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第四章 囚われる(20) 若き獅子の台頭(5)

 アリアスはオーエンだけを連れてファルスの王宮に入った。

 玉座にはフィルリア王が座り、周りには従者と僅かな重臣だけが居た。

 「アリアスと申すか。」

 フィルリア王は横柄に話す。

 「モングレトロスのアリアスです。」

 アリアスの凛とした声が部屋に響く。

 「仕官を望んできたか。」

 「そっちが望んだんだろう。」

 オーエンが不快感を露わにする。

 その声にその場に霜が立つ。

 「儂が望んだと。」

 「おたくの使者がこのアリアスに仕官の話しを持ってきたはずだが。」

 オーエンも負けてはいない。

 「そうなのか。」

 王が側にいる重臣の顔を不快そうに見る。

 それを取り繕うように、

 「この者はオービタスの南麓に巣くうバルバロッサを山地内に押し込め、その働き高うございます。よって我がフィルリアに取り入れ、仕官さす。これはフィルリアの国力を上げるためでもあります。」

 と、口速に喋った。

 「バルバロッサを討ったか・・要らぬ事だったかも知れぬがな。おかげで奴らは出口を無くし我が領内で跋扈しだした。」

 王の口調は苦々しい。

 「それを討つためにこの者を使う。その為に私が呼びました。」

 「何処の誰とも判らん者を使わねばならぬほど、兵にはそこまで困ってはおらぬはずじゃ。」

 「おい、アリアス帰ろう。」

 立ち上がろうとするオーエンをアリアスが引き留め、微かに笑う。

 「何が可笑しい。」

 それを見咎めた王が一括する。

 「王様が余りに時勢に暗いものですから・・つい。」

 アリアスはキッとフィルリア王の眼を見た。

 「何を申す・・剣を持て。

 成敗する。」

 フィルリア王は玉座を立ち従者に剣を所望した。

 「斬るのは話を聞いてからにしませんか。」

 「よかろう。話だけは聞いてやる。その後、その首を差し出せ。」

 いきり立つ王に、もう一度アリアスは笑い、話し始めた。

 「まず、バルバロッサ。彼らはフィルリアが造り上げた。」

 「なんだと。」

 王の怒りに油を注ぐようなアリアスの言葉に彼を呼んだ重臣はオロオロとし出した。

 「ここファルスに来て思ったのですが、この国は貧富の差が大きすぎます。働いても働いても報われない者達が、不満を抱き野に下った。それがバルバロッサの姿です。それを自分達で抑えることもなく、他者のせいにする。

 まずこれが一つ目の過ち。」

 王の手が怒りにぶるぶると震える。

 「次にこの国の北、野盗の跋扈。これに対しても手を拱いて見ているだけであり、王宮に害が及ばなければ民をほったらかしにしている。」

 「次に。」

 何かを言おうとする王を目で押さえつけ、アリアスは話を続ける。

 「レジュアスとの境。今は緩衝地帯があるがいずれは衝突の可能性がある。それを見過ごしていること。」

 アリアスは強い光を持った目でもう一度王を見た。

 「そこでこの方・・・」

 アリアスは自分を呼んだ重臣を見る。

 「お名前は。」

 「エロンと申す。」

 その時にはこの重臣もアリアスの勢いに押さえ込まれていた。

 「国を憂いたエロン殿は自身が手足のように使える兵を求め我等に声を掛けた。」

 頷くエロンをよそにアリアスの話しは続く。

 「国は民の艱苦の上に、ましてや犠牲の上に成り立つものではありません。

 それをお考えでしょうか。」

 アリアスの目の光がますます強くなり、フィルリア王がその眼光に気圧される。

 「な、なにを・・・説教がましい。

 お前になにができる。」

 「戦いができます。それを金で雇って貰おうと思っています。つまり傭兵。

 ですが私達の力を貴方はご存じない、そこで最初の一戦は無償で引き受けましょう。バルバロッサでも野盗でも、相手はどちらでも構いません。」

 「そう言って逃げる気か。」

 「いいえ、私がここに残ります、人質として。

 私の仲間だけでもバルバロッサとか野盗とかは倒せます。」

 アリアスの態度は自信に溢れていたが、オーエンの方が少々慌てた。

 「如何ですか。その首尾を見てから、私を処刑しては。」

 「よかろう・・今の言葉忘れるなよ。

 衛兵、この男を牢へ。」

 フィルリア王は大声を上げた。

 「大丈夫か。」

 衛兵に引かれるアリアスに牢まで付いていく間にエロンが心配げに声を掛けた。

 「戦いの事は心配していません。

 それより、貴方が私を信じきることができるか、そちらの方を心配しています。」

 「私が王に取りなす、それは信じてくれ。」

 その言葉にアリアスがニコッと笑う。

 「では仔細は私が牢を出たあとに。」

 と言って牢屋の扉をくぐった。

 王の指示を受け、向かった野盗の一団はあっと言う間に駆逐された。その報を持ってエロンはフィルリア王に面会を申し入れた。

 「如何でしょうか、この一隊の強さ。これを使わない手はないかと。」

 王もそのあまりの強さに慄然としていた。

 「た、確かに・・・強い・・余りに・・・

 その力は欲しい、だが・・儂の立場が・・・」

 「昨日のアリアスの言、あれは貴方の立場を狙ったものではない。と思われます。牢より解き放ってください。まず私が話しを致します。」

 「任せる・・お前に任せる。あの強さを我が国に向けぬよう上手く手懐けよ。」

 王は早々に奥へと引き取った。


 「ありがとうございます。」

 エロンの屋敷でアリアスが頭を下げた。それに対し、

 「仕官の話し・・」

 と、エロンは話を切り出そうとしたが、

 「お受けできません。」

 と即座に断った。

 「昨日の王の態度か。」

 「いいえ、そうではありません。貴方には素直に話します。

 傭兵、これだけしか私達が生き残る手はありません。」

 「なぜ・・・」

 「私達の村はフィルリアにもレジュアスにも近い。もしまかり間違ってこの二国が戦ったとすると私達の村は消滅します。

 私達はこの二国どちらにも荷担できません。

 しかし、現状は憂います。故に傭兵としてどの国であれ民を助ける。私達が戦うのは覇権のためではありません。

 それが私達が戦う大義です。」


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