第四章 囚われる(3) 新たな仲間
「魔物が出ると聞きますが。」
カダイがぽつんと言う。
「それでも行かずばなるまい。」
ワーロック達はヴァン・アレンを先頭に黒い森を目指した。
ランダは集めた魔物を配置し、黒い森は様相が変わっていた。北西の端は昔妖精から陰の亜人へと変わった者達が棲み、その南東にはバーバヤーガを配し、森に入る人間をグールと化していた。その東側はトウテツの縄張りとし、これは人を喰っていた。
この二つの縄張りとは関係なく、血に飢えた五頭のガルムが森の中を走り回っている。
ランダの館はこの二つ縄張りを割って入る道のずっと奥、館の周りには三頭のアンシーリーコートがうろつき、館の中にはラミアとバーローと名を変えたバフォメットを住まわせ、宝物庫の守りは昔ながらのスプリガンに加えてオヴィンニクに任せていた。
ワーロック達が部屋に入って行くと、ランダは深いソファーにゆったりと腰掛けクー・シーのふさふさとした毛並みを撫でていた。
「何しに来たんだい。」
ランダが冷たい眼で四人を見る。
「無益な戦いをせずにここを通らせて貰おうと思ってね。」
ワーロックがにっこりと笑いかける。
「ここを通って何処へ行く。」
「山登り。」
「モンオルトロスかい。険しいよ。」
「それでも行かねばならない。」
「そうかい。」
と言うとランダは、若い美女の姿をしたラミアを呼び何やら耳打ちをした。
「すぐに発ちな。手配はした。
私の配下は手を出さない。お前達からも手を出しなさんなよ。」
ランダはサイゼルとヴァン・アレンを見つめながら、冷たい声で言い放った。
「発つ前に一つ教えてくれ。」
そっぽを向いたランダにワーロックが話しかける。
「モンオルトロスには何が居る。」
「アンドヴァリ。」
「その他には。」
「欲に目がくらんだ魔物達がいる。中々手強いよ。
ちんけな魔王シャムハザ。こいつはドゥリアスの領地を狙っている。まあ、昔の約束があるから私がたまに懲らしめに行っているけどね。但しこいつは多くの子分を従えているよ。
大物と言えば、迷い込んでくる者を喰う、凶獣アンフィスバエナが他の獣族と共に棲み着いている。
他にもモスマンとか・・色々いるよ。
まあ麓の小屋を貸してやるから、そこで装備を調えて登ることだね。色々置いてあるからね。」
礼を言いワーロック達が背中を見せる。
「待ちな。
報酬の話が残っているよ。」
やれやれという顔でワーロックが振り向く。
「まず一つ目が・・・」
「おいおい、幾つもあるのか。」
「無事の通行。それに魔物の情報。二つや三つの報酬があっても当然だろう。」
「で・・・」
ワーロックがあきれ顔を見せる。
「山の麓の小人族の集落にニーコダマスって奴がいる。そいつにここに来るように伝えろ。」
「ピグマイオイか・・」
「ああ、そこのニーコダマスって男は体に似合わない巨大なものを持っているらしい。」
ランダは涎でも垂らしそうな顔をした。
「次に、山の入り口に巣を張っているアラクネと、その近くに住んでいるシルキーを五人ほど。アラクネには私の衣装を織らせ、シルキーは館の下働きに使う。」
「どうやって・・」
「ニーコダマスにはお前が来ないとピグマイオイの集落をラミアが襲う。と脅しな。アラクネとシルキーはお前の力であればここに送り込むことくらいは簡単なことだろう。」
「もう一つ、途中で私の配下になりそうな鬼族を見つけたらここに送っておくれ。
ああ・・それにもう一つ。」
「まだあるのか。」
「いやいや・・報酬のことではない。
シャムハザのことだ。あいつは倒す必要は無い。将来私の配下にするつもりだからね。私の使いだと言って、痛めつけるだけでいいよ。」