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第一章 幼子 剣士と魔道士(1) 

幌馬車の旅は続く。立ち寄る村々で子供を仕入れ、その子等を栄えた街で売り歩く。

 その旅の途中、どういう訳か檻に繋がれた子供が時に失踪する。

 ランダはそれを意にも介せず、従者達もまたそれを脱走と考え、別に気にすることもなく旅を続けた。

また道々、ランダはサイゼルの教育のための魔道士と剣士を捜し歩いた。

 「ランダ様、剣士が見つかりました。」

部下が息せき切って駆けてきた。

 「会ってみましょう。」

 街の外、原野でランダは部下が探し出した剣士と名乗る男と対面した。

 「駄目だね、この程度じゃ。」

その剣士を自称する者を見ただけでランダは答えを出した。

 何を・・といきり立ち、剣士がランダに突っかかる。

 勝負は一瞬だった。

 剣士を名乗る男は大きく投げ飛ばされ、(したたか)かに腰を打った。

 「お前らの目は節穴かい。

 私は凄腕、と言ったんだよ。」

 ランダは自分の部下にそう吐き捨て、幌馬車へと帰って行った。

 その後も好待遇に誘われ、剣士を名乗る者達が次々と現れたが、結果は同じ様なものだった。

 ある日のことランダが何時ものように子探しに貧民窟を歩いていると、前方から腰に剣を履いた美しい顔立ちの優男(やさおとこ)が歩いて来た。

 「どきやがれ。」

 ランダの部下の一人がその男に毒づく。

 男は素知らぬ顔をして、その側を通り抜けようとした。

 「この野郎、聞いているのか。」

 ランダの部下がその男の顔の間近に自分の顔を近づけた。

 「臭い息を吐くな。」

 男は汚いものにでも触るようにその顔を押しやった。

 「この野郎。」

 部下が剣を抜こうとした瞬間、その部下は空中に放り投げられていた。

 ザッとあたりに緊張が走る。

 その中をゆっくりとその男が歩く。

 「()っちまえ」

 誰ともなく声を掛け合い、ランダの部下達が剣を抜く。その中でも男は悠然と構え、静かに剣の柄を握った。

 殺気が立つ。

 その円陣の後ろから、

 「お止め、お止め。

 お前達は馬鹿かい。

 剣士を探してこいと言えばろくでもないのばかり拾ってきて、こんな上玉に殺されようとしやがる。」

 ランダは軽く頭を振って部下達を掻き分けた。部下達は渋々といった(てい)で剣を治める。

 「あんた名前は。」

 その中でランダが男に声を掛ける。

 「そう言うあんたは。」

 男もまたランダに声を返した。

 「これは失礼・・だけど、いい男は声まで良いねえ。」

 ランダは言葉を続ける。

 「ランダ・・人買いのランダ。」

 「その人買いが私に何のようだ。」

 ランダは(かたわ)らにいるサイゼルの頭を撫でながら、

 「この子の教育係を探していてねえ。

 あんたどうだい、その役、引き受けちゃあ呉れないか。

 見返りははずむ。」

 「この子か。」

 男は膝を折り、サイゼルの顔を覗き込んだ。

 「幾ら頂ける。」

 「月に(ゴールド)一。」

 「普通の人間の三年分の稼ぎか。」

 男は立ち上がりランダに正対する。

 「それに、」

 「それに・・・」

 男はランダの言葉尻を取る。

 「私の躰・・でどうだい。」

 男は妖艶に笑うランダの服の胸元に手を掛け、それをはだけた。その合間から豊満な乳房がのぞく。

 「よかろう・・私の名はエミリオス・・・厄介になろう。」

その美しい男はニヤリと笑い、軽く頭を下げた。


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