第十六話 お願い
今週も無事に投稿できました。
お気に入りに入れてくれている方がいるようで
本当に嬉しいです。ありがとうございます。
『まったく、骨が折れるわい』
『文句云わないで手を動かす』
『わかっとるわい!』
とある山の中腹辺り、一人の青年と複数の自然種の姿がある。
『それにしても、また派手にやらかしたもんじゃ。山に明確な記憶が残っておるからいいものの、少し遅れたら復元なんぞできんかったぞ』
「うん、やりすぎちゃった」
恥ずかしそうに頭を掻く青年はナイルである。そして彼に小言を並べているのはグラドであった。
そのほかにもナイルの大切なドワーフが何人か忙しそうに走り回っている。
ドワーフ達は今、ナイルが破壊してしまった山を修復している最中であった。
ナイル自身土属性の魔法が使える為、朱副作業を行うことはできるのだが、繊細な魔力の操作が必要であることから、今はグラド達の仕事を手伝う側に回っている。
グラド達ドワーフは大地そのものが顕現した存在であることから、フィロスから山の修復を依頼されたナイルに呼び出され、こうして懸命に山の修復作業を行っているのである。
「完全じゃなくてもいいんだって」
『まだこうなってからそんなに時間も過ぎておらん、ほぼ完全に戻せるわい』
記憶とは人類だけが持っている訳ではない。勿論動物にも植物にも、万物に記憶と云われるものは蓄積されている。殆どの人類がそれを知ることはできない為否定されることも少なくない。しかし知らない、分からないからと云って否定できるものではない。
グラドはドワーフである。ドワーフとは大地そのものに人と云う属性を付加させた存在であることから、大地の記憶、蓄積された情報を汲み取ることが可能であった。グラド達ドワーフは大地から見聞きした情報から、ナイルが破壊した山の修復を急いでいるのである。
そう、グラド達は急いでいた。のんびりしていたのでは記憶が薄れてしまう。
なくなってしまう訳ではない。新しい情報に上塗りされて、薄れてしまうのである。
人や動物などには記憶を操作すると云う機能、脳と云う器官を持っている。脳の一部は記憶を司るとされている。記憶は脳に格納されていると云うことではなく、記憶を司るとされているだけである。どこに記憶を格納しているかは分からないのだ。
しかしおそらく記憶と云う情報は身体凡てに蓄積されているのであろう。確かなことは云えない。そう考える方が収まりがいい。
そうすると万物に蓄積されていく情報とは、時間の流れとも云えるであろう。情報が蓄積されていくことが時間の流れなのである。
グラドやローラなどの自然種達は基本的に自然の声、情報を見ることや聞くことが可能である。しかし天然自然には記憶を司る機能などは存在しない。蓄積された情報は分析も分類も分割も削除も構築も再生もされない。
情報は次々に上塗りされていくだけで、古い情報が消されると云うことではないのだろうが、やはり薄れていってしまうのであろう。
ナイルがグラドを召還してからそれほど時間は経過していない。しかし山は既に元の姿を取り戻そうとしている。二十程のドワーフが総出で修復作業をしているのである。この速度も肯けるものであった。
そして妖精達も元気に飛び回っていた。何をしているのかと云えば、山に新しい芽を振り撒いているのである。ドワーフの能力を以てしても、さすがに木木までは瞬時に再生させることは難しい。そこで活躍しているのが妖精達である。
妖精はドワーフと違い、魔力そのものに人と云う属性を付加させた存在である。その為基本的には万能なのである。
木木を司るのであればエルフなどが適任なのであろうが、残念なことにナイルにはエルフの知り合いがいない。その為代行として妖精達が力を揮っているのである。
エルフ程の特出した能力ではないにしても、万能と云われる妖精が二十以上飛び回ればその効果は絶大である。
既に失われたはずの山は、何事もなかったかのように修復されていった。
『ふう、こんなもんじゃろ』
「ありがとうね」
『なあに、こんなもの朝飯前じゃ』
ナイルの周りにはローラを含め四十七の自然種が集まっている。
