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第四章 囚われる(8) 新たな仲間(6)

 ランダは朝からニーコダマスを伴って湯につかっていた。

 「上手いことやってくれるよ、サビーネは。ガルフィよりよっぽど使い物になる。」

 言いながらランダは湯の中でニーコダマスの体に手を伸ばした。

 「ここに通じる道の魔物はこの屋敷に退き上げさせた。昼過ぎには着くだろうよ。

 それまで・・・」

 広い浴室は湯気と共に湯が揺れる音に包まれた。

 ランダの予想通り昼過ぎに玄関の呼び鈴が鳴った。

 「来たようだね。」

 ランダはザバッと盛大な湯音を立て湯殿を出た。

 玄関に迎えに出たのはバーロー。その前に長身の司祭が立っている。

 「おや、身なりも変わって・・・」

 司祭がバーローに声を掛ける。

 「執事もして居る。」

 その後ろでは見慣れぬ女が三人、忙しそうに立ち働いている。

 「大所帯になりましたな。」

 司祭が部屋の中を見渡す。

 「嫌な臭いも一緒だと思ったらあんたかい。」

 素肌に薄手のローブをまとっただけのランダがバーローの後ろから不機嫌そうな声を掛ける。

 「あんたがここに何の用だい。」

 「またお願いに参りました。」

 「街の娼館で良かろう。」

 「今回に限ってはここで無いと。」

 ランダが司祭の後ろに目をやる。

 「そうそう、ご紹介を忘れておりました。

 ここに来る道すがら知り合った人達でございます。何でも、貴女を訪ねてきたとか。」

 「サイゼルの育ての親か。」

 ランダの眼が一人の女に止まり鋭く光る。

 「ファナといいます。サイゼルを・・・」

 「如何でしょう。この女を私にくださいませんか。報酬ははずみます。」

 ファナの声を無視し、司祭がランダの足下に革袋を投げる。

 「五十金(ゴールド)入っています。女一人と二人の男の対価としては法外な値かと思いますが。」

 「五十ねぇ・・確かに普通に考えれば法外・・だけどその後ろには一人の若者がついているんだからねぇ。」

 ランダは意味ありげに笑った。

 「サイゼルという若者のことですね。」

 「よく知っているじゃないか。」

 ランダの頬が苦くなりサイゼルという名を聞いて詰め寄ろうとするファナにクー・シーが唸り声を上げその動きを押さえる。

 「かなりの執着の様子でしたので、私の耳にも入りました。」

 「そこまで知っているなら解るだろう。」

 司祭はもう一つ革袋をランダの足下に投げ、バーローが二つの革袋に手を伸ばそうとする。

 「触るんじゃないよ。」

 ランダが凄愴な眼でそれを押しとどめると、バーローが震える手を引っ込めた。

 「貴女は昔ほどサイゼルという若者にご執心ですかな。

 貴女の好物は能力ある子供と聞いております。二十歳を過ぎたはずのサイゼルにそれほどの魅力をお感じかな。」

 司祭は言を譲らない。

 「拾いな・・バーロー。

 そこまで読まれちゃあ仕方がないね。

 確かにお前が言うとおりだよ・・但しもう一つ条件がある。その男・・」

 その男と指さされたパルミトラスの顔色が変わる。

 「旨そうだよ・・別の意味で・・・」

 ランダは舌舐めずりをした。

 「何を。」

 言葉と同時にパルミトラスがランダに斬りかかる。しかし、ランダは素手で軽々とパルミトラスの剣先を握り自分の方へ引き寄せる。

 「自分の力を信じ切っている。そんな所も気に入ったよ。」

 その言葉の先で、もう一人の男の剣に腹部を突き貫かれた司祭が、

 「それでは、その女、ファナ。そしてこの男・・・」

 司祭は男の剣を持った手を捻上げた。その勢いで剣が胸の辺りまで司祭の腹部を切り裂く。が、それに動じる風もなく、

 「クルス、この二人は私が貰い受けます。」

 と、何事もないかのように言い放った。

 「それほどまでになぜだい。」

 ランダがパルミトラスの顔を自分の顔に引き寄せながら司祭に尋ねる。

 「貴女と同じ、この二人の後ろにいる若者サイゼルに興味がありましてね。

 その若者が貴女が思うような者であるならば別の使い道を思いついたと言うことです。」

 珍しく司祭もニヤリと笑った。


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