第四章 囚われる(14) 新たな仲間(12)
「俺の魔術の源は陰陽道といい、我が一族は代々これを守り通してきた。
陰陽道、これは光と闇に通じる。陰は闇を表しその因子を持ち、陽は光を表しその因子を持つ。
そして我が魔術はこの紙、呪符を使う。」
ジューノは懐から一枚の紙を取り出した。
「この中には魔術や魔物が封じられている。
例えばこれは使い魔、アガシオンを召喚する。」
ジューノが呪文と共にその紙を投げると一面に煙が立ち、その中からターバンを巻いた人の体が徐々に実体化してくる。
「これを式神の術という。」
警戒の色を表すサイゼル達を手で制し、ジューノは話を続ける。
「そしてさっきの幻術、あれは呪文と両手の指で形作る印によって成される。」
「講釈はどうでもいい。てめえの正体を証やがれ。」
アレンが吠える。
「正体ですか・・正体と言われれば陰陽師と応えるしかありませんな。」
くっ。アレンの表情が歪み、再びナイフの柄に手を掛ける。それには構わずジューノが続ける。
「陰陽師を名乗るものは数多居る。だが、我等一族は他の者達とは違う。陰と陽、我が一族はそのどちらかに縛られる。先に闇に会わば陰に、先に光に接すれば陽に・・それが我等の宿命。」
「何を言っているんだお前は。」
アレンが呆れた様な顔でジューノを見る。
「解らないか・・・光の子に出会った今、俺はこの宿命から逃れられないと言うことだ。逆らえば陽の因子に支配されだした我が脳は破壊され、廃人と成る。つまり、サイゼルとやらに従わなければ成らなくなったと言うことだ。」
アレンが唖然とした顔でワーロックを見る。
「光陰の陰陽道・・滅びたと思ったが。」
「そう・・・我等は人里を離れ、血を濃くするため近親だけの婚姻を続けた。その結果確かに血は濃くなり光陰の血は強く成ったが・・・」
ジューノはガバッと自分の衣服の胸を肌蹴った。
「腕・・・」
悲鳴と共にミーアが声を上げた。
老いさらばえた一本の腕が胸から生え、微かに動いている。
「突然変異。」
「そうだ。」
ワーロックの声にジューノが応える。
「何代もの近親婚が続き、血が濃くなった代償がこれだ。
ただし、俺の魔力の源もこれだ。」
ジューノは静かに衣服を直した。
「先に闇のものに会っていれば・・お前達の敵に成っていただろうよ。」
「これからどうするつもりだ。」
「当然、サイゼルに付き従う。」
「お前の望みだったものは。」
「諦めなければ成るまい。闇を滅するためにな。」
「まて、俺達は山に登るんだぞ。」
アレンがサイゼルの気持ちを代弁し、前に出る。
「それも知っている。サイゼルの育ての母が囚われているという。だがそれよりも大事なことがあるはずだ。」
「それより大事なことはないんだよ・・今は。」
アレンがきっぱりと言い、サイゼルが頷く。
「それ程・・仕方がないか・・・では俺も一緒に行く。」
ジューノは傍らの枯れ枝を折りそれに念を込めた。
枯れ枝がみるみるうちに変化していく。
「鞭だ。これが俺の武器。そうそう精を使う術を使うわけにも行かないからな。」
と同時にジューノは一枚の呪符を投げた。するとそこには親指の長さにも満たないほどの小人が現れた。
「スクナヒコだ。体は小さく戦闘の役には立たぬがこいつには知恵がある。先の偵察には打って付けだ。」
スクナヒコは体に似合わぬ素早さでジューノの下を離れた。
「暫く待とう。直にスクナヒコが情報を持って帰ってくる。」
その日はそこで野営と決まった。




