異世界人 メグル・ハラベ
「今回は?」
「VB‐2008宇宙のシグナ星に渡って来た異世界人、原部桓です。」
「取りこぼし?」
「いえ、界渡りで力を得たパターンです。」
じゃあ、まだ力を得て間もないのか。
世界を渡ると、何故かやたらと冒険したり討伐任務に着きたがるんだよな。お陰でこっちは仕事がしやすいんだけど。
ああ、あと面倒事や厄介事に自ら首を突っ込むから、命を狙われがちなんだよね。
「知名度はどのくらいになってるの?」
「もうかなり有名です。ちょっともう、討伐任務のときに暗殺は無理ですね。なんか5人くらい仲間?嫁?いますし。」
もう一つあったね。ハーレム作りがちっていうのが。
はぁ、殺しちゃいけない奴が近くにいるってだけで面倒くさい。
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…シグナ星
メグルが滞在している街に着いた。
メグルは、え〜っと、北か。
いたいた。じゃあ、チャンスが来るまでこっそり追尾せねば。
「リリ、監視しといて、街中でチャンスなんて来ないから。」
「私は敵対組織を調べて来るので、貴方がやって下さい。」
そう言って直ぐに行ってしまった。
一日目 馬車に乗って移動していた。途中、狼や盗賊と交戦していたが弱すぎて話にならなかった。
二日目 今日も馬車移動。昨日の盗賊の本隊が報復に来ていた。瞬殺だった。
三日目〜五日目 移動中に、湖で弱った精霊を見つけた。湖を汚染していた動物を倒して解決。精霊が仲間になっていた。
六日目 馬車移動。精霊に気付かれそうになったので、距離を取ってチャンスを待つ。
七日目 王都に到着。宿で休んでいた。こっちはずっと野宿なのに。
八日目 国王に謁見。割とまともな王だった。
九日目 王都から出発した。リリと合流した。
「どうだった?」
「イジュラ教団という組織が襲撃しようとしています。ただ、その…。」
「弱いのか。」
「はい。」
「奥の手か何か無いのか?そいつら。」
「悪魔召喚ってのが有るそうです。実際には闇の精霊を召喚する魔法ですね。」
「それ乗っ取って、私が出るのはどうだ?姿は変えるが。」
「おや、遂に悪魔と認めるんですか。」
違うわ。ただこれしか思いつかないだけだ。
「睨まないで下さいよ。それは置いといて、少し難しいですね。そもそも、天使を召喚できるわけ無いじゃないですか。そんなことできたら天界も他の世界も、めちゃくちゃになりますよ?」
それもそうか。じゃあ、他のチャンスを待つしか無い、か。
「ただ、私が召喚されることはできます。なので、私が姿を消した状態で召喚されて、その瞬間に転移して来るというのはどうです?」
「流石リリ。天才!最強!可愛い!」
「天才と可愛いはともかく、私には戦闘能力が無いので最強では無いですよ。」
マジレスやめて。ちょっと悲しい。
「襲撃はいつ?」
「二日後、森の中です。」
…二日後、森の中。
この二日間、メグル側には森を跋扈していた強そうな動物をけしかけ、逆に教団の周りからは排除して回っていた。教団の奴ら、私がいなければ多分、メグルと戦うことすらできずに全滅していた。
これが幹部とか、弱すぎて涙が出て来るね。
おっ、教団が仕掛けた。光魔法と水魔法を駆使して位置を惑わせながら攻撃している。
しかし、悲しいかな、効いていない。
メグルが強風を発生させて、魔法が無効化された。
「フッフッフッ。やりますね、流石第一支部を破壊しただけのことはあります。」
逆にお前は弱すぎる。
「まさか、教団の仲間か!」
遅くないか?予想はついたろ。
「如何にも。私はイジュラ教団、壱拾壱列聖が一人、毒草のヴィルグと申します。」
列聖て、全滅するフラグにしか聞こえないんだが。
