先輩(♀)と後輩(♂) 「しりとり縛り」とか鬼畜すぎる!!
シリーズ四話目
先輩(♀)と後輩(♂)が送る日常会話。
会話文でしりとりです。
あらすじ:さてさて、時間も遅いし、今日の部活動は終了だ。先輩(♀)と二人きり。そんなとき後輩(♂)は……。
「おや、やっと気づいたかい?」
先輩が僕に声をかける。
「いま何時です?」
きょろきょろと周りを見渡すが他の部員が誰もいない。
「すこし待ってくれ……六時三十分だな」
先輩がポケットから携帯を取り出し時間を確認する。
「なんでそんな時間に……」
外を見ると、太陽は傾き夕焼けが窓辺から差し込んでいる。
「に(二)、三度声をかけたんだがね」
先輩が呟く。
「ねてました?」
「たぶん寝ていたじゃなく、意識が飛んでいたといった方が正しいな」
「なんで意識が」
あれー何でだろう? 意識が飛ぶ前のことを思い出そうとしていると、先輩が残念そうに口を開いた
「がっかりだよ。私とキスしたことを忘れるなんて。嫌だったのかい?」
「い、いえ! そんなことないですよ! ちょっと僕には刺激が強すぎて忘れてしまっただけで」
「では、今度は忘れないでくれるかい?」
座ってる僕に対して、先輩は屈んで顔を近づける。
「いやいや! ちょっと先輩! 急すぎますよ! また意識飛びますよ!」
「よくもまぁそんな大声で」
「でも、実際そうですし」
「しかたがない、今日はもう帰ろうか」
フッと笑って、あっさりと引き下がる先輩。キスする気なかったんですね、先輩。ちょっと残念です。
「かえりましょうか」
部室の隅に置いてある自分の鞄を取り、帰る準備をする
「かぎを締めるから先に出ていてくれないか」
部室の鍵は二つある。一つは三年生の部長、そしてもう一つは二年生の副部長である先輩が持っている。
特にする事がないので、僕は鞄をかついで廊下に出る。窓から夕陽によって照らされた校舎を眺めながら、今日のことを考える。
「かれし(彼氏)……になったんだよな」
今日一日で色々なことがあったな。先輩に告白されて、膝枕されて、キ、キスされて。……されてばっかりだな。
「なにぼうっとしてるんだい?」
先輩がガチャリと鍵を締め、振り返る。
「いまの状況が信じられないなーと考えてました」
「たしかにね。私も後輩くんと付き合えるなんて思ってなかったよ」
そう言いながら、先輩は校舎の出口に向かって歩きだし、僕は右隣について歩く。
「よそう(予想)を遥かに超えてましたね、今日の先輩の言動は」
「はじめは告白されるのを待っていたんだがね、後輩くんが私の好意に気付かないのが悪いんだよ」
「よっぽど鈍感なんですね、僕」
気付かなかった僕はバカだなと思う。
「くしょう(苦笑)するしかなかったよ。私の好意に後輩くんは気づかず、この思いは届かないんだなって」
そう言って先輩は、その時のことを思い出したのか、悲しそうな顔をした。いつもの先輩らしくない。いつもの先輩はキリッとしていて凛としていて、つまりこんな悲しい顔は似合わない。いつもの先輩にするにはどうしたらいい? わからない。でも、何かしないと。僕は意を決して口を開いた。
「て」
「て?」
突然の僕の発言に、先輩は立ち止まり首をかしげる。
「て(手)を出してください」
「いきなりどうしたんだい?」
先輩の言うことはもっともだ。急に手を出せと言われれば、誰でも疑問を持つだろう。しかし、そんな先輩の疑問を無視して、僕は手を出してもらうように促す。
「いいですから」
僕は左手を出し、先輩は右手を出した。僕はその手を優しく握る。いつも消極的な僕が手をつないだことが予想外だったのか、先輩は目を丸くしていた。
僕より一回り小さい先輩の手の温もりが感じられる。
このまま立ち止っているわけにもいかず、僕は再び歩き始め、先輩もそれにつられて歩き出す。しばらく二人とも無言だったが、先輩がフフッと笑い出した。
「らしくないね、後輩くん」
ええ、おかげで顔が真っ赤ですよ。
自分ってドM? 執筆中そんなことを思いながら、会話文でしりとりという鬼畜縛りな小説を書き上げました。
話の流れが急かもしれませんが、この小説を楽しんでいただけたら幸いです。
前回のシリーズ「先輩(♀)と後輩(♂)」では会話の冒頭が「あいうえお(五十音順)」縛り。そして今度は、「しりとり」縛り……はい、死ねます。もうこの一回で十分だと感じました。縛りはもう充分です。しりとり縛りを書こうと思った「那音(旧名:すとむみずみ)」さんマジ リスペクトです(「私とかずくんとプラスアルファ」シリーズの「しりとり」)。
今回の目標は、後輩くんが先輩と手をつなぐことでした。それが出来たので良しとします。
■文章について
会話文の冒頭はひらがなにしています。ひらがなで読みにくかったり、意味が分かりにくそうなものは()カッコで漢字を入れています。誤字ではありませんのであしからず(例:「くしょうするしかなかったよ」→「くしょう(苦笑)するしかなかったよ」)。
誤字脱字やおかしな表現があればご報告お願いします。
感想待ってます。