心は繋がっていても、やはり離れていることは相当に寂しかったようで、その誰しもがナイルの傍を離れようとはしなかった。
そして妖精とドワーフは口々にローラへ不満をぶつけた。
傍についていながら親として恥ずかしい。
きちんとナイルの世話をしているのか。
何故ローラだけがナイルに同行を許されたのか。
ローラが羨ましい。
ローラは暫くその不満を聞き流していたのだが、いい加減うんざりしてくるとナイルが助け船を出した。ナイルの介入に因ってようやく妖精とドワーフ達の憤懣も治まり、山の修復と同じほどの時間をかけて、ナイルに別れを告げて戻っていった。
『ナイルよ、いつでも傍に居るからの。困ったらいつでも云うんじゃぞ』
「うん、みんなありがとう」
最後に戻っていったのはグラドであった。
大地に消えていくグラドの顔は、とても幸せそうな笑顔だった。
アクトリア城の中にある訓練場に、アリウムとアーラがいた。
二人はそれぞれの短剣を握り、向かい合っている。
それをコルヌ達が楽しげに傍観していた。
「なかなかやるじゃないか、あの子」
「あの瞬発力は獣人の中でも相当なもんだねえ」
「ふん、しかし当たらねば意味がない」
「そうですね。うちの姉さんも流石ですよ」
オプリ、コルヌ、ヴィゴーレ、メレナはそれぞれに目の前で行われている訓練を楽しんでいる。
アーラが本来得手としている武器は短剣ではないのだが、現在はアーラがアリウムに合わせて短剣を使用している。
実はアーラは五人の竜人の中で最も扱える武器が多いのである。手に持った物であればどんな物でも武器にしてしまうほどであり、正に武具の申し子と云える竜人であった。
しかしその反動なのか、無手では著しく戦闘能力が低下してしまう。
竜人なのだから元々の身体能力は高いはずなのだが、下手をすれば猿人種の農民にすら負けてしまうかもしれない。それほどまでに弱体化してしまうのだ。
その理由は本人にも分からず、その為彼女は眠る際にも何かしら刃物を懐に忍ばせているのであった。
そんなアーラの正面には、肩で息をするアリウムが立っている。
訓練を始めてどれくらい経ったであろう。昇り始めていた太陽は、既に真上に見えている。随分な時間が経過したことは間違いなかった。
さすがに空腹を感じている為、アーラはそれに因って少々身体をふらふらとさせている。
対するアリウムも随分と身体をふらつかせている。しかしこちらは空腹ではなく疲労からくるものであった。
かなりの時間アリウムはアーラに打ち込み続けているのだが、今までに一度も短剣がアーラのそれにも身体にもふれていない。
こんなにも実力差があるものかと、正直アリウムは自分自身に落胆している。
速くはない。十分に眼で追うことができているはずなのにどうしても当たらない。巧いのだ。
アーラの眼がアリウムに訴えている。そろそろ終わろうと。しかしアリウムとしてはせめて一太刀だけでもと云う思いが強い為、アーラの視線を無視して只管に打ち込んでいく。
相変わらずアリウムの攻撃はアーラには届かない。諦めを見せないアリウムにアーラは少なからず好感を持ち始めている。こう見えてアーラは熱血なところがあり、根性のある人物に好意的なのである。
しかしあまりの空腹で少々苛ついてきたのか、それまで一切手を出さなかったアーラが初めて短剣を揮った。
アリウムの短剣はアーラの一振りに因って弾き飛ばされた。
呆然と短剣の行方を見つめ、地面に突き刺さると同時にアリウムの身体も糸が切れたように崩れ落ちた。
空腹に我慢できず、つい手を出してしまったからか、アーラは少し気まずそうにアリウムに肩を貸した。
「もう食事が用意されてるよ、みんなで食べようじゃないか」
コルヌの言葉にアーラは勢いよく頷くと、アリウムを引きずるようにして食堂へと向かった。
「まったく敵わなかった。惨敗だ」
「なかなかどうして、良い動きをしていたと思うけどねえ」
「そんなことはない。私はナイフの扱いにはそれなりに自信があったんだ。それが掠りもしないとは。未熟さを痛感した」
「筋は良い」
「おお、珍しくアーラが褒めたぞ」
