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第五話 捕らわれた獣人

今週も無事に投稿することが出来ました。

若干焦りましたが間に合いました。

このあとは少しストックがあるので、またのんびり続けていきます。

今回は一人称視点からの書き方をしています。

こういう書き方も、たまには良いなと思いました。

宜しかったら、御一読してみてくださいね。

感想なども頂けると、とてもありがたいです。



 「ここは――」


 ゆっくりと目を開けた。まず見えたのは灰色。

 夜目が利くイヌ科の獣人で良かった。次第に風景がはっきりと映り込んできた。


 「檻の中か」


 間違いない、檻の中にいる。理由を考える意味はなさそうだ。檻は一メートル四方の立方体と云ったところか。

 手には木製の手枷が嵌められている。手首が痛む。そして手首以外からの痛み、首の後ろに鈍痛。

 後ろから襲われたんだな。気配を察知することに長けているはずの獣人が、この有様とは本当に情けない。

 しかも裸じゃないか、身包み剥いで檻に入れるとは、いい趣味をしてる。

 そんなことより、痛みと疲労で頭は朦朧としているが、それでも何とかしてここから逃げなくてはいけない。

 幸い見える範囲には誰もいないようだ、幽かな物音も聞こえない。この暗さから判断するに、おそらくここは地下室か何か。間違いなく室内だろう。音が漏れる可能性があるけれど、仕方ない。


 「狼の脚力を、なめるなよ」


 檻の中で寝そべって、頭上の鉄格子をしっかりと握る。足の先に見える檻の開口部を、思い切り踏み抜いた。

 かなりの勢いで開口部が吹き飛び、盛大に音を立てる。拙い、これは絶対に気付かれる。


 「そんなこと行ってても、仕方ないか」


 まずはこの手枷を如何にかしなければ。両手が不自由だと何かと都合が悪い。


 「叩き割るか」


 檻の外に出て、手枷を鉄格子に叩きつける。三回ほど繰り返したところで漸く割れた。

 手枷は手首に嵌まったままだが、真ん中から真っ二つに割ることができた。

 この部屋の入口はあそこか、しかし裸のままでは出て行けない。何か着る物はないのか、布切れしかないじゃないか。しかし時間がない、さっきの音で確実に誰かに気付かれているはずだ。この布切れで我慢するしかないか、胸と腰に巻けば、取りあえずは何とかなるだろう。


 「これで――よし」


 部屋の外から気配を感じる、三人か。あれだけの音がしたんだ、気付かない方がおかしい。しかし相手は三人、素手でも如何にかなるだろう。扉が開いた瞬間が狙い目だな。


 三人の足音も聞こえてきた。そろそろだな。


 勢いよく扉が開いた。







 私はあの日、一人で狩りをしていた。

 十歳の頃から始めた狩りだ、あれからもう九年もやっている。村の中でも、かなり上手い方だと自負している。その証拠に、既に獲物を五匹狩ることができた。

 これで今日の夕食に困ることはないだろう。お父さんもお母さんも喜んでくれると思う。

 兄さんはまた小言を云うかな、嫁入り前の女が云々と。兄さんは私より弱いくせに口だけは達者だ。


 それにしても、あの猿人種は何故こんなところまで来ているのだろうか、既に魔物の領域に入っているはずなのに、さっきから猿人種の気配が消えない。一度遠目から確認したとき、彼らは弓を引き絞って動物を狩っていた。五人だっただろうか、それなりに腕の立つ狩人だった。

