第三章 乱 台頭(3)
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司祭はいつものように大男を従え、ケントスの娼館の前に立っていた。
娼館に入るとすぐに司祭はそこの女主人ガルフィにランダの所在を尋ねた。
「マダムは旅からお帰りになったばかり。今は森の館においでです。」
「マダム・・・」
司祭はフッと笑いを漏らした。
「そのマダムに使いを出して貰おう。
私が来たとな。用件は商売の話だ。」
「その間またここで・・・」
ガルフィが視線を床に落とす。
「この間のような無茶はせん。だがたまにはグラウスにも女を抱かせんとな。」
司祭はドッカとソファーに腰を落とした。
「三日でいらっしゃる・・三日後にまた・・・」
「私はそうしよう。女は一人でよい。グラウスを歓待してくれよ。」
司祭は娼館を出、残ったのは大男一人。
そこへ、ギッギッと不規則に床板を踏みならしながら男が近づいてきた。
「エミリオス、何をする気だ。」
「倒せばいいだろう。こんな奴。」
それは脚の傷のせいでランダに捨てられ、娼館の用心棒となりはてたエミリオスだった。
剣に手を掛ける。その手があっさりと大男に捻られる。
「無理をしなさんな。
その男はただの人間ではない。マダムの妖力の下を離れたお前さんには倒せないよ。」
ガルフィが薄ら笑いを漏らした。
三日が経った。
司祭が娼館に現れ、その後を追うように美男子を伴ったランダが娼館の緋毛氈を踏んだ。
「今度は何の用だい。」
ランダが笑う。
「ガリアに娼館を造ってくれ。金はケムリニュスが出す。」
「女は何人居る。」
「とりあえず十人。一人につき銀六を年に支払う。」
「金二。」
「それは高すぎる。」
「金一と銀五。」
司祭が首を振る。
「金一。これ以上はまけられないよ。」
「仕方がないか。だがすぐに頼む。」
ランダがガルフィを見る。
「ここの女は今何人だい。」
「二十人です。」
「なら半分に分けな。明日にでも出発するよ。」
「護衛はこちらでつける。」
司祭が口を挟む。
「おやそうかい。じゃあ、こっちからはガルフィと・・用心棒にエミリオス、お前が行きな。他に強そうな男を二人つけてやる。」
チッと舌打ちをしてエミリオスがホールを出て行った。
「サビーネ、ここはあんたに任せるよ。」
「ほう、その女は。」
「気付いたかい・・ロバの蹄と鷹の爪を持った女だよ。」
「それに後ろの男。」
「バーローという。今のところエミリオスの後釜さ。
語らずともあんたには解っていよう。」
ランダは男の首に手を回した。




