運び屋の少女
今作は「第14回ネット小説大賞」こと【ネトコン14】の応募作品です。
第1話〜第8話までは毎週金曜日午前10時に更新予定ですので、最後まで是非読んでみてください!
20xx年、星が見えない夜をネオンで照らす大都市。そこに暮らす人々はおしゃれで大富豪なやつもいれば、普通に道を歩く凡人もいる。そんな影ではボロボロで貧しく生きる者もいる。
そして私達は、この先どうすれば良いのかすらわからない未熟なままだ。
都市の暗い路地裏のとあるマンホールの底には、アジトのような事務所がある。
「社長、本日の運送を完了しました」
白い短髪で小柄なその少女は自らが「社長」と呼ぶ女の人に報告した。
「ご苦労さん。明日は11時から第五市街からの依頼を頼むよ」
社長がそう言うと、少女はお辞儀してから事務所を去った。
その後少女が自販機の前に立つと、ピンク髪ツインテールの女の子がやってきた。
「おつかれ、キリカ」
白い短髪で小柄な少女…それが私「キリカ」だ。
そしてツインテールの女の子は、
「お疲れ様です、Ajisai_chan。今学校が終わったところですか?」
「…学生ですから」
私は自販機にコインを入れた。
「未成年なのに学校に行かないアンタとは違って、アタシは『勉強』というもので忙しいんで」
Ajisai_chanはそう言って、不満げに腕を組む。
「…そうですか」
私は自販機のボタンを一つ押して、『ZEPAMU』と書かれた缶コーラを買った。
「アンタさ…なんで学校に行かないの?この世界の常識を学ぶ義務でもあるのよ?」
Ajisai_chanはしつこく私にそう問い詰めるが、
「…知らなくていいことです」
私はコーラ片手にその場から立ち去った。
「あ!逃げんなし!!!」
背後からAjisai_chanのそんな叫びが聞こえた。
そして数分後、私が住む寮の玄関前から景色を眺めていた。深夜2時半の大都市はネオンで明るく照らしている。
私は、この都市が嫌いだ。
カシュ!と缶を開けて、コーラを飲む。
「…学校。『この世界の常識を学ぶ義務』ですか…」
私は学校に入学できない、そもそも外を出歩くこともできない…。
「…今更考えてもしょうがない」
私は首を振り、自分の部屋へ戻った。
午前10時50分、第五市街の海岸が近い倉庫にて同じく派遣された数人の大人に囲まれながら依頼内容を確認していた。
「本日の依頼内容を繰り返します。
まず一つはこの『荷物をそれぞれの宛先へ運ぶ』こと、
二つは『全都市のパトロールまたは悪魔退治を行う』こと、
そして三つ目は『大中央都市にて出現した悪魔の調査する』こと、
以上だ。では、それぞれ任務へ向かえ!」
みんなそれぞれ任務に向かい、私は『大中央都市にて出現した悪魔の調査する』ことになった。
人間を襲ったり誘拐する化け物がこの都市でよく現れる。人類はそんな化け物を『悪魔』と呼んでいる。そして二日前、大中央都市のセキュリティ施設にて「人の姿をした何かが魔術を使って襲ってきた」という通報があり…昨日の段階で『悪魔』判定となったばかりである。
「でもさぁ、人の姿をした悪魔なんてホントなのか?」
「だいたい気持ち悪い形のやつらが多いし、デタラメじゃね」
普段よく目にする悪魔は、突然現れては人を襲ったり建物を破壊したりでとにかく暴れる怪獣そのものであり、原型が留めておらず液体みたいな姿が多い。それに人の姿をした個体は未だに発見されていなかったので、さっきの報告を信じる人はあまり多くはなさそうだ。
今回の現場であるセキュリティ施設の周辺に着くと、手分けして調査を開始した。ちなみに、今回の調査に関して施設の関係者からはちゃんと許可をもらっている。
見たところ特に破壊された跡は無く、荒らされた形跡すら無い…、
「やはり襲われたのは、人か」
場所がセキュリティ施設なのでてっきりどこかのシステムや大都市の住人に関する個人情報が狙われていたのかと予想したのだが…見当違いだった。だが、さっきの報告内容で少し気になることが一つあった。
「セキュリティ施設の管理者には軽傷で被害は無かったが、従業員の一名だけ行方不明になっている」
施設の管理者や責任者が襲われるのは分かるが、なぜか一人の一般人だけが未だに見つかっていない。
私の役目は、何かしらの手がかりや証拠品等の物を運ぶこと…私の仕事は『運び屋』だ。だが、今回は何も見つからなかったので、出番は無かった。
数時間後…結局報酬は貰えず、私は今日の夕飯用でスーパーの見切り品であったメロンパンを買った。
スーパーを出て寮へ帰ろうとした。
「た、助けてくれぇぇぇ…!」
近くの路地裏から微かに声が聞こえた。私は考えるよりも足が動いてしまい、奥へと向かう。
進むと、行方不明になっていたセキュリティ施設の従業員のIDカードが落ちていた。私はそれを拾った次の瞬間、
「「ギィィィィィ!!!」」
上から巨大な何かが襲ってきた。こいつは…、
「悪魔!」
私はすぐに構えた。悪魔はこちらを見ている。よくよく見ると…、後ろにはメガネと血だらけの白衣が落ちていた。
「…まさか、人を食べる悪魔か」
今まで確認された悪魔は破壊や襲うだけだったが、その悪魔は…間違いなく従業員を捕食していた。
普通は驚くだろう…だが、私はそうではなかった。
なにせ私は、人を食べる悪魔を前から知っていたから。
地面から茨みたいなトゲが私の右肩を貫いた。
「グハッ!…セキュリティ施設を襲った悪魔もお前か」
このままでは私は出血死するだろう…。
「でも、今は…!」
この路地裏から出ると、一般人がいる。もしも奴が表に出たら間違いなく被害が出る。だが、今の私には致命傷で戦う力が無く、今まさに…そいつに食べられそうになった瞬間だった。
ザシュッ!
人食い悪魔は突然真っ二つになり、灰のように消滅した。私はその驚きのあまりに力が抜けてしまった。
膝をついて…気を失いそうになった時、誰かが私を抱えていた。
真っ白で目元が見えない前髪の青年だった…。
「キリカ、キリカ…」
…知らない人なのに、私の名前で呼んでいた。
「お前…誰、だ……」
気が、遠くなる…。