食事をしている六人の内、五人は食事を楽しんでいる。
しかしアリウムだけは自分自身のあまりの不甲斐なさからなのか、なかなか食事が咽を通らなかった。
「僕が思うに、アリウムさんは直接的な動きが多いんじゃないですか?」
「それは違うな、彼女は適度に牽制もしていた」
「うん、そうだね。メレナにはちょっとわからなかったか。実に巧みな牽制だったんだけどねえ」
「読まれてしまっては意味がない」
アリウムはそうぼやくと大きく溜め息をついた。
そしてオプリとコルヌの言葉に、メレナはそうだったのかと腕を組んだ。
実際アリウムがアーラに向けた牽制は非常に優秀なものだったと云える。相手がアーラでなければその卓越された牽制に翻弄されていたことだろう。しかし相手が武具の申し子とも云われるアーラだった為、その効果はまったく発揮することができなかった。事実メレナには全く分からないかったほどに、アーラはアリウムの牽制を無効化していた。
「牽制は上手。でも気持ちが乗ってないからばれる」
「おいおい、どうしたアーラ。随分おしゃべりだな」
「愉しかった」
アーラは相変わらずの無表情であったが、内心はそうでもないようだ。アリウムとの訓練の愉しさと、そして空腹を満たしてくれる食事とが相まって、アーラを普段より饒舌にさせているようであった。
「アーラ殿、頼む。私を鍛えてはもらえないだろうか。ナイルの足手纏いにはなりたくないんだ」
「いいよ。ご飯食べれるなら」
「僕も鍛えてもらいたいです」
「ダメ、根性が足りない」
メレナはそんなあと嘆きながらテーブルに突っ伏した。そんな様子を見て、俺様が鍛えてやるとヴィゴーレが強かにメレナの背中を叩いた。メレナは激痛に背中を反り返らせながら、お願いしますと痛みの混ざった奇声を上げた。
「いやいや、若者は溌剌としていて良いね」
「お前は俺とやるんだよ」
「あらら、オプリも元気だねえ」
コルヌは苦笑いを浮かべながら、逃げられないんだろうなあと心中で呟いた。
「なんとか上手くいったな」
「ああ、旦那も命令は聞かなかったが願いには弱かったからな」
執務室の中では、安堵の表情を見せるフィロスとストレンスの姿があった。椅子に腰かけるフィロスの傍らにはクラノスも控えている。執務室には現在この三人以外は存在しない。
フィロス専属であり執事長であるクラノスが、フィロスの傍らに控えることは当然のことなのだが、本来ストレンスがこの場に同席していることはあまり好ましいことではない。
領主と云う立場はおいそれと個人との関わりを持ち過ぎることを善しとしていない。それは非常に政治的な問題であり、フィロスとしては忌々しいことなのではあるが、国王から領地を預かっているだけの身では、そう云った柵に縛られてしまうことは当然のことである。
フィロスと共にアークネースを管理する役人の中には、当然国王からの使者も多く含まれている。それらは悉く現在の国王と絶対とした考えを根強く持っている為、それらを抱えなければならないフィロスにとっては獅子身中の虫なのである。
そのような輩が少なくない場内において、迂闊なことはできない立場にあるのだが、そこはクラノスと云う策士に因って巧みに隠蔽され揉み消される為、多少のことであれば問題になることはなかった。
そして今回もクラノスの事前の根回しに因って、ストレンスはこの場にいることができるのである。
「今回は自分に非があることをナイル自身が理解しておったからな、余計に受け入れ易かったのであろう」
「そうかもしれねえな。しかしまた無茶な願いをしたもんだ、どれだけ時間がかかるか分からねえぞ」
「そうは云ってもあの山はアクトリアの防衛線のひとつなのだ、あのままと云うわけにはいかん」
「そうだとしてもよ」
「私とてまさかナイルが一人で修復できるとは思っておらんよ」
「当り前だ。いくら人手があっても足りねえくらいだぞ」
「うむ、まああいつの息子のことだ、そこはほれ」
「ああ、取りあえずやりたいようにやらせてみるか」
フィロスとストレンスは、ナイルへの扱いをドラクロアのそれと完全に一致させている。