「お前達の目的は何なんだ!それに、どうしてあんな非道いことができる!人の命を何だと思っているんだ!」
「質問が多いですねぇ。まあ、冥土の土産に教えて上げましょう。我々の目的は、魔神の復活ですよ。」
あれ、多分そろそろ処分されるんじゃないかな。精霊は私達の管轄じゃないから詳しくは分からないけど。
「そしてあの実験は、魔神様が復活なされた後の世界で生きていくことの出来る体を作るためのものです。」
「さて、そろそろ良いでしょうか。その程度の隠密で、私を出し抜けるとでも?」
え?あれ、隠れてたの?堂々と移動してただろ。
「何!?」
メグルの仲間の一人が、教団の魔法によって吹き飛ばされた。
「隠密とは、こうやるのですよ。」
そう言うと、別の場所に待機していた百人が姿を表した。
もっと撹乱に使えただろうが!何で姿を見せる。
「くそっ!メリナ、リーゼを頼む。他の四人は二人を守っていてくれ。」
「えっ?貴方はどうするの?」
「俺は、ヴィルグを倒す。」
そう言って教団員をなぎ倒しながら駆けていく。
教団員の中を抜けたその時、メグルに蔓のような物が四方より襲い来る。
「これを避けきりますか。私は、少々貴方を過小評価していたようです。ですが、これなら避けきることはできないでしょう。」
ヴィルグがそう言った時には、メグルの足には蔦が絡まっていた。
メグルの肌には棘が突き刺さり、あちこちから出血している。
しかし、メグルは気にした様子もなくヴィルグに近づき、腕を切り飛ばした。
「何故です?少し摂取しただけでも直ぐに命を落とす程強い毒を、体内に注入したはず!そんなに動けるはずが……。」
「悪いね、この毒は僕には効かないみたいだ。」
既にメグルの体には傷も残っていない。
「クソッ!お前達!よってたかってそんな小娘共すら倒せないとは。」
「もう、諦めて投降してくれ。悪いようにはしない!」
「クソがクソがクソガァッ!!私が負けることなどありえない、負けられない。負けてしまえばあのお方に…。」
「お、おい…。」
「悪魔召喚だ!!貴様ら、私に魔力を送れぇ!」
やっと私の出番か。
空中に幾何学的な模様が浮かび上がり、光を帯びた瞬間にリリが喚び出される。同時に私も魔法陣の場所へ転移した。
一瞬、すべての視線が私に集まる。
「は、ハハ、ハハハハハハ。成功した、成功したぞっ。さあ悪魔、其処にいる敵七人を殺せぇっ!」
いや、私の狙いはメグルただ一人だよっ!
私を警戒しているのか、メグルはその場から動かない。
火球を20個生成し、彼に向けて飛ばす。勿論回避され、後ろの教団員が灰になる。
悪魔なんぞ召喚しないほうが良いと思わせる為だ、何人か残しておいた。
ヴィルグ?器に見合わない召喚をしたんだ、もって後十数分だろう。
剣に風を纏わせ、打ち込んで来る。
敢えて間合の内側まで踏み込み、右腕を当てて剣を逸らす。
腕が伸び切ったところで少し引き、体制を崩させた。
対人戦の経験が薄いのか、私の成すがままだ。
鮮血が撒き散り、一瞬の静寂の後、悲鳴と歓喜の声が入り混じる。
手首を捻り、剣を取り上げて、首を切り落としたのだ。
人間たちが混乱している内に転移でその場を離れた。
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…天界
光の柱に魂を放り込む。
「やはり、自分のしたことで他の者が泣いているのを見るのは、心にクるな。」
「そうですね。でも…。」
「ああ、それでもやらなければいけない。」
より多くを救うには、より多くの天使が必要になる。私はただ粛々と、天使になれる魂を集めるだけだ。
なるべく楽をしながら。
残りノルマ 通常業務 10 ペナルティー 2