 普通の狩人は魔物の領域に足を踏み入れない筈なんだけど、あの狩人達は魔物も狩りたいのかな。

 私もときどき素材目的で魔物とやりあうことがあるし、あの猿人種達も魔物の素材を採りに来たのかもしれない。

 魔獣の素材は通常の動物の素材よりも良質な物だし、高値で取引されると聞いたことがある。

 狩った魔物を持ち帰ると、兄さんの小言は物凄く増えるんだけどね。



 振り返ってみると、あの猿人種達が見えた。しかも魔物に囲まれている。

 私の身体はそれを見た瞬間に動き出していた。


 「大丈夫か!」


 私は一番大きかった魔獣の首を掻き切りながら猿人種の安否を確認した。

 辺りに魔獣の首から吹き出す血の匂いが立ち込める。この臭いで更に魔物が集まってくるのは間違いない。


 「助けてくれ!」


 猿人種達が私に駆け寄ってきた。


 「馬鹿、不用意に動くな!」


 猿人種達が動きだした途端に、周りの魔物が一斉に襲いかかってくる。私は猿人種達を庇い乍ら、魔物を殺していった。


 魔物は八匹いたが、五分程で片が付いた。


 「ありがとう、本当に助かった」


 猿人種達が大仰に頭を下げてくる。


 「いや、無事でよかった。怪我はないか?」

 「ああ、おかげさまで皆無傷だよ」


 それなら良かった、さっきの魔物の中には爪に毒を持っている奴もいた。

 無傷なら毒で死ぬ心配もなさそうだ。


 「いやあ、一時はどうなることかと思ったんだが、あんた強いんだな」

 「それほどでもないけどね」

 「いやいや、そんなことはない。こんなにあっさり魔物を倒しちまうとは、もしかしたら名のある冒険者さんだったりするのかい?」

 「冒険者なんてとんでもない。私は近くの村に住む、一獣人さ」

 「獣人が強いことは知っているが、アンタ程の人は初めてお目にかかるよ」

 「そんな風に云われると、照れてしまうな」


 なんだ、けっこうイイ奴らなんじゃないか。


 「実は俺達迷ってしまって、帰り道を探していたらこの有様だ」

 「そうだったのか、なんなら私が森の外まで案内しようか?」

 「本当かい? そう云ってもらえると助かるよ」


 みんな一気に笑顔になったな。それだけ不安だったってことだろうな。

 うん、今日は狩りも上手くいったし人助けもできるし、いいこと尽くめだ。


 ここからなら東の街道に抜けるのが一番近いかな。少し魔物の数が多い道だけど、なんとかなるだろう。






 「あぶない!」

 「ひい!」


 間一髪。今のは危なかった。

 右手の握力が馬鹿になってきてる、でもこの程度の魔物の首なら、まだ一撃で刎ねることができる。でもナイフが血と油でだいぶ切れ味が落ちてきてる。負荷をかけ過ぎてるのか、大分がたがきてしまっている。


 それにしてもあと少しで街道だって云うのに、さっきから魔物に襲われっぱなしだ。

 しかも私じゃなくて狩人を狙うから最悪だ。狩人も狩人で、纏まってくれてればいいのに、魔物が現れるとあっちこっちに逃げるもんだから、さっきから私は走りっぱなしだ。

 さすがの私も疲れてきてるな。身体の反応がかなり鈍ってる。辺りの気配にも集中できてない。助けてやる度に狩人が物凄い勢いで謝ったり感謝したりしてくるから、なんだか注意もし難いし。

