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第三章 乱 台頭(4)

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 五十人の兵士に守られた女達がガリアにやってきた。安く遊べる娼館を造るという。男達は欲望に誘われ館造りを手伝った。

 護衛の兵士達はそのままグラシアスの屋敷へ入った。そのうちの一人が自分達は司祭が約束した兵士だと名乗った。

 すぐにゴルディオスが呼ばれ、先に指揮権を与えられた三十人にその兵士達が加えられた。

 「ヴィンツの西と北西に国造りの動きがある。すぐにそこに(おもむ)きこれを潰せ。」


 ゴルディオスの働きは目覚ましかった。国造りのためヴィンツから送られていたそれぞれ百人ほどの兵士を駆逐し、その中から捕虜とした兵士を二十人ほど自分の陣営に加えていた。しかも国造りに参加していた者達をグラシアスに差し出した。

 ゴルディオスが戦場に赴くたびにガリアの勢力が大きくなり、国の中で彼自身の力が伸びていった。

 グラシアスはヴィンツでの戦いには参加せず、相変わらず近隣の集落を荒らし回っていた。

 女を(かどわ)かし、食料を奪い、蓄えを強奪していた。

 たまに起きるフランツとの戦いは側近に任せ、自身はたいした働きはしなかった。

 そんな日々が続いたが、ゴルディオスの側近の働きにより、兵士への報酬は増えていった。そんな中、新たな娼館ができあがり、下役の兵士達も我が世の春を謳歌するようになっていった。そんな噂を聞きつけてか、あちこちからごろつき共が集まり、その兵力は三千を超えるまでになっていた。

 久しぶりに司祭がガリアに入るとその町は様変わりしていた。

 かつて逆茂木があったあたり、逆茂木はその外に移動している。グラシアスの屋敷があった裏手の少し小高い丘には新たに石造りの館が造られつつある。それを中心に小さいがガッシリとした石家が建ち並び、そこに部将達が住んでいるという。それもまた、グラシアスの館を護るものとなっている。そしてそれらから離れたところには真っ先に出来上がった娼館が・・

 「ほほう、進みましたな、町造りが。」

 司祭はその光景を横目に見ながらグラシアスの屋敷に入っていった。


 「いかがですかな。国造りの進み具合は。」

 司祭は意味ありげな眼でグラシアスを見た。

 グラシアスが司祭から目をそらす。

 「宜しいのですよ。進んでさえいれば貴方の行動はどうでも。

 ところで、この進み具合、以前とは速度が違うようですが何かコツでも。」

 「ゴルディオスが連れてきた捕虜の中に建設家が居た。それを使っている。

 戦いの玄人もな。」

 「そうですか。それではその方達をご紹介いただけますかな。」

 グラシアスは三人の武将と一人の修験者を呼び、まず武将を紹介した。

 「そうですかこの方達が。」

 「いずれは将軍と呼ばれるようになろう。」

 「では以前、貴方の側近をつとめていた方達は。」

 「儂も領地を広げた。あいつらの内二人は総督として新たな土地にここと同じように町造りをさせ、残った一人には全体の統括を任せておる。」

 「そうですか、それは励んでおられましょう。

 ところでそちらの方は。」

 司祭は修験者に向き直った。

 「カッセルという。

 若い頃に山に籠もり仙人となる修行をしたらしい。その後その山を訪れた七賢者の一人に見いだされ、その教えを受けたらしい。」

 「カッセル様ですか・・宜しく頼みます。」

 司祭は軽く頭を下げた。そして、

 「もう一人。」

 「誰のことかな。」

 グラシアスは薄ら惚けた。

 「ゴルディオスですよ。」

 「ああ、あいつかあいつはまたヴィンツとの戦線に出ている。

 明日には帰るとの便りはあったが。」

 「そうですか、それでは明日また参りましょう。貴方も政務を見るのに大変でしょうから。」

 司祭は音も立てずにグラシアスの部屋を出て行った。

 翌日、司祭がグラシアスの屋敷を訪れたときには既にその部屋にゴルディオスが居た。

 「お久しぶりでございます。」

 彼は司祭に丁寧に頭を下げた。

 「お早いお着きで。」

 司祭もまた頭を下げた。

 それは、司祭とゴルディオスを二人で会わせないためのグラシアスの策略だった。

 「ご活躍のようで、なにより。」

 「それほどでも。」

 司祭の挨拶にゴルディオスが応える。

 「貴方の配下の兵士は何人に。」

 「三百になった。」

 「そうですか。増えましたな。

 では貴方の下の私の兵士、返していただきましょう。」

 「承知した・・すぐに。」

 二人の会話はそれで済み、グラシアスはホッと胸を撫で下ろした。

 「そうそう、貴方の所にカッセルという修験者を貰い受けなされ。」

 そう一言残し、その日のうちに司祭はガリアを出た。


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