹那は凄い胸を得た! 僕の力は凄い! へっへっへ、はーっはっはっはっは!》
こうして一兎は幼馴染である芹那の胸を好き放題に弄びその変態力を高め、さらに月日を重ねてその噂はうなぎ登りとなった。そして、今現在に至るのだ。
――ふっ、俺としたことがついつい昔の事を思い出してしまったぜ。いやあ、あの胸の感触、柔らかさ。今でも忘れない。顔を胸に挟むというあの行為は画面の向こうでしか理解できなかったが、あれでまた一つ確信を得たな。へっへっへ、芹那……玲那、くっくっく、俺様の計画はまだ続いているぞ? いつか必ず、二人の胸を我が手中に完全に収めてやる! くっくっく、はっはっはっは!
高らかに響き渡るアホウサギ――門構一兎の笑い声はそのまま、昼休みの終了のチャイムと同時に掻き消えたのだった……。
というわけで過去編の一つを終了です。一兎が六歳だった時に聞いた玲那の鼻歌はもう一つの過去編で話します。また、そっちの過去編で恐らく一兎が最後に言っていた計画がどうなるかが分かります。ちなみに、現在玲那は二詠家にはいません。なぜかは、いずれ……。
今回はギャグ要素よりも馬鹿と変態要素が多分にあったので、次は結構ギャグ的なものを入れようと思います。まぁ、コメディ要素も多めだったかもしれません。




