転生王子の人生は爆発だ!
「混ぜるな自然」タグを使ってみたかった。
宰相の息子、セルジェス・ブルーメ伯爵令息の言うことには。
「私はあの時、殿下に救われたのです。卑怯者、惰弱だと誹られてもおかしくありませんでした。ですが、殿下は「最善手だ」と褒めてくださったのです。卑怯ではなく冷静、惰弱ではなく慎重なのだと。私の判断が正しかったのだと、殿下が認めてくださったのです」
青い瞳を感激に輝かせ、セルジェスは言った。
「ヴィクトール殿下こそ、我が主。殿下が判断を誤らぬよう道を照らすことが私の使命なのです」
辺境伯の末子、フォース・ジュヴェール辺境伯令息の言うことには。
「……恥ずかしことに、私は怖がりで、泣き虫なのです。辺境を守護し国を守護する家門の男子としてあるまじきことです。あの時も、私は泣いていることしかできませんでした。武の家門の意地で、かろうじて立つことはできましたが……それだけです。ですが殿下は……殿下だけは、「勇気がある」とおっしゃってくれました。怖がっても良い。泣いても良い。何が起きているのか、自分の足で立って見ようとする。それこそ勇気だと……」
緑の瞳を思い出に潤ませ、フォースは言った。
「あの日から、私の忠誠は殿下に捧げています。殿下のために盾となり立つことが、私の使命です」
ブランジョーヌ公爵家嫡男、シャーリー・ブランジョーヌ公爵令息の言うことには。
「あの日のことは忘れられないよ。あんなに大きな声で叫んだのははじめてだったから。でも、叫ぶたびになんだか気持ちが軽くなって、最後は楽しくなっちゃった! 殿下が教えてくれたのはそういうこと。どんなに大変で予想外のことが起きても、やってみなくちゃはじまらないってね。どうせなら楽しんだ者勝ちだよね!」
黄色い瞳を楽しげにきらめかせ、シャーリーは言った。
「殿下に付いていくのはそれで充分でしょ。殿下と共にみんなを幸せにする。それが僕の使命さ」
ブランジョーヌ公爵令嬢、リーゼロッテ・ブランジョーヌ公爵令嬢の言うことには。
「あの時は、ただただ必死だったことしか覚えておりませんの。殿下が企画した催しがあるとは聞いておりましたが、あのような刺激的な……弟と共に声を出すだけでしたわ」
リーゼロッテはプラチナブロンドの髪をさらりと揺らし、頬を染めた。
「必要な時に必要な言葉を言える。そのような女性にこそ隣にいてほしい。殿下の御心をいただいた時から、わたくしの愛は殿下ただお一人のもの。つ、妻として、生涯隣にいることが、わたくしの使命ですわ」
エクスプロクシス王国第一王子、ヴィクトール王太子が言うことには。
「魔法とか魔族とか実にファンタジーな世界に生まれ変わって絶望した。俺の愛する夢と希望は、この世界にはなかったんだ」
深紅の髪を震わせて、ヴィクトールは言った。
「ないなら作ればいい、生み出せばいい。あの日やったことは、まだ小手調べ……だが、想像以上に良い人材に恵まれたよ」
ヴィクトールは『日本』という国で生まれて死んだ記憶がある。いわゆる転生者だった。
そして、オタクだった。
好きすぎてのめりこみ、のめりこんだあげく極めてしまう。そんな限界オタクだった。
そんな彼が、転生したからといってその情熱を忘れるだろうか――否、である。
「勇者レッド!」
「賢者ブルー!」
「騎士グリーン!」
「僧侶イエロー!」
「聖女パール!」
バアァァァァァン!!
