第四章 囚われる(12) 新たな仲間(10)
「空気が変わりました。そろそろハオカーの棲み家のようですね。」
そこは伽藍を思わせる広々とした空間、天井の一部が裂け、日の光までが差し込んでいる。
「後ろから魔物が来るぞ。」
アレンが注意を呼びかける。
「前にもだ。」
ドルースが身構える。
一行の後ろに現れたのは数多くの餓鬼と、餓鬼の女性形ともいえるチェレル。それにイヒカやオラクルスという、体もさほど大きくない極低位の鬼族。だが、その後ろに巨体を一本脚で支え角を生やした鬼が三体。
「トケビだ。低級ではあるが強いぞ。
後ろにはカダイ、ドルースと低級な召喚魔で当たれ。ミーアは矢で全体の援護。ジューノはその守護。
前方は私と、アレン、サイゼル。」
ワーロックが指示を出す間に、暗闇の中から鉄棒を持った五体の鬼が現れる。
「まだ階位の高い魔物は呼び出すなよ。本当の勝負はまだ先だ。」
後方に当たる召喚魔は当初から呼び出していたサイゼルのブルベガー、ミーアのアズミ、火鼠、スパルトイで構成された。それらの召喚魔は他の魔物には対抗できたが、トケビに対しては苦戦している。それを埋め合わせる様にドルースとカダイが、その手にした武器を使って働きを見せる。
前方の鬼は五体、数の上ではワーロック達を上回る。が、アレンの戦闘力の高さがそれを補っている。
「暗がり。」
アレンが大声を上げる。
陰の中から、今闘っている鬼より一回り大きな鬼が二体、ヌーッと姿を現した。
「前鬼と後鬼だ。いよいよ出るぞ。モムノフと黄泉醜女の準備をしておけ。
アレン、ネヴァンはまだだぞ。ハオカーは使える。息の根は止めるなよ。」
ワーロック、サイゼルと共にモムノフが今は四体に減った鬼に当たる。アレンは前鬼を、黄泉醜女は後鬼を相手にする。
その奥、土が大きく盛り上がり、雄叫びと共に巨大な鬼が立ち上がる。
「ハオカーだ。奴は雷を使うぞ・・アレン、ネヴァンを呼べ。」
ハオカーが放つ雷はワーロックが全て遮断する。
天井の高い所で、呼び出されたネヴァンが羽ばたき、そこから鎌鼬を送り出す。
皮を裂かれ、肉を削がれハオカーが苦しげに身もだえる。
「行け、サイゼル。あの鬼に実体を持たせてやれ。」
ワーロックが鬼と闘うサイゼルの背中を強く押した。だがサイゼルは躊躇する。
「大丈夫だ。お前の権能、霊力は充分奴を制御できる。奴を使う精がまだ足りないだけだ。」
再びワーロックは突き飛ばす様にサイゼルの背中を押した。
サイゼルが自身で傷つけた手から血がしたたり落ち、咆吼を続けるハオカーの口に吸い込まれる。
ゴクッとハオカーの喉が鳴り、その瞬間ハオカーがサイゼルの前に跪いた。それと同時に前鬼と後鬼もまた同じように跪き、そして、ハカオーの体の中に消えた。
「これは予想外でした。前鬼、後鬼までもとは。」
もう残った鬼達の抵抗もなかった。闘う者達は後方の低級な魔物達だけ。それもあっさりと片付けられ、その場で全員が一息をついた。




