第四章 囚われる
デヴィルズ・ピークの山頂付近の平地、七賢者は五十人ほどの若者を従者としてそこに到着していた。
平地より二十メートルほど上に泉が湧きそこから流れる清水が滝をなし、平地を流れ池となっていた。その池の水はうねうねと険しい山肌を巻くように流れ、麓の村を潤していた。
「今日よりこの地をホーリー・クリフと呼ぶ。」
集まった人々にデルポイが宣した。
「食料は麓の村から貢ぎ物として徴収します。
その村に住める者達は選ばれた者達だけ。そして、その者達はその村から出ることはできません。」
ダナエの言葉がそれに続く。
「お前達はその中でも特に選ばれた者達。それを感謝し、我等に額ずき、奉仕するように。」
デメテルの言葉により、五十人の者達は作業を開始した。
まず最初に大きなテントが八つ張られた。その一つ一つを七人の賢者がそれぞれ占め、残った大テントが会議用とされた。
次に造られたのが流れ落ちる滝の水を引いた沐浴用の泉。そこも大きなテントが覆い被さった。
そしてやっと従者達のテントが立てられるまで五日日が費やされた。
そんなことはお構いなしに一日目から賢者達は会議用のテントに集まり、宮殿の造りがどうの色がどうのと、そんなことばかりを話し合っていた。
それがやっと決まったのが従者達のテントが出来上がった五日目。宮殿は白煉瓦造りとし、その白煉瓦は麓の村から運び上げる。
「奴隷が要るな。」
「それに煉瓦を積む職人も要ります。」
「だがそれでは人が足りんぞ。」
「それを賄うには選民とはいかなくなる。」
「せっかく結界を張り、人の眼からここを隠しましたのに・・・」
七賢者達は困り顔に陥った。
「一つだけ方法が無いこともないが・・・」
六人の眼がルヒュテルの顔を見る。
「マルファス・・陰の凶鳥、マルファス。」
「建築の魔物・・魔殿になります。」
「我々全員の力ですぐに魔物を封じ、宮殿を浄化する。」
「それでどれくらいかかる。」
「奴だけではそれでも半年。」
「それまで我等はテント暮らしか。」
「そうなる。」
「手助けを使えば。」
「手助け・・・」
「そう妖精族を使います・・例えばフェノゼリーとかを。」
「それでどのくらい。」
「それでも三ヶ月。」
「他の妖精も・・せめて一月で・・・」
「ならば・・・」
「宜しいでしょう・・けれどどうやって召喚するんですか、その魔物を。」
「指輪・・悪魔を召喚できる指輪・・それを探す。」
「わたし達で・・・」
「いや・・うってつけの男が居る。」
「ワーロックか。」
「そう、あやつは今、なぜかは知らぬがサイゼルとか言う小僧に執心だ。
その母親・・いや、育ての親の情報を流す。」
「知っているのですか。」
「いや・・偽の情報で十分だ。」
「しかし闇雲には・・・」
「指輪はモンオルトロスにあるらしい・・そこまでは掴んでいる。」
「あまりに突拍子過ぎないですか。」
「なあに、あの山にすむ魔物に囚われたことにすればよい。」
「だがワーロックからその指輪をどうやって奪う。」
「その必要は無い。この山のことといい、指輪のことといい、あいつは怒ってそれをここに持ってくる。」
「それまでにサイゼルとやらの育ての親の情報を集めておくと言うことか。」
七賢者が一様にしたり顔で頷いた。