「レジェンド戦隊アドレンジャー!!」
ヴィクトールの前世は、特撮戦隊ヒーローに人生を捧げた限界オタクだった。
第一王子ヴィクトールが自身の十歳の誕生日。側近と婚約者を選ぶお茶会で催した余興こそ、戦隊ヒーローショーだった。僕と握手するやつである。
ちなみに各名乗り後の『バアァァァァァン!!』は五人の背後が爆発した音だ。火薬の代わりに魔法を使用した、ヴィクトール渾身の演出である。
名門貴族の当主夫妻とその子どもたちを集めた茶会。もちろん周囲は止めた。全力で止めた。
レジェンド戦隊の敵は、悪の秘密結社『エネミデンス』という。世界中のお菓子を狙う、でかいのかしょぼいのかよくわからない野望を抱く組織だ。
これは一応ヴィクトールなりの配慮である。初の戦隊ヒーローでいきなり世界平和の危機とかついていけないと思ったのだ。
覆面マスクをして(全身タイツは残念ながら却下された。全会一致だった)、「スイーッ」「イーツ!」と奇声あげつつお菓子を強奪するだけとはいえ、混乱は必至だ。泣かせてしまうかもしれないし、怪我をするかもしれない。ヴィクトール本人が「責任はとる」と言おうとも、彼もまだ子ども。監督責任を負うのは彼の教育に関わった大人たちで、王子の親である王と王妃もまたそこに含まれる。
猛反対の末結局認められたのは、「あ、コイツ放っといたら勝手にやるだろうな」と反対した全員が思ったからである。それくらいヴィクトールの戦隊愛は異常だった。
それに「危機的状況のほうが本性が出る」という彼の主張も一理ある。時にはわざと相手を怒らせて本音を引き出すのも交渉術のひとつだ。
さらにヴィクトールから協力を要請された近衛騎士団がその気になってしまったのも大きい。防衛だけではなく、敵方も務めることで、王宮の抜け穴や動線などを確認できる。訓練だとすれば良いだろう。
そんなわけで王宮の花咲き誇る庭園で開催された戦隊ヒーローショーは、一部の大人たちの胃を痛めつつ大成功を収めた。
突如現れた覆面マスクの怪人と戦闘員に、一部パニックに陥ったものの、第一王子ヴィクトールが颯爽と立ち上がり、
「でたな、世界中のお菓子を狙う悪の秘密結社エネミデンス!」
何者なのかの説明をしつつこれが余興だと宣言。
「皆の者、恐れるな! 我らには彼がいる! そう、レジェンド戦隊アドレンジャーが! さあ、みんな、アドレンジャーを呼ぶぞ!!」
ノリノリであった。
わけがわからずぽかんとする皆の者に「声がちいさい!」と檄を飛ばし、率先して「アドレンジャー!!」と叫んだ。
ぽつぽつと「アドレンジャー?」「アドレンジャー」「アドレンジャー!」と声が上がり、やがてひとつになる。その間エネミデンスの戦闘員たちは、さりげなく怪我人が出ないよう慎重に、この機に乗じて不審な行動を起こす者がいないか目を光らせ、乱暴にならないように、しかしどうしても見た目の怖さで泣き出してしまう子どもたちに小声で謝罪しつつ、お菓子を強奪していった。
なお、実際にこの余興で、庭園の生け垣に抜け穴が一か所、令嬢を誘拐しようとした者が三人見つかった。
生け垣の穴は国王が飼っている犬一家が土掘りをして開けてしまったもので、穴の先は使用人エリアに通じていた。犯行が当日の朝であったこと、目立たない場所であったことから鉢植えで隠すのみの応急処置がされていたのだ。
侵入者が入ってくるのは無理そうだが、冒険心溢れた子どもなら潜り抜けてしまいそう。それくらいの穴だった。庭師は泣いたし犬は叱られた。
一方の誘拐は計画的ではないが、前々から狙っていてチャンスだと思ったらしい。命や金銭目的ではなく、攫って閉じ込めたところで助け出し、令嬢の家に恩を着せて婚約を結ぶのが目的だった。王宮で令嬢が攫われたとなれば王家が責任を追及される。ついでに王家にも恩が売れると皮算用したようだ。
犯人は令息が連れていた使用人三名。未遂ではあるが王宮での狼藉、また現行犯で近衛(見た目は覆面マスクの怪人)に取り押さえられたため、厳しい処分がその家に下った。もちろん令嬢との婚約など泡と消え、賠償に追われることになった。
そして待ちに待ったアドレンジャーの登場である。レッドを中心とした決めポーズに爆発音、エフェクトを魔法で振りまいて、子どもたちの興奮は最高潮に至った。
