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第三章 乱 台頭(7)

 「あの荷駄奪うぞ。」

 ゴルディオス配下の部将は荷馬車の一隊を指さした。それを護るのはザクロス以下精鋭二十人とヴィンツの兵三十人。

 「敵だ。」

 ヴィンツ兵の長が慌てた声を上げ、駆け足の土煙を指さす。

 「慌てるな。あの丘の上に移動する。急ぐ必要は無い。」

 ザクロスはすぐ近くの低い丘を指さした。

 「そんな悠長なことをしていたら敵は速度を上げ追いついてくるぞ。」

 「勝手に走らせておけ。丘に登ろうとすれば疲れから足が鈍る。そこを逆落としに討てばいいだけだ。」

 「しかし、人数が・・・」

 「人数・・ざっと見積もって五、六十人。あんた達は荷駄を護っていればよい。闘いは我らがやる。」

 荷駄隊は丘の上に陣取った。そこへガリアの一隊が押し寄せてくる。が、ザクロスの言葉通り登りにかかり彼らの息が上がった。

 「行くぞ。」

 ザクロスの声に、おおっと、彼の配下が雄叫びを上げ、まず手当たり次第に手近な石を投げた。

 石つぶてに敵が怯む。その機を逃さずザクロスを先頭に逆落としに敵にぶつかる。

 勢いの付いたザクロスの一隊は敵を踏みにじり一気に雌雄を決さんとする。

 敵が逃げ足を見せるのにそれほどの時間は要しなかった。

 「三倍もいようかという敵を・・・」

 ヴィンツの部将があきれ顔で言う。

 「作戦だよ。」

 それに対してザクロスは兜をコンコンと指先で叩き、

 「これでヴィンツと我々の関係が敵に知れた。あんた達の思い通りになるよ。」

 と、荷駄に立つヴィンツの旗を指さし、笑った。

 第一地区に着くとそこにはもう逆茂木が出来上がっていた。今はその内側の石塀を積み上げているところ。

 「お帰りなさい。」

 ザクロス達を見たクローネが明るい声を上げる。

 「これから敵が頻繁に押しかけてくるぞ。覚悟しておけ。」

 その声にザクロスが笑いかけた。

 「ご苦労でした。荷駄はそのままで結構。」

 ザクロスに言われるままにヴィンツの兵達はその場を後にした。

 その晩、事の次第を他の地区に連絡するために来ていたガイを含めた四人がテントに集まり、ザクロスがここに至る事情を話した。

 「いよいよだ、この地区は今後ガリアの勢力に襲われる。」

 三人の顔に緊張が走る。

 「ただ、不幸中の幸いというのかガリアは一部にここいらの攻略を任せ、今まで本軍が出てきた様子はない。

 その兵員数は二、三百。それでも我らの手に余る。

 だがここは踏ん張らなければならない。」

 頷く三つの顔を確認し、

 「鎧兜二十はここで使い、重装備の隊を造る。

 後はここにある五十振の剣、二十張の弓、五十本の槍が必要だ。」

 と続けた。

 「残りは。」

 「ガイ、お前が運搬役になってくれ。ここの兵十人を出す。

 ローグの所に鎧兜百、剣百五十、槍三十、弓四十を渡し、残りは全てスローズの所へ。

 (ゴールド)はここに十、残りは二地区で折半。

 兵員はローグの所から返してくれ。」

 それから僅かな酒を飲み、寝に着いた。

 その頃各地区の経営は、第二地区は周りの集落を吸収して数を増やし、第三地区は二つの宗教の闘いに追われた難民が集まっていた。

 翌朝、荷駄隊の出発に先立ち、

 「ガイ、ローグには難民の中ですぐに使えそうな者はこっちに回すように、スローズにはあまりロゲニアを刺激するなとと伝えてくれ。」

 と、ザクロスは伝言を頼んだ。


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