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第一章 幼子  二人の司祭(2)

 ランドアナ高原の南西の麓。ケムリニュスと呼ばれる地、そこにも一つの宗教が興りつつあった。

 教祖はランプールと名乗っていた。

 愛と自由を説き、一人一人の自由こそが平等の始まりだと唱えた。

 「神の元の平等。サンクルス教はそう言う。

 また、神はサンクルス教にだけあるようにも言う。

 であれば、サンクルスの神を崇めぬ者には平等はないのか。

 ・・・・・」

 男はそこに集まった群衆に向け、尚も演説を続けている。そこへ、

 「フランツの兵だ。」

 群衆の後ろの方が騒いだ。

 すると、ランプールの隣でニコニコと笑っていた男が群衆の騒ぎに紛れ、さっと自分のマントでランプールを包むと、二人はそこから煙のように掻き消えた。

 そしてもう一人。立ち騒ぐ群衆を悠然と掻き分け、躰だけは頑丈そうな農夫が泰然とその場を立ち去った。

 「危なかったな。」

 ランプールが表情とは裏腹に凍り付くような眼を持つ男に話しかける。

 別にと言うような顔で、その男がその言葉を受け流した。

 司祭とだけ彼は呼ばれていた。

 その男と共にランプールは村々を回った。

 僅かずつではあるが信者の数が増えていった。

 ある村でランプールは何時ものように説教をしていた。そこへ五人ほどのフランツの兵が現れた。

 何時ものようにランプールは司祭に寄り添った。

 だが司祭は何時ものごとくマントを(ひるがえ)すことはなく、そこに集まる人々に手を(かざ)した。

 槍と剣を目の前に震えるランプールとは裏腹に、人々は手近な得物を手にその兵士達に襲いかかった

 そして、兵士を殴り殺した人々はランプールの前に(ひざまづ)いた。

 「頃合いでございましょう。」

 尚も震えるランプールの耳元に隣に立っていた司祭が静かに告げた。

 命が助かった安堵か、それとも命を危険にさらした恐怖か、ランプールはその司祭の声さえも聞こえぬ(さま)だった。

 「集え。そして戦え.自分らの自由のために。」

 戸惑うランプールの横で、司祭が大声を上げた。

 人が集まり、フランツの妨害にもめげず同じものを信じる一つの集団が出来た。

 ランプールは自分の教えをアモール教と名付け、その集団内で自由な性愛をも奨励した。

 それに惹かれてか、ならず者のような者達までもがその地に集まり、司祭の下、それらが徐々に兵となっていった。

 ケムリニュスの片隅の寒村の人口が徐々に増えていく。

 人々はその村の廻りに逆茂木を結い回し、独立を勝ち取ろうとしていた。

 それから十年、聖都ケントスが出来上がっていた。


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