見事な立ち回りで怪人どもをばったばったと倒していくアドレンジャーに子どもたち、特にヴィクトールは絶好調。泣いている子を励まし、宥め、一か所に集めて掛け声のやり方まで指導していた。
途中で戦闘員たちのボスである怪人がメイドを人質にとるピンチが訪れたが、これぞお約束。ここが一番とヴィクトールが子どもたちに声援を送るよう呼び掛けた。
「アドレンジャーの力の源は、愛と勇気!」
パンのマーチみたいな設定である。
「我々の応援こそが彼らの力だ!!」
普段お行儀のよい子どもたちの「がんばってー!!」により、無事怪人は倒され、メイドは救出された。
ラストの『僕と握手!』まできっちりやりきって、余興は大成功に終わった。そして第一王子ヴィクトールは子どもたちから絶大な人気を得た。
颯爽とリーダーシップを発揮してアドレンジャーを呼び、自分たちをまとめて勝利を呼び込んだ。ヒーローショーの感激がそのままヴィクトールへの人気に繋がったのだ。
また抜け穴はハプニングだったが犯罪を未然に防いだこと。余興がなければあんなことはしなかったのでは? という意見は、余興がなければより計画的になり、成功していたかもしれないと反論され封じられた。結果的に令嬢は助かったのだ。
本来の目的である、側近と婚約者選びも無事に決定した。
宰相の息子であるセルジェス・ブルーメ伯爵令息。
ジュヴェール辺境伯家のフォース・ジュヴェール辺境伯令息。
ブランジョーヌ公爵家のシャーリー・ブランジョーヌ公爵令息。
同じくブランジョーヌ公爵家のリーゼロッテ・ブランジョーヌ公爵令嬢。
蓋を開けてみれば順当なところに落ち着いた。ただしヴィクトールは選ばれなかった子どもたちにも声をかけ、何が良かったのか、どこが悪かったのか、自分の言葉できちんと説明している。自分が赤毛だから青・緑・黄色、ピンクはどうしても見つからなかったので白の五人だということは内心にそっと秘めた。
あの状況でも周囲を見ていたヴィクトールに、大人たちも黙らざるを得なかった。いかに企画・制作ヴィクトールとはいえ十歳の子どもがそれを成した。驚嘆すべき観察眼である。この王子なら国王にふさわしい。混乱も極まると冷静を通り越して達観するらしい。お茶会に集まったすべての貴族の支持を得て、ヴィクトールは王太子となった。
そして戦隊ヒーローが公になった。
ヴィクトールは感無量である。
『レジェンド戦隊アドレンジャー』はその後舞台化し、より凝った演出、シナリオをヴィクトールがプロデュースした。
ついでに子ども向けの変身グッズを売り出したところ、爆発的大ヒット。おかげでヴィクトールの個人資産もウハウハである。
「ほんとうは身体強化機能も付けたかったのだが、賊がヒーローに変身して犯罪に及ぶ可能性を示唆されて断念した」
「それは仕方がありませんわ」
「そうですよ。我らのヒーローが悪になど、断じて許せません」
「悪心を持つ者はヒーローではなく怪人に変身してしまう機能があれば良かったのですが……」
「魔法士長にも無理って言われたんだよね」
レッドは腕時計型、ブルーは杖、グリーンはベルト、イエローはピンブローチ、ホワイトは手鏡と、それぞれ変身に使うアイテムは違う。
子どもたちがアドレンジャーになりきって悪人退治に励むため、下町の犯罪率が減ったらしい。思いがけない効果だ。
舞台『レジェンド戦隊アドレンジャー』は一話完結の続き物で、新しい怪人が出てくるため五年が経った現在も人気は衰えを見せない。毎回同じパターンの勧善懲悪。時代劇みたいなものだとヴィクトールは思っている。
「……いやそうじゃなくて!?」
「なぜ戦隊ヒーローをやっているのか、聞いたのは君だろう」
「そうだけど、そうじゃなくて!」
ピンクの髪を振り乱して叫ぶ少女に、ヴィクトールは真剣に応じたに過ぎない。
彼女はエラ・ローズ男爵令嬢。王国随一といわれるクルーベル高等魔法学園の、使用人である。
私立クルーベル高等魔法学園は、主に貴族が通う、魔法に特化した学園だ。主に貴族、となるのはそもそも魔法技術の試験に合格しなければならないからで、専門家を招いて授業を受けられる貴族と、公立学校で一般教養として魔法を学ぶ平民とでは、格差があるのは当然だった。