 はあ、今日は良い日だと思ったのに。人助けってこんなに疲れるものなんだな。


 「あと少しで街道が見える。もう少し頑張れってくれ」

 「ああ、本当に申し訳ない。俺達も戦えればいいんだが」

 「いや、無理に戦って怪我でもしたら大変だ」

 「そう云ってもらえると、本当に助かる」


 街道までは本当にあと少しなんだ、それまでこのナイフが耐えられればいい。帰る時は走って帰れば魔物に追いつかれることはないんだし。

 帰ったら兄さんから凄い説教されそうだけど、人助けなんだ、お父さんもお母さんもきっと褒めてくれるに違いない。


 ああ、早く家に帰りたい。





 「おお、街道が見えたぞ!」


 狩人の一人が木々の隙間から見えた街道に走っていった。

 街道の真ん中で飛び跳ねて喜んでる。

 ああ、やっぱり人助けっていいな。あんなにも喜んでくれるのか。


 「いやあ、本当に助かったよ。どうもありがとう」

 「いや、当然のことをしただけだから」


 狩人の手が差し出された。握手したいのか。私の手は乾いた血がこびり付いていて、汚いんだけど、こんな血塗れの手なのにいいのかな。

 でも私もなんだか握手したいな。ズボンで擦れば少しは血が落ちるかな。

 ああちょっとマシになった。


 私は狩人と握手を交わして、そこで意識がなくなった。






 私は思い切り地面を蹴った。

 私の全力に追いつける猿人種はそんなにいない。ここさえ抜けられれば。

 私はまずドアを開けた男の顎に狙いを定めると、掌底を的確に打ち込んだ。男はその衝撃で身体を一回転させて床に落ちた。

 残り二人。






 今日はなんていい日なんだ。こんなにも簡単に獲物が引っ掛かるとは思わなかった。態々自分から街道への道案内をしてくれるとは、とんだ御人好しだ。

 まったく、上手いこと事が運んだ時の酒は格別だな。若い奴等もいつも以上にはしゃいでいやがる。まあそうなる気持ちは俺にも十分に分かるがな。

 獣人の雌一匹金貨十枚。大金だ。暫くは遊んで暮らせるだろう。魔法師の先生にも、これまでのツケを纏めて払ってやれそうだ。そう考えるとますます酒が進んじまう。しかしさすがの俺も大分回ってきたな、眠くなってきちまった。


 「おい、俺は先に寝るからよ。後は好きにやれや」


 若い奴等の面が一層綻ぶのが分かる。

 普段扱き使ってる分、たまにはこうやって羽目を外させてやらねえとな。俺も餓鬼の頃親父に散々扱き使われたが、その後にこうやって馬鹿みてえに飲んで騒ぐのが、本当に楽しかったもんだ。今の若い奴等は、若い頃の俺を見てるようで、これからが楽しみになるぜ。

 さて、この酒を飲み干したら・・・?

 なんだ今の音は、地下か? まさか!


 「おい! 誰か見てこい!」


 あの女、まだ力が残ってやがったか。散々引っ掻き回して疲れさせたっていうのに、獣人ってのはどんだけタフな生き物なんだ。

 しかし拙い、若い奴等の殆どが酔いつぶれてやがる。さすがに手練れの連中は弁えているが、それでも酔ってることに変わりはねえな。

 だが獲物を逃す訳にはいかねえ。無理矢理にでも動いてもらうしかねえな。


 「しゃきっとしろ!」


 こうやって顔に水をぶっかけてやれば、多少は酔いも醒めるだろう。幸い魔法師の先生は殆ど酒を飲んでねえ。ここは先生に頼るしかねえか。


 「先生よ、いけるかい」

 「分かってるよ」


 さすがは先生だ、いざという時頼りになるぜ。


 「ちっ、来たぞ!」


 あの餓鬼共伸されやがったな。事が済んだら教育のやり直しだ!






 この酒気。奴等相当飲んでいるな。こっちとしては好都合だ。

 さっきの奴等も大分酒臭かったから、期待はしていたけど。これ程までに濃い酒気ならば、殆どの奴らは酔っているに違いない。ここは一気に駆け抜ける!


 地下から延びる階段を五段飛ばしで駆け上がった先には、何故か上半身がずぶ濡れの男達が身構えていた。

 一種異様な光景に気後れしそうになったけれど、だからといって立ち止まってはいられない。押し通る!

 私の動きに合わせて男達の表情が一層険しさを増していく。でも酒を飲んでいるという予想は的中しているようだ、明らかに動きが緩慢だ。

 中にはそうでもない奴もいるけど、酔ってる奴等が足を引っ張ってくれている。

 視界にちらりと窓が見えた。あそこから飛び出すのが最適か。この格好だと傷だらけになりそうだけど、それを気にしていられるような状況でもない。考えるだけ無駄だ。


 「窓を塞げ!」


 くそ、そんなに上手いこといかないか。でも人の密集しているドアに向かうよりは、それでも窓に向かう方がいくらか容易い。強引に突っ切るしかない。


 「どけえ!」


 出し惜しみはしない。最初から全力だ!

