背の高い悪魔
ふと目が覚めると、事務所のソファの上だった。
「あれ、私…」
「あ、起きたか」
近くには社長がコーヒーを飲んでいた。
「社長…もしかして私を運んで、治療をしてくれたのですか?」
私は状況の把握をするため、そう質問した。
「いや、後ろの悪魔くんさ」
バッと振り返ると、背の高く目元が見えない前髪…、
「さっきのやつ!」
「キリカ、キリカ!」
そいつは突然私を抱きしめた。赤の他人である私にだ。
「は、離せぇ…!」
私はジタバタと抵抗するが、
「おいおい、命の恩人に対して恩を仇で返すか。確かに誘導したのは私だが、ボロボロだった傷の治療やここまで運んだのはそいつだ」
「はぁ!?」
私は見知らぬ人に助けられたというのか!?
「それに、手のひら見てみ?」
私は手を見ると、右手の手のひらに紋章が刻まれていた。思い出した!確かその紋章の意味は…、
「君、その悪魔と契約してるんだよ」
既に…契約、済み…?
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
そして…あれから数日後、
「キリカ、キリカ!」
背の高い大人の姿をしたその悪魔は…まるで子供のようで、私に懐いている。
新聞を読んでいた社長はそんな私の様子を見て、
「あんた使役するの上手いのね」
「違います!コイツが勝手に近寄るんです!」
私は何もしてないのに、ギューっと抱き締められる…悪魔は怪力なのか、意外と苦しい。
「しかし…見ず知らずの私に何故懐くのでしょうか?」
社長は新聞を閉じて、
「それは、彼に聞けばいいんじゃない?」
この悪魔に…?私は仕方なく質問する。
「あなたは何者なの?あなたは何故私と契約したの?」
どうしても気になっていたことを彼に話してみるが、きっとこたえてくれないのだろう…、
「なまえ…シロ!シロは、キリカを守る、約束!」
…しゃ、喋ったぁぁぁ!?でも彼の言う「約束」とはどういう…。
「…キリカ、時間」
社長はそう言って、15時45分の時計を指さした。
「あ!今日の依頼があるんだった!」
私は四角い形をした大きなリュックを背負って、一人慌てて事務所を飛び出した。
15分後…街から少し離れた小さな工房に私はある物を受け取っていた。
「今日はこれを第三市街まで頼むよ」
受け取った荷物には『取り扱い注意』と書かれており、箱そのものは小さめにしては少し重かった。
「お荷物を承りました」
「おう!頼んだぜ!」
依頼人から受け取った後、荷物を背負っていた大きな収納リュックに入れて目的地へ出発した。
街まで少し距離はあるが…仕事だから仕方ない。すると、
「キリカ!」
背後からシロが現れた。
「うわぁぁぁ!」
驚きのあまりにバランスを崩し、危うく地面に荷物をぶつけるところだった…。
「なんでここにいるの!?」
シロはさっきまで事務所にいたはずなのに…、
「キリカと一緒!契約したから、一緒!」
そういえば、シロと契約していたのを忘れていた。
悪魔の契約は本来、3つの条件を満たせないといけない。
1つ目は契約者自身の『血液』…血液の場合は契約する悪魔によって量も変わることもある、2つ目は『願い』で内容によっては意外と重要なことらしい、そして3つ目は『器』…つまり生贄だ。
…考えてはみたが、『血液』は数日前の襲撃で吸い取られたと推測したとして、『願い』と『器』は一体…。
「キリカ…大丈夫?」
シロは心配そうに、私を見つめていた。
「大丈夫、これからこの荷物を運ぶから…」
けど結構重いな…。すると、
「運ぶ!運ぶ!」
シロは突然そう言い出した。もしかして…、
「手伝ってくれるの?」
「手伝う、キリカのため!」
シロは重たい荷物を片手で軽々と持ち上げた。
「すげぇ…」
…とりあえず、私達は目的地へ向かうのだった。
「ありがとうございます。これ報酬です」
無事に荷物を送り届けた私達は、報酬として代金を頂いていた。
「ところで…隣の方は?」
しまった!シロを表に出してしまった…。焦っていた私を見るとシロは、
「新入りです!」
…普通に喋った。
「…なんだ、新入りか!それにしては身長高いなぁ」
「ありがとうございます」
なんか普通成人男性みたいな喋り方で会話している!?さっきのは一体…?
まぁ色々あったけど…ひとまず、仕事を終えた私達は事務所へ戻ることにした。
「…こちらD3、例の荷物を受け取り完了。後少々報告が………」
そういえば、小さい割に重たかったあの箱の中身はなんだったのだろうか…?




