アイツと、私と、到着した使者
舞台は近未来の、2930年。
日本のとある街に生きる少年・レンは自宅の蔵で、とある本を見つける。
予言書と呼ばれるその本を巡り、レンの人生は大きく動き始める事に─
─第1話─
西暦2930年。
日本のとある街─
『さ〜て!今日も何か、見つけようかな。』
レン(16)は今日も自宅の庭に建てられた、今はもう歴史的にも珍しくなった、蔵へと足を踏み入れていた。
祖父母の代から残るこの蔵は、外観は古びてはいるのだが、中に広がる空間は大きめで、天井も高かった。
はしごを使って登る2段目部分には、棚がたくさんところ狭しと置かれている。
その中には、埃をかぶった本や箱がぎっしりと詰め込まれており、まだ見ぬお宝探しにはピッタリだった。
レンの、お気に入りの場所でもある。
思えば、小さな頃からこの蔵が好きだった。
学校にも行かずに1日中蔵に入り浸っては色んな本を読み、使い方もわからぬ玩具を見つけては1人で遊んでいた。
今日は、昨日見つけた時計をもう1度見てみよう!
そう決心していた。
友達がいない訳ではないのだが、しばらく学校へは行っていなかったので、時間は腐るほどあった。
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
日本のとある街の、山奥─
突如、付近一帯がバチバチと音を立てながら、目も開けていられない様なまばゆい光に覆われて、MLR-913型が現れた。
どうやら、上手くこの時代に転送された様だった。
木々がバサバサと揺らめきながら揺れ、風がざわめきながら騒ぎ、休んでいた鳥たちは、どこかへ飛んで行ってしまった。
円形型に広がる青い炎と光に包まれながら、しゃがみこむ様にして現れたMLR-913型は、フラフラとその場で立ち上がり、キョロキョロと辺りを見渡すと、呟いた。
「キドウ…カクニン…」
「システム…ダウンロード…」
「アップデート…カンリョウ」
『おはよゥ…ございマす…人間…』
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
日本のとある街の、家の中─
『ヤバっ!!もう時間ないじゃん!』
リン(16)は、朝の準備に追われていた。
いつもの様にけたたましく鳴る目覚ましを止めたものの、二度寝をしてしまったからだった。
慌ただしく制服に着替えると、いつも通り大きな鏡に向かって、チェックをする。
『うん!今日も可愛い!』
どんなに急いでいても、この鏡チェックは欠かさない。
身だしなみもそうだが、自分が可愛くなくては友達を含めて、誰にも会いたい!と、言う気持ちもなくなるからだ。
バタバタと慌ただしく階段を駆け下りると、キッチンへと、顔を出す。
朝食は、どんなに時間がなくても、どんなに軽食でも必ず取る様にしていた。
そこに置いてあったトーストを口で咥えると、その横に置かれたメモに、目を向ける。
『なになに?どーせ、今日も遅いんでしょ?』
そう呟くと、おもむろにメモをゴミ箱へと投げ捨てると、玄関へ急いで向かう。
父親は何年も帰って来ておらず、母親も毎日遅くまで働いていた。
『今日こそ、アイツを連れて行かなきゃ。。』
目を輝かせながら、久しく学校にも顔を出していないアイツを、思い出していた。
朝からの眩しい太陽に負けそうになる自分に、強く言い聞かせると、ドアを開け走り出していた。
『待ってなさいよ!』
未来のネリ博士より送られた、MLR-913型。
起動も確認され、動き始める─
果たして、、、この先どの様な展開を見せるのか?!
次回以降を、お楽しみに。