冒険者をしていた頃のドラクロアは、今のナイル程ではなかったが、かけ離れてもいなかった。
やはり自分は誰にも隷属されず、したいことしかしない男であったドラクロアは、しかしお願いには非常に弱かった。
さすがにどんな願いも聞き叶えてくれるほどの寛大さは持っていなかったのだが、大抵の願いは聞き入れてくれる男だったのだ。
そして引き受けた願いを叶えようと、ドラクロアは必死に動くのである。
しかし結局一人ではどうにもできないこともあり、その手伝いをさせられるのが周囲の人間の常なのであった。
フィロスとストレンスは、ナイルもそれと同等であると考えている。血は繋がっていなくとも、ドラクロアのやり方と云うのは、おそらく身に染みついているのだろう。そう二人は考えていた。
実際ナイルの場合、根本的な部分がドラクロアとは異なっている為、その行動原理はドラクロアのそれとは大きく異なっているのだが、傍から見れば大差はなかった。
今回ナイルが引き受けたフィロスの願いとは、破壊された山の修復である。
勿論フィロスはナイル一人にやらせようなどと考えていたわけではなく、アクトリアに住む職人や、城に仕える兵達を存分に使ってもらって構わないと考えていた。
しかしナイルはそれを断わり、一人でやると云いだしたのである。
さすがにそれは不可能だろうとフィロスは首を横に振ったのだが、関係ない人に手伝ってもらうようなことではない。壊したのは自分だからと頑なに拒絶したのである。
暫く押し問答が続いたのだが、ドラクロアの息子であると云うこともあり、渋々ながらもフィロスはそれを了承したのである。
とは云うものの、いざとなれば総出で修復作業の手伝いさせようとは考えている為、クラノスは既にぬかりなく準備を進めていた。
暫くナイルの好きなようにやられてやれば、そのうちドラクロアのように音を上げるだろうと、その時は考えていた。
しかしこの考えは、容易く打ち壊されることになる。
「厄災はもうそこまで来ている。ナイルにはできるだけ早く諦めてもらわんとな」
「そんなこと云ってんなら、さっさと介入させりゃいいだろうが」
「それはいかん、ナイルは一人でやると云ったのだ。男が決めたことに横槍を入れるようなことはできん」
「この馬鹿が――」
ドラクロアと共に冒険者をしていた時からそうだったのだが、このフィロスと云う男は信頼した相手をとことん信用しようとする性質であった。
もしその相手が何かに挫け助力を求められれば自分が持つ凡てを使ってでも尽力するのであるが、今回のナイルのように一度相手が決めたことを反故にするような行いは、フィロスの考えでは絶対悪なのである。
ドラクロアが願いを聞き入れた時もそうであった。周囲の人間は、さっさと手伝って終わらせようとするのだが、それをフィロスが頑なに拒むのである。
まだ早い、諦めていないではないか。男がやると決めたことに易々と手出し口出しするんじゃない――そうフィロスは吼えるのである。
今回もそれを同様である。
そしてストレンスは今回も苦労させられると覚悟した。
「ストレンス様、おかわりは如何でしょうか」
「ああ、濃いのを頼む」
「畏まりました」
クラノスはそんなストレンスの心情を適切に読み取り、労りの紅茶を注いだ。
ストレンスは如何にも不味そうに顔を顰め乍ら、それを一気に流し込み胸中の不安と共に限界まで息を吐いた。
そんなストレンスの仕草を、クラノスは少し同情の籠った眼差しで見つめていた。
「おい、クラノス。お前も他人事じゃねえんだからな」
「はい、重々承知しております」
クラノスはそう云って、もう諦めておりますと頭を下げた。
そしてフィロスはそんなことは気にも留めず、優雅に紅茶を愉しんでいた。
今こうしてフィロスが紅茶を愉しんでいるが、昨晩は酷かった。
寝室へ戻り着替えを済ませ、領主としての自分から解放された瞬間、フィロスは崩れ落ちた。領主としての自分を演じていたからこそ、今まで耐えることができたのだ。
ドラクロアと云うフィロスにとってかけがえのない恩人を失ってしまったと云う、その絶望を。
そしてフィロスは枕に顔を埋め、まるで子供のように噎び泣いたのである。
