第四章 囚われる(13) 新たな仲間(11)
「ジューノ、お前は何か働いたのか。」
アレンが笑いながら幻術師を睨む。
「私には私の働き場所がある。今はその時ではない。」
ジューノは傲然とそう言い放つ。
「何だと。」
アレンの眉に霜が立つ。
まあまあという様にその間にカダイが立ち、アレンが苦々しげに唾を吐く。
一方ワーロックの側でサイゼルが地面に字を書いた。
”権能・精”
「そうか・・権能と精の事か・・・」
ワーロックがサイゼルの眼を見る。
「権能・・前にも話したが、権能とは個が持つ能力。その力によって魔術なり、幻術なりを使える様に成る。それは生来備わったものであり、例えば修行により身に着けられるものではない・・まあ、希には死ぬほどの修行である程度の権能を身に着ける者も居り、それを修験者と呼ぶ。
また、精とは・・そうだな・・言うなれば精神力とでも言おうか・・後天的に鍛えることができるもの。それまでの色々な経験で力が上がっていく。お前の精はお前が生来持つ権能に比して遥かに低い。その精を鍛え上げなければ階位の高い魔物を召喚魔として使うことはできない。」
俺は・・とでも言う様にアレンが自分の鼻を指す。
「お前はサイゼルとは逆に精は強いが権能はサイゼルほど高くない。ネヴァンに陰の因子をある程度浄化されるまではさすがにランダの息子、ものすごい権能を持っていたがその浄化と共にその権能は低くなった。」
「じゃあ・・」
アレンが恨めしそうな眼をする。
「だがあのままではお前はただの魔物に成り下がっていた。
それでもお前の権能はさっき話した修験者を遥かに凌ぎ、中位近くの魔物まで充分に使いこなせる。現にネヴァンを使っている。」
と、そこまで話し、ワーロックはジューノを顧み、
「ところで、あなたの力・・権能も精も充実している様に見えるが。」
と、何をしていたとばかりに睨み付ける。
「ままぁ、そう角を立てないでくださいよ。」
ジューノの言葉付きが突然ぞんざいに成った。
「私も闘わないではないが、まずあなた達のその力を見たかっただけですよ。
私が使う幻術では到底アンフィスバエナには敵しない。あなた達の力、それが大したものでなければハオカーにその命を捧げ、あいつと契約を結ぶつもりだったんですよ。」
ジューノは皆を見渡し、唇を歪めニヤリと笑った。
その場に険が立ち、アレンはナイフに手を添えさえした。
「慌てなさんな。あなた達の力を見せて貰った以上、私は決してあなた達の敵ではない。」
「味方でもないんだろうが。」
アレンは身構えを解かない。
「あなた達に協力しようと言うだけのこと。そして代価は頂く。持ちつ持たれつと言うことですよ。」
「協力ですか・・何を協力していただけるのですかな。」
ワーロックがアレンを手で制する。
「あんた達が望むもの。
例えばその若者の育ての親を探すこととか・・・」
再びジューノがニヤリと笑う。
「誰から聞いた。」
アレンの体が前のめりになり今にもナイフを抜きそうな体制を取る。
「止めておきなさい。」
ジューノがアレンがナイフを抜くより早く呪を唱え、印を切るとアレンはジューノの目の前から弾き飛ばされた。
くそ。と、アレンが立ち上がろうとする。
「お前の今の力では私は倒せないよ。」
ジューノの唇の歪みが大きくなり、アレンの体はその場に縛り付けられた様に動けなくなる。
「相当な魔力だな。」
ワーロックが前に進み出る。
「貴方にはかないませんがね。」
と言いながらもジューノがワーロックを睨めつける。
その横を光が飛び、ジューノの幻術を粉微塵に砕いた。
「光・・・本物でしたか・・カダイの心は読みましたが、まさか本物とは・・・」
ジューノの表情が穏やかに変わる。
「心を読んだって。」
やっとアレンが立ち上がり、もう一度ナイフに手を掛ける。
「まて、まて・・そうと知った以上お前達と事を荒立てるつもりはない。」
ジューノは顔の前で慌てて両手を振った。
「都合がいいな。」
ワーロックの眼の光は未だに鋭い。
「そう怖い顔をするな。話してきかせるよ。」
ジューノは手近な石に座った。




