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第三章 乱 台頭(10)

ヴィンツから離れること西に徒歩四日、その地にヴィンツの執政官ディロイ、それに二人の執務官が到着した。それはその北の地も同じであった。

 兵士は途中で金に釣られたならず者、約二百。それを引き連れたディロイは赴任地に着くとすぐに逆茂木の囲いと、砦となる建物を作り始めた。

 ゴルディオスはいつものように自陣のすぐ東に建設を始めたヴィンツの傀儡国の攻略から手をつけた。だが、今回はいつもとは様相が違った。今までより手強い。ゴルディオスは十人ほどの兵士を敵中に潜入させ様子を探ろうとした。しかし、戻ってきたのは僅かに二人。その報告によれば金と栄達を約束されたならず者達が今回の主力だという。

 「なるほどな。弱腰のヴィンツ兵とは抵抗が違うはずだ。」

 ゴルディオスは独り納得し、その日から自身が先頭に立ち、猛烈な攻撃を仕掛けた。それでも敵が撤退するのに五日を要し、自軍の損耗も激しかった。

 「この地に陣を敷く。」

 ゴルディオスは珍しく戦野に留まり兵員を休ませた。

 その間にディロイの砦の建設は進む。平原の中の瘤のような丘陵の砦はほぼ形を成し、それを取り巻く逆茂木は内に見張り台を備え二重になっていた。

 ゴルディオスがその地に着いたときには、噂を聞きつけた野盗やら山賊の類いが続々と集まり、その兵数は既に三百を越えていた。

 一押し攻めてみる。だがヴィンツの後押しを受けた兵達は装備が違った。逆茂木の内から無数の矢が飛来しゴルディオスの兵達はばたばたと倒れた。

 ゴルディオスは戦場から遠くに退くことを決断した。それからは睨み合い。その間にもディロイの砦の建設は進んだ。

 その頃、カッセルが率いる第二隊はザクロスが建設する第一地区を攻めていた。カッセルは数々の作戦を駆使したがザクロスの砦は揺るぎもしない。ここも攻略を諦め一時退き上げた。


 「肉弾戦は教えられるが・・問題は弓兵か。俺達の仲間に弓を扱える者が居ない。」

 ローグのテントでエイゼルが愚痴る。

 「確かに・・・肉弾戦だけで闘える者を育てるとなると最低半年はかかる。

 それではザクロスの所が持たん。」

 ローグも渋い顔を見せる。

 「見つけたぞ。」

 そこへテッドが一人の男を連れて入ってきた。

 「バルハードと申す。」

 と、その男は名乗り頭を下げた。

 「弓の腕は。」

 エイゼルがせっつくように訊く。

 「人並み以上には。」

 バルハードは背中に負った弓を手に取り、構えた。

 「例えば・・・」

 ブンと弓鳴りを起こし、目にもとまらぬ速さで矢が開け広げられたテントの入り口を飛んで行く。

 「虫を一匹。」

 その声に外に飛び出したテッドが木の幹に突き刺さった矢を抜いてきた。

 確かに甲虫が一匹その矢に貫かれている。

 「いかがでしょうか。」

 バルハードがローグとエイゼルの目を交互に見る。

 「気に入った。」

 エイゼルが先に声を上げる。

 「明日から・・いや、今すぐにでも弓の訓練をつけてくれ。」

 バルハードはテッドの後につきテントを出て行った。

 「(いくさ)用の弓は使えるのだろうか。狙撃ばかりでは時間がかかるが。」

 浮かれるエイゼルの横でローグは不安げな顔をした。

 戦いのないスローズの所へは人が集まり始めていた。近隣の集落が庇護を求め帰順し、その中から闘えそうな若者を選び出す仕事に追われていた。


 強大化する敵にゴルディオスは徐々に打つ手がなくなり、一時ガリアの首都ヘリンに帰った。

 随分と形を備えだした館に足を運び兵員の増強をグラシアスに願い出たが、力をつけつつあるゴルディオスに嫉妬したか、その答えは中々出なっかった。

 「暫くお待ちなさい。直に貴方の戦力も強大になります。」

 と、失意のゴルディオスの肩を叩く者がある。振り向くとそれは司祭だった。


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