「転換点」
マンスーリアは近隣地域の新体制を求める勢力を積極的に支援し始めた。マンスーリは、国を強固にするには自国の防衛だけでなく、周辺国の政情にも影響を及ぼす必要があると悟っていた。
「自由を求める者たちを助けよう」
マンスーリは軍議で宣言した。
「武器と支援を与えれば、圧制者を倒せる」
アウローラ、アルリナ、リラもこれに同意。彼らは密かに反乱軍へ武器や物資を供給し、周辺地域で反乱の波が広がっていった。
戦争と奴隷貿易に疲弊した近隣住民たちは、次第にマンスーリアを支持するようになった。他国と異なり、マンスーリアは奴隷貿易を厳しく規制し、困窮者に食糧を配給していたからだ。これが支配体制に対する反乱を誘発した。
「傍観することはできない」
マンスーリの声には揺るぎない決意が込められていた。
「苦しむ人々を救わねばならない」
アウローラが頷く。
「だが慎重に。過度な干渉は新たな紛争を招く」
◆◇◆
最初にマンスーリアへの編入を決めたのはアルバンツィオ地方だった。オルデイロを隔てたこの地域は長年、圧政と腐敗に苦しんでいた。編入運動の指導者アルビリウン・ヴェンシュタインは、その公正さと決断力で知られる人物だ。
「マンスーリアの一部になりたい」
ヴェンシュタインは硬い口調で述べた。
「貴国の理念に共鳴する」
マンスーリはこれを受け入れた。
「歓迎しよう。共により良い未来を築ける」
ヴェンシュタインは忠誠の証として、私財を投じて賠償金を全額支払った。これがマンスーリアとアルバンツィオの信頼関係を強化する重要な一歩となった。
「支援に感謝する」
マンスーリは敬意を込めて言った。
「貴方こそ真のマンスーリア人だ」
◆◇◆
マンスーリアは周辺国の内戦を積極的に後援し始めた。敵を弱体化させ、自国の立場を強化する唯一の手段だと悟っていた。
「この機を逃すべきではない」
マンスーリは熱を込めて語った。
「反乱軍を支援すれば、圧制者を倒せる」
三人もこれに同意し、密かに武器や資源を供給。周辺地域で反乱が連鎖していった。
しかしこの干渉が、ヴァルニディスとの同盟決裂を招く。マンスーリアの行動を不快としたヴァルニディス王は、協力関係の終焉を宣言した。
「他国に干渉する国を支援できぬ」
王の声は冷たかった。
「同盟は解消する」
マンスーリは静かに息をついた。
「我々はなすべきことをしたまでだ。理解されぬならそれまで」
◆◇◆
ある夜、マンスーリはあの声を再び聞いた。スキルを失って以来、彼を付け狙う声だ。
「忘れるな…」
声は囁いた。
「民間人のことを」
以前は不気味に響いたその声が、今は無辜を守る重要性を説く慈愛に満ちていた。
「お前の選択は正しかった」
声は続けた。
「自らを守れぬ者たちを救った」
マンスーリは目を閉じ、感謝の念に包まれた。自分の歩んだ道に誤りはなかったと確信した。
◆◇◆
宮殿のバルコニーに立つマンスーリが地平線を見つめる。戦争はまだ終わっていないが、祖国を守るために最善を尽くしたという満足感があった。
「我々は耐え抜く」
アウローラ、アルリナ、リラに向かって宣言した。
「共に成し遂げよう」
アウローラは誇らしげに微笑んだ。
「いつだって一緒じゃない」
マンスーリは頷き、心に決意を新たにした。これからも試練は続くが、彼はもう迷わない。
瞼を閉じると、意識の深淵から最終審判のように声が響いた。
「忘れるな…」
声は天の啓示のように轟いた。
「人々を救うのがお前の使命だ!」