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第14話

 俺の思い違いかもしれねえが、どっちにしてもこんなときは、感情に流されちゃ駄目だろう。この場はあいつに任せるって決めた以上、余計な口出しは無用、デュラムを信じてやらねえと。

 胸の内で、自分自身にそう言い聞かせてると、


「ま、ただの身の程知らずなら、すぐに別れてるでしょうけど。あなたは、それだけの人じゃないでしょ?」


 サーラがからかうように、俺のほっぺたを人差し指で突いてきた。こっちに向かって悪戯っぽく片目をつぶり、さっぱりとした感じの笑みを見せながら、つんつんと。


「確かに忘れっぽくて、間が抜けてるのは困ったものよね。だけど真面目で優しくて、いつも一生懸命。痛い目に遭っても辛い思いをしても、神様には負けないってがんばってる。そんなあなただから、危なっかしくて放っておけない、自分がそばにいてあげなきゃって思っちゃうのかもしれないわね。デュラム君も――それにあたしも♪」

「サ、サーラ……?」


 どきっ。魔女っ子のきれいに整った顔、それも屈託のねえ笑顔を間近に見たからだろうか。あるいは、たとえ慰めでも、自分のことを悪いところばかりじゃねえって言ってもらえたのが嬉しい反面、気恥ずかしかったのかもしれねえ。胸の太鼓(ドラム)がドンツク、ドンツク、周囲にまで響いてねえかってくらい高鳴るのを感じて、俺は慌ててそっぽを向く。動揺してるのを悟られたくなくて、サーラに顔を見せねえようにしながら、頭の中で思考を忙しく駆けめぐらせた。

 危なっかしくて放っておけねえ――仲間からそんなことを言われたときは、どう答えりゃいいんだよ、俺……?

 あれこれ考えてはみたが、情けねえ。今は胸がどきどきして落ち着かねえせいか、どうにも上手い応じ方が思い浮かばず、


「そ、そりゃ……いつもすまねえ。それと、その……ありがとな」


 途中で言葉を詰まらせながら、ぎこちなく、普段迷惑かけてることに対するわびと、世話になってることへの礼を言うのが精一杯だった。

 けど、幸いというべきか、サーラは別に気の利いた返事とか自分が満足する答えを求めてたわけじゃねえようで、


「もう、なーに硬くなってるのよ、あなたらしくない♪ デュラム君にきついこと言われて傷ついてるんじゃないかと思って、ちょっと励ましてあげただけよ。深い意味はないんだから、そんなに重く受け止めて、どう答えようかなんて悩む必要、全然なし。わかった?」


 と、俺の口下手な様を見ても顔をしかめることなく、大輪の向日葵みてえに笑ってくれた。冗談めかして、ほっぺったをもう一度、ちょんと突きながら。


「というか、おわびもお礼も、むしろあたしが言わなきゃならないことでしょ? このところ、呪いのせいで魔法が使えなくて、すっかりお荷物になってるじゃない。だから、あなたとデュラム君には申し訳ないと思ってるし、それに……感謝だってしてるんだから」

「お荷物だなんて、そんなことねえって……」

「本当にそう思ってる?」

「ほ、本当だって。おっさん……もとい、太陽神リュファトにかけて!」


 サーラとそんなふうに話しながら、何気なくデュラムと巫女様の方を見た、そのとき。


「いっ……?」


 不意にデュラムからこっちへ視線を移した巫女様と、ばっちり目が合った。


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