 私は男達を蹴散らしながら窓へ向かって猛進した。






 認識が甘かった。これは明らかに俺のミスだ。獣人種の身体能力の高さは理解しているつもりだ、それでもあの檻は壊せないと思っていたんだがな。だが現実として奴は檻から抜け出しちまってる。折角の金蔓をむざむざ逃がす訳にはいかねえ。


 「お前等、酒瓶を割れ! 何をボケッとしていやがる、さっさと動かねえか!」


 手当たり次第に酒瓶を割り、床をガラスの破片で埋め尽くす。これで奴も自由には動けまい、今のうちにこいつ等の酔いが醒めてくれりゃ良いんだが、あまり期待はできねえな。


 「随分派手にやってくれたな」


 もう五人伸されちまった。さすがは獣人だ。あれだけ疲れさせたにも拘らず、あの身体能力は異常としか云えないな。


 「しかし、随分疲れてるじゃねえか」

 「うるさい!」


 明らかに身体の動きが鈍くなってきている。本来の精彩を欠いている。

 薬が効いてきたな。飲ませたのは二時間程前、そろそろだとは思ったが予想通りだ。もしかしたら中和されてるんじゃないかと勘繰りもしたが、杞憂で済んだみたいだな。


 「そろそろ終わらせるか」

 「先生、もう準備できたのかい?」

 「ああ、とっくに済んでいるよ」

 「それじゃあよろしく頼むぜ」

 「ああ、分かった」


 先生の杖が青白く発光している。青白いってことは水属性ってことか。先生は火属性の魔法を得意としているが、さすがに今の獣人にそれだけの事をする必要はないってことか。

 先生の杖先が輪を描くと、細かい氷の粒が発生していく。水滴程の水を凍らせたってことか。

 更に杖が黄緑色に発光する。今度は風属性か。なるほど、そういうことか。


 「少し痛いぞ」


 先生の言葉と同時に氷の礫が獣人に向かって弾けた。

 獣人が咄嗟に身を低くして守りを固めるが、礫は容赦なく獣人の身体に叩きつけられる。

 傷物は少々値が落ちるが、この際仕方がないだろう。

 直撃した個所は打撲、掠った個所には裂傷。いつ見ても先生の魔法はたいしたもんだ。

 どうやら二重詠唱していたらしい。先生の得意技のひとつだ。これだけ滑らかに魔法をかけ合わせられる奴は、なかなかいないだろう。高い金を払って雇っているだけのことはある。

 絶え間なく襲ってくる礫に、獣人の戦意も大分削られていることだろう。


 「先生、そろそろいいんじゃねえか」

 「そうだな、十分だろう」


 先生が杖を下ろすと、礫の嵐が治まった。

 その瞬間、獣人が。






 床にはガラスの破片。正面には魔法師。そして取り囲む男達。

 窓は視界に入っている。しかしまだ遠い。

 どうする。どうしたらいい。

 いくら考えても打開策なんて出てこない。

 私が出来ることは多分、走ることだけだ。全力で走ることだけ。

 でも男が云っていたように、身体が重い。この倦怠感は異常だ。多分薬か何かを飲まされているんだろう。

 それでも走らなきゃ。家に帰らなきゃ。私は家に帰るんだ。


 拙い!

 咄嗟に身を屈めたけど、この衝撃はかなりきつい。

 何だ。何が起きてる?

 何か小さい物が体中にぶつかってるのは分かる。とても目を開けられる状態じゃない。

 直撃した物の衝撃も凄いけど、掠ったやつが厄介だ。皮一枚とは云え皮膚があっさりと切り裂かれていくのが分かる。こんなのを長時間やられたら堪ったもんじゃない。

 それでも今は我慢するしかない。こんな状態じゃ動けない。これが止んだ瞬間。その一瞬を狙うしかない。それまでは只管我慢だ。


 くそ! まだ止まないのか! あれから五分くらいは経ってるんじゃないのか?

 それともまだ三十秒くらいなのか? もう頭がぼんやりしてきた。

 男の声が幽かに聞こえる。

 止めろと云ったのか? そうだろう? そうであってくれ!


 待ってたよ、この瞬間を!


 私は飛び出した。これ以上ないぐらいに全力で。

 次の瞬間、私は窓を突き破った。




一人称視点はどうだったでしょうか。

駄文乱文失礼しました。

誤字脱字は見つけ次第訂正いたします。


続きは来週。5/4~5/6の何れかに投稿いたします。


12/7/10 修正を加えました。

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