さらには私立なので入学金をはじめとする学費がお高い。奨学金制度はなく、限られた者にのみ開かれる、狭き門なのだ。
差別ではないかと一部批判もあるが、これでも緩和したのだ。以前は本当に、貴族の限られた者しか入学できなかった。
授業の質と警備の問題もあり、現在の形で落ち着いた。
そしてエラ・ローズは試験と入学金、どちらもクリアできなかったため、使用人として学園に通っている。生徒として通えないならせめて使用人として、と考える者はけっこういるのだ。むろん、王国や貴族に害するものは使用人としても選ばれることはない。純粋に魔法を愛する使用人は学園生の従者やメイドになって教科書を見せてもらえたり、学園図書館へのお供として本を読む機会に恵まれたりする。これも緩和措置の一環だ。
ただし、エラは違う。彼女は別に、勉強熱心なわけではなかった。
「なんで乙女ゲームの攻略対象が戦隊ヒーローやってるのか聞いてんのよっ!」
エラは転生者だった。
ピンクの髪と可愛い顔、男爵令嬢という立場に、これは乙女ゲームのヒロイン転生! と思い込むタイプの転生者だった。
どの乙女ゲームかはわからないけど間違いない。調べてみれば同年代に王子様も宰相の息子も辺境伯令息も、公爵令嬢とその弟もいるんだもの。公爵令嬢が王子様の婚約者ってことは悪役令嬢確定。エラは学園入学を楽しみにしていた。
なのに試験で落ちた。
学費は合格したら借金してでも払うと両親は約束してくれた。
でも試験で落ちた。
両親はエラが真面目に勉強しているところを見たことがなかったので、やっぱりな、と胸を撫で下ろしていたのだが、エラは信じられなかった。ヒロインがゲームの舞台にすら立てないってなによそれ!? イケメンたちと恋愛しつつ悪役令嬢と戦って、最後はざまぁのハッピーエンドになるんじゃないの!?
試験に落ちた以上はどうしようもない。
どうしても学園に行きたい。行かなければならない。エラの執念というか執着というかな訴えに、両親は使用人という道もあると教えた。採用試験は面接のみだ。
本当に勉強したいのなら学園使用人は励みになるだろうし、働いて身を立てるならそれも良し。もしかしたら良い出会いがあって、結婚できるかもしれない。
まさか王子様筆頭に高位貴族の令息を狙っているなどと、夢にも思っていなかった。
両親はエラに過度な期待は抱いていなかった。男爵家はエラの兄が継ぐ。娘が幸福になれるならそれで良い、平凡な夫婦であった。
「乙女……ゲームとは何だ?」
なんでなんでとエラが聞くから答えたのに、話を聞いていないのか怒鳴りつけられてヴィクトールはちょっと不機嫌になる。
「乙女ゲームは乙女ゲームよ! イケメン攻略してハッピーエンドのはずなのに……!」
まさか両親も、思ってたのと違う、なんて理由で娘が第一王子にして王太子に食ってかかるとは予想外だろう。不敬罪で投獄からの処刑コースでもおかしくない所業だ。
ヴィクトールへの狼藉に、護衛騎士がエラを切り捨てようと動いた。彼らもまたアドレンジャーの大ファンなのである。
「待て」
止めたのは、どうやら同郷の転生者だと察したからだ。
前世のヴィクトールは乙女ゲームを知らない。興味がなかった。
「……なるほど、そういうことか」
考えて考えて考えて、ヴィクトールはひらめいた。
彼の側近と婚約者は、敬愛するヴィクトールにいちゃもんつけてきたエラを、射殺さんばかりに睨んでいる。他ならぬヴィクトールが護衛を止めたから我慢しているが、良しの合図が出たら男爵家ごと潰そう。男爵家存亡の危機である。
「! わかってくれましたか!」
「ああ」
ヴィクトールがうなずいた。乙女ゲーム。イケメン。攻略。
「つまり今のアドレンジャーには悪の女幹部……お色気キャラが必要だということだな!」
「……は?」
確信を持って言い切った。
「悪の女幹部がアドレンジャーにハニートラップを仕掛け、彼らの仲がギスギスしてしまう。しかし! 戦いの中、彼らは思い出す。自分たちの友情と、信頼を! そういう胸熱展開だ!!」
「……え?」
「ヒーローの素顔がイケメンなのはもはや当たり前。子どもだけではなく世のお母さん方までキャーキャー言っていたものだ。女幹部は他の幹部たちとゲーム、つまり賭けをしていた。アドレンジャーを落とせるか否か。だが彼女は女……真剣な愛に触れたことで乙女心が蘇ってしまう。アドレンジャーに敗れたことでエネミデンスを追放された彼女は、一人の女として……」
うんうんとうなずきながらつらつらと展開を語っていたヴィクトールは、
「おっと、これ以上はネタバレになってしまうな」
いいところで打ち切った。ネタバレは厳禁なのである。
「そんなっ、ヴィクトール様、もう少しだけっ!」
リーゼロッテが涙ぐみながら懇願する。恋する乙女である彼女は、すっかり女幹部に感情移入していた。
「すまない、リーゼロッテ……。続きは劇場で!」
絶望と期待の歓声が上がる中、ヴィクトールはエラの手を熱く握り、「君のヒーロー愛、たしかに受け取った」とファンへの感謝を捧げた。
「そこで君を、『学園戦隊セートカイジャー』の七人目、参謀ピンクに任命する!!」
「セートカイジャー!? 七人目!? 参謀ピンク!?」
ヴィクトールはどこからともなく取り出した宝石箱を、そっとエラの手に乗せた。
「これ……」
嫌な予感がする。
「変身アイテムだ。学園職員が使用しやすいよう、パスケースにした」
「用意がよすぎない!? たしかに職員用通用門って職員カードで通るけどっ! ってか六人目は誰なのよ!?」
「六人目は先見ブラック。学園長だ!」
「学園長―――!!」
ツッコミが追い付かない。エラは叫んだ。
「我々が在学するのは卒業までの二年間だからな、次のセートカイジャーのために、教職員が何人か欲しいと思っていたんだ」
「待って新シリーズ考えてる!?」
「ブラックの選抜決戦は熱かったですわね」
「学園長が立候補して決まりかと思いきやクラス担任、実技担任、生徒指導、果ては保険医まで名乗りを上げましたからね」
「生徒が負傷した時のために、というマダム・メアリー対監督がいたほうが良いという学園長エイブラハム・ネロの技と主張が激突……最高すぎて泣きました」
「また学園長、ブラックの衣装が似合うんだよねぇ」
エマは崩れ落ちた。乙女ゲームの世界が戦隊モノに急カーブしている。
余談だが、先見ブラックの先見は、「先生は見てますよ」の略だ。
「あたしがなりたかったのはヒロインで、ヒーローじゃなーい!」
「女性のヒーローなのだからヒロインで間違いない。ちょうどピンクが空いていたところだ」
まるでエマがはじめからピンクになりたかったみたいな雰囲気にされている。
「君も転生者なんだろう? この世界のカラーリング、まさに戦隊ヒーローだよな!」
「乙女ゲームだっつってんのよ!!」
乙女ゲームの推しカラーと戦隊ヒーローのカラー。想像だにしなかった共通点だ。
悪役令嬢が断罪から逃れるために原作崩壊させる展開はエラも知っているが、まさかジャンルを変えてくるとは思わなかった。
もはやツッコミ疲れてパスケースで決めポーズとるしかないエマに、周囲はピンク誕生だと盛大な拍手を送った。
なお、セートカイジャーの敵は『フリョーヤネン』という。生徒たちを非行に走らせようと企む、悪の秘密結社だ。たまに婚約者を冷遇したり、正統な後継者をドアマットにする義姉義妹などが現れて、セートカイジャーに成敗されている。
『学園戦隊セートカイジャー』
会長レッド:ヴィクトール
書記ブルー:セルジェス
会計グリーン:フォース
総務イエロー:シャリ―
副会長パール:リーゼロッテ
副会長はホワイトの予定だったがアドレンジャーのファンであるリーゼロッテが「パールで!パールでお願いしますわ!」と懇願した経緯がある。
なんとなくこのメンバーだと金と権力で解決する探偵団っぽくなりそう。
アドレンジャーの名前はアドベンチャーをもじったもの。
あと一応この世界は乙女ゲームの世界で、ヒロインと攻略対象が戦う悪の組織があったりします。しかし「お菓子狙ってんのか」と裏ギルドや勧誘しようとしてた相手に笑われたため、規模縮小からの解散の憂き目にあった。勧誘した相手に「怪人になるのは……ちょっと……」とか半笑いで言われたらやってやれないよね。