枯れ果ててもおかしくない程に泣き、そしてそのまま眠りについた。
部屋の外に僅かに漏れ出たその嘆きを聞いたクラノスは、一瞬職務を忘れて一筋涙を零した、あらかじめ今夜だけは衛兵を外してある。思う存分泣いてもらいたかった。
部屋の中が静かになるまで、クラノスは只管その場に立ちつくし、少しでもフィロスの絶望を共感しようと努めた。
そして泣き声が止むと、クラノスは静かにその場を離れ衛兵を呼んだ。
今夜はせめて、楽しかった頃の夢を見てほしいと、心から願ってクラノスも眠りについた。
少しだけ隈の残る目を擦りながら、フィロスは紅茶を愉しむ。
そしてドアを叩く音が響いた。
「誰も通すなと申し付けたはずだが」
「おかしいですね。開けますか?」
「無能な役人じゃねえだろうな」
「それはありません。予め根回しはしております」
「そりゃたいしたもんだ」
クラノスは一度頭を下げると慎重に扉を開いた。
そこにはナイルが爽やかな笑顔を見せて佇んでいた。
「これはナイル様如何なさいましたか」
「終わったから、伝えに」
「終わった――と申しますと?」
「山直したから、その報告」
その声は当然執務室の全員に伝わった。
誰しもが一瞬思考を停止させたのだが、さすがと云ったところか、クラノスは即座に反応した。
「あの山の修復が、もう終わったのでございますか?」
「うん、終わった」
「まて、まてまて。まだ昼だぞ、お前が山に向かったのは朝だろうが。終わるわけねえ」
「終わったもの」
フィロスは漸く回復して、慌てて椅子から立ち上がり窓の外へ視線を向けた。
欠けてしまったことが夢だったかのように、美しい山脈がそこにはあった。
「――どう云うことだ」
「だから終わったんだってば」
「旦那様、確認に向かわせますか?」
「いや、必要ない。間違いなく元通りになっておる」
仮令離れていても、それは誰しもが分かることだった。
「ナイル、一体どうやったんだ。一人で直したのか?」
「一人で一回試したんだけど、暴走しそうになっちゃったからみんなで直したんだ」
「暴走? みんなとは誰のことだ、どうやって直したのだ」
『落ち着きのない男ね』
周章してナイルに詰め寄るフィロスに辛辣な言葉が突き刺さる。しかしそれに因ってフィロスの頭は少しだけ冷やされた。
「いや、すまぬ。とても信じられんでな」
「土の魔法で直そうとしたんだけど、僕って細かい操作が苦手なんだ。だからちょっと山が爆発しそうになっちゃって、それでみんなを呼んだんだよ」
「ふむ、爆発と云うのは聞き捨てならんが、今は置いておくとして。しかし聞きたいことは山ほどあるのだが――まず、ナイルは土属性の恩恵を授かっておるのか?」
「うん、土も持ってるよ」
「土も――ッてことは他にも持ってんのか? ふたつか、まさかみっつってことはねえだろう」
「僕は凡ての属性の恩恵を持ってるから、どれも使えるよ」
今度こそ三人の思考は完全に停止してしまった。
目の前に佇む青年の発言の衝撃があまりにも大き過ぎたのである。
「お腹空いた」
『そうね、もうお昼だものね』
ナイルの腹が鳴ると同時に全員が覚醒し、慌ただしく部屋の中を動き出した。
クラノスは即座に部屋の施錠を始め、外部へ声が漏れないことを執拗に確認している。
フィロスとストレンスはしっかりとナイルを捕まえ、ナイルを挟むようにしてソファーに拘束した。
「おい、どうするよ」
「どうするもこうするもあるまい、この件は絶対に外に漏らしてはならん」
「人影はありません、誰かに聞かれた心配はないかと思われます」
「うむ。皆分かっておるな。この件に関しては何があっても沈黙するのだ」
ナイルは自らを囲んで周章している三人を呆然と見つめて、一言だけ漏らした。
「――お腹空いた」
駄文乱文失礼しました。
誤字脱字は見つけ次第訂正いたします。
過去分の投稿に軒並修正を加えました。
時間が足りなかったため不完全です。
少しずつ直そうと思っています。
修正しても話自体に変更はありません。
不快な思いをさせてしまいましたら、申し訳ないです。
次回投稿は、7/15-7/17の何れかを